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黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜  作者: 黒城白爵
第十五章

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第443話 邪神と熾剣王



 ◆◇◆◇◆◇



「──お久しぶりですね。まだ存在しているとは思いませんでした」



 リオンの邪魔をしないように下降してきたヴィクトリアが、眼下にいる邪神へ話し掛ける。

 


「……まさか、この世界に転生しているとはな、ヴィクトリアよ」


「リオンの愛剣のおかげです。神の思惑を越えるとは、流石は邪神を討った勇者の剣なだけはあります」


「キサマが裏切らなければ、今もワタシはあの世界の主だった」


「私達を裏切ったのはそちらです。自作自演の悲劇と救済で人々の命と信仰心を弄んだのですから」



 転生前のヴィクトリアは、主神(プローヴァ)を崇める宗教の聖騎士だった。

 主神が異世界から召喚した者を鍛えると共に監視し、邪魔になったら秘密裏に処分するという役割を任じられていた。

 聖騎士の中でも使徒候補に挙がるほどに優秀だったヴィクトリアが担当したのがリオンであり、偶然を装って彼と出会い、行動を共にするようになった。

 紆余曲折を経て師弟関係を越えた仲になり、世界の真実を知った彼女は、かつての主を邪神と認め敵対する道を選んだ。

 リオンの願いで最終決戦の場に参戦しなかったため、邪神と対面するのは彼女の主観で数百年ぶりになる。



「ワタシのモノをどう扱おうがワタシの勝手だ。再びワタシの邪魔をするというならば、オマエも此処で排除しよう──『虚孔無界(ナッシングネス)』」



 リオンがレベル百に到達したことで解放されたユニークスキル【神魔権蒐星操典(レメゲトン)】の内包スキル【魔導神叡之創書(アルス・ノヴァ)】によって創造された魔法が発動する。

 邪神が有する知識を元に自動的に創造された魔法の効果範囲は、ヴィクトリアだけでなく上空にいるリオンも含まれている。

 空間ごと虚無へ還す黒い孔が開かれる。

 だが、その黒孔に紅い閃光が走り、魔法が効果を発揮する前に跡形も無く破壊された。

 手に持つ超越神器〈燦然たる熾天の煌星剣(ガラティーン)〉で神域の魔法を破壊したヴィクトリアが力ある言葉を紡ぎ、彼女の王権称号〈熾剣王〉の力を解放する。



「──王聖権顕(アドヴェント)



 ヴィクトリアの全身が瞬時に紅金色の炎に包まれる。

 一瞬の後に炎が晴れると、ヴィクトリアの姿は一変していた。

 彼女の黄金色の長髪とオレンジ色に近い紅色の瞳は、三対六翼の熾天族の翼と同じ紅金色(オリハルコンカラー)に変貌している。

 その翼は同色の炎の翼へと変化しており、翼一つ一つが発する熱量も相まって、今のヴィクトリアは小さな太陽に等しい。

 その炎と熱は完璧に制御されており、リオンがいる上空には一切影響を及ぼしていない。

 一方で、ヴィクトリアがいる位置から地上にかけては、熱帯地帯を越えるほどの熱波に襲われていた。

 一定値以上の肉体性能や炎熱耐性がなければ発火してしまいそうな熱量に邪神も顔を歪める。

 だが、これはまだはじまりでしかない。



「〈熾剣ノ炉(ソード・フォージ)〉」



 王権称号〈熾剣王〉に紐付けられた〈権能〉が行使されると、紅金色の炎翼から舞い散る火の粉が膨れ上がり、その一つ一つが紅金色の炎剣の形を成していく。

 瞬く間に生み出された無数の〈熾剣〉は、即座に邪神に向けて射出される。

 邪神の周囲に多重展開された神域城壁(アスガルド)が熾剣を受け止めたが、絶え間なく殺到する熾剣の前にあっという間に破壊されていった。

 権能製の熾剣の物理攻撃力も然ることながら、破壊された熾剣から解放される爆炎も凄まじい威力を発揮していた。

 熾剣から解き放たれた爆炎が他の熾剣の動きを阻害することはなく、逆にその爆炎を取り込み性能を強化させていく。


 熾剣は神域の防御スキルの下に展開された絶対防御(アイギス)とも衝突するが、その絶対防御の名は伊達ではなく、権能製の熾剣を以てしても打ち破るのは簡単ではない。

 未だに転移(ヘルメス)を封じられていて攻撃を防ぐしかない邪神は、その隙に反撃の手札を切った。



化身顕現(アヴァター)──〈正義ノ剣神(アストライア)〉」

 


