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ストーカーは異世界でも女暗殺者(ストーカー)やってます☆   作者: 後伸季孝
3章 私ストーカーだけどもう普通に暗殺とか依頼されちゃいます
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ストーカーと森からの帰還

ナツメ視点に戻ります。




「ご主人様、レルとカルは他の侍女が治療院へ搬送いたしました。また大変申し訳ございませんご主人様、敵を取り逃がしてしまいました。如何なる罰もお与えください」


 合流地点でシンシアと会うと一番に頭を下げられた。おそらくあの人攫いの一人、ローブの女を逃がしてしまったのだろう。レルとカルの容態、そしてシンシアが怪我をしていないかの方が気になる私としては、

人攫いの事など今はどうでもよくなっている。


「罰なんて与えられないわ。顔を上げなさいシンシア、貴女が無事なのが何よりよ。心配したのよ何処か怪我はしていないかしら?」


 シンシアの顔に触れて全身を見渡す。所々に草の切れ端や土が付着しているだけで、目立った怪我はない。服の皺一つ許さないシンシアに汚れが付くなんて相当走り回ったのだろう。逃がしたことを申し訳無さそうにしているシンシアに近付き、服についた汚れを手で払ってあげる。


「あ、ご主人様、そんな事はされなくても……」


「いいの、私の為に頑張ってくれたんだから。……ほらそんな顔しないで、いつもの余裕な顔をしている貴女が好きよ」


「あぁ、そんな勿体無いお言葉です……」


 最後に汗で頬に張り付いた髪を直してあげて、いつも通りのシンシアだ。少々顔が紅いのは、まぁ私の所為だろうけどいつもの事だし気にしない。後は頑張ったご褒美に頭を撫でて労わる。恥ずかしそうに俯き気味だが、口元はニヤケ顔になりそうなのを必死に押さえてるのが私から見て丸分かり。彼女にはこういったご褒美が嬉しいらしく、屋敷では侍女たちにとても厳しいシンシアも私の前では形無しなのは凄く可愛らしい。ギャップ萌えというのはとても恐ろしい破壊力を持つようだ。


「あ、あのユリーグルさん。この方は……、ひっ!?」


 私がシンシアをよしよしと撫でていると、声を掛けてきたのはリサ・カラスノ、先ほど救出したパーティの一人だ。そしてシンシアがその声に反応して彼女を見るや否や、目つきが変わりまるで危険対象を発見したように彼女を睨みつける。


「シンシア大丈夫よ、彼女はリサさん。人攫いに捕まっていたところを助けたのよ。後ろの三名も同じね」


 私が宥めるように言うと、コホンと小さな咳をしていつも通りの侍女としてのシンシアに戻る。


「はい、存じております。今急上昇中のC級パーティ『新世界への帰還』。リーダーのリサ・カラスノ様ですね。私はユリーグル様に仕える侍女のシンシアと申します」


「急上昇中だなんてそんな……。今日だって人攫いにやられて捕まってしまったくらいですから、私たちなんて全然です。ユリーグルさんとは比べ物にもなりません」


「リサ、あれはあいつらが卑怯な手を使ったからだ! 正々堂々と戦えば私たちだってあいつらを倒せた」


 リサの言葉に口を挟んできたのは全身鎧を来た女騎士のリュカ。自分たちの実力が下と見られるのが好きではないようで反論してきた。卑怯な手というのがいきなり死角から弓を射掛けられたり、武器に毒が仕込まれてて動けなくなったりと、騎士道的には許せない行為だったようで未だに怒りが収まらないらしい。


 ナツメはその内容を聞いて、自分がそういった行為を行っているため何ともいえない気持ちになる。隙を突いて相手を倒す、油断を誘って相手を倒す。試合でもないただの殺し合いに卑怯も何もあるのだろうか? そんな考えが過ぎるが、それを言うと話が拗れて長くなりそうなので口に出すことは無い。手遅れになる前に彼女自身が気付いてくれることを祈ることにした。その際に祈りも虚しく卑怯な手によって囚われた目の前の女騎士が俗に言う「くっころ」する場面を想像し一瞬想像してしまったのも内緒だ。


「それは災難だったわね。ほらそれじゃあシンシアとも合流したことだし森を抜けましょう」


 逃げた人攫いは気になるけど、今はリサたちパーティを街へ送ってあげることが一番でしょう。囚われて精神的に参っているはずだしこんな森に長居する理由も無いわ。


 こうしてナツメはシンシアとパーティ『新世界への帰還』を連れて町へ戻るのだった。




*************




「人攫いですか……、リサさんたちも災難でしたね。『新世界への帰還』パーティで受けていた依頼についてはまだ期限まで時間がありますので、本日はどうかゆっくり休んでください」


 モンスターギルド『魔狩り束ねし異郷(ベリグオール)』の受付。

 最早私の専属になりつつあるギルド受付嬢のヒルメッタちゃんに今回の件を説明した。後日、人攫いの死体についてはギルドで回収することとなり、逃げられたもう一人の仲間イヅルについては人相書きを書いて指名手配となることになった。人相書きにはシンシアが協力したが、フードを深く被っていた所為であまり有力な手がかりにはなりそうも無いらしい。ただ特徴的な土人形の魔法については知れ渡ることになりそうだ。


「ユリーグル殿、今回は助けていただき本当に感謝する!」

「ユリーグルさん、あの、お礼がしたいんですが今晩ご一緒にお食事していただけると