 邪神の傍にユニークスキル【正義と審判の天罰神(アストライア)】の内包スキル【星戯ノ剣神(アストレア)】を核とした化身体が創造される。

 ヴィクトリアと同じ長い金髪を靡かせる女性の化身体の手には、邪神が創造した神剣が握られている。

 絶対防御(アイギス)の前に躍り出たアストライアが神剣を振り抜き、熾剣の群れを一掃する。

 破壊された熾剣を構成する炎がアストライアを襲ったが、それらの炎は全て神剣に吸収されていった。

 対炎熱仕様の神剣を携えたアストライアがヴィクトリアへと斬り掛かる。

 その一撃を神剣ガラティーンで受け止めたヴィクトリアの視線の先では、邪神が次々と新たな手駒を生み出していた。



 山の如く巨大な龍体の体表に純白の鱗が煌めく、ユニークスキル【無限源喰の世界龍(ウロボロス )】の内包スキル【源喰権限(ヨルムンガンド)】の派生スキル【源喰龍顕現(ミドガルズオルム)】で生み出された生成体〈源喰白神龍(ミドガルズオルム)〉。


 全身から放たれる白金(プラチナ)魅惑の気(オーラ)は空間を満たす炎熱すらも魅了する、ユニークスキル【深闇と豊饒の外界神(シュブニグラス)】の内包スキル【黄金ノ女神(グルヴェイグ)】を核とした絶世の美貌の女人型化身体〈白金ノ女神(グルヴェイグ)〉。


 白き身体の各部を泡立ち爛れた雲の様な質感の触手に変化させながら体内で膨大な魔力を蠢かせる、ユニークスキル【深闇と豊饒の外界神】の内包スキル【豊饒権限(イシュニガラブ)】の派生スキル【豊饒ノ黒山羊(イア・シュブニグラス)】を核とした山羊角の女人型化身体〈豊饒ノ白地神(シュブニグラス)〉。


 肉体が白き深淵の闇のみで構成されている、ユニークスキル【深闇と豊饒の外界神】の内包スキル【深淵ノ神戯(ノーデンス)】の派生スキル【深淵ノ大帝(イア・ノーデンス)】を核とした性別不明の人型化身体〈深淵ノ白闇神(ノーデンス)〉。


 狼人族に似た外見の神狼人形態と巨大な神狼形態を自由に使い分ける、ユニークスキル【神喰と終末の獣神(フェンリル)】の内包スキル【神喰転装】を核とした近接型の女人型化身体〈終末ノ白狼(フェンリル)〉。


 ユニークスキル【神喰と終末の獣神(フェンリル)】の内包スキル【陽喰ノ獣戯(スコル)】と【月喰ノ獣戯(ハティ)】で生み出された二体の生成体〈陽喰白神狼(スコル)〉と〈月喰白神狼(ハティ)〉。

 その他、英霊騎士(エインヘリアル)をはじめとしたユニークスキル由来の多種多様な生成体を無限に生み出していく様は、まさに〈創造〉を冠する神に相応しい光景だった。

 〈創造〉の概念補正(バックアップ)を受けて通常よりも強化された化身体と生成体の群れを前にしたヴィクトリアは、動じることなく巧みな剣術で目の前のアストライアを弾き飛ばして距離を取ると、自らもユニークスキルの力を解放した。



「開け──【炎界顕現(ムスペルヘイム)】。終末の刻を示せ、終炎(ムスペル)の神兵達よ」



 ユニークスキル【終炎と剣禍の巨神(スルト)】の内包スキル【炎界顕現(ムスペルヘイム)】により白亜の地上が紅金色の炎に覆われ、その炎の大地から終炎の巨神兵達が立ち上がってくる。

 内包スキル【終炎崩能(ムスペル)】の派生スキル【巨神兵顕現】によって生み出された無数の巨神兵達に王権称号〈熾剣王〉の概念補正が加わる。

 巨神兵達を構成する終炎が更に強く燃え上がり、その手には巨大な炎剣が生成されていく。

 雑兵から精兵となった終炎の巨神兵達が、邪神が生み出した軍勢と正面から衝突した。


 地上で終炎と創造の軍勢がぶつかる一方で、上空ではヴィクトリアが邪神の化身体の内、近接タイプである剣神(アストライア)獣神(フェンリル)の二体とぶつかっていた。

 本体の思考力と演算力、そして総魔力量を割く分身体とは違い、化身体は本体から半ば独立した存在だ。

 本体との繋がりがある点は分身体と変わらないが、分身体にはない確立した自我があるため、本体に掛かる負担は殆どない。

 この負担の有無は魔法行使において大きく影響するため、特に魔法に秀でているわけではない邪神では、分身体ではなく化身体で生み出さなければ魔法は行使出来なかった。


 二体の化身体から少し離れた場所にいる邪神は、改めて防御を固めると【魔賢戦神(オーディン)】の【賢魔ノ戦神杖(ガンバンテイン)】 の具現体である長杖型魔法触媒〈賢神杖(ガンバンテイン)〉を天に掲げる。

 リオンのレベル百到達で解放されたユニークスキル【神魔権蒐星操典】の二つの内包スキルの最後の一つ、【星天神域之魔書アルス・アルマデル・サロモニス】が発動される。

 神域級の星属性魔法を行使可能にする内包スキルにより、ガンバンテインの先に巨大な魔法陣が展開する。



「閉じろ── 【封焱神ノ九鍵箱(レーギャルン)】」



 邪神の膨大な魔力の昂まりを感知したヴィクトリアは、即座に自分が戦っていた二体の化身体に向けて封印の炎を刺し向けた。

 アストライアとフェンリルを捕縛するように紅金色の炎が纏わりつき、封印の箱を形成していく。

 その直後、邪神のガンバンテインから上空のリオンに向けてレーザーのような巨大な極光が放たれた。

 だが、リオンのエクスカリバーの基本能力【解放されし星の光剣(カリバーン)】を大きく上回る威力の光撃は、突如として現れた巨大な炎の剣によって斬り裂かれる。

 ヴィクトリアのユニークスキル【終炎と剣禍の巨神】の固有特性(ユニークアビリティ)〈巨神炎顕〉を解放することで、彼女は炎の巨神と化する。

 その一部のみを解放して邪神の魔法を防いだヴィクトリアだったが、身に迫る攻撃の気配を感じて咄嗟に回避行動を取った。

 直後、彼女の炎の翼の一部が破壊された。



「ッ、そう簡単には封じられないか」



 自らの翼を奪ったばかりのアストライアとフェンリルの頭上から顕現中の巨神炎剣を振り下ろし、その身体を完全に破壊した。

 封印の炎を斬り裂き、喰い破った二体の化身体によって破壊された炎の翼は、本来ならばすぐに復元される。

 しかし、アストライアの因果を断ち斬る刃と、フェンリルの存在を喰い千切る牙によって、癒えない傷として刻まれていた。

 その不治の傷は化身体を倒しても癒えることはない。


 邪神の傍に光の柱が立ち昇ると、倒したばかりのアストライアとフェンリルが復活した。

 自分以外の対象を完全蘇生させる内包スキル【運命逆天ノ戦乙女(シグルドリーヴァ)】の【運命回帰】の効果に悪態を吐きたい気持ちになったヴィクトリアが、固有特性〈巨神炎顕〉を完全解放する。

 巨大な炎の有翼巨神となったヴィクトリアに対抗するように、フェンリルも神狼人形態から神狼形態へと転じたのを皮切りに、終末の如き戦場は更に混沌を極めていった。

 


 

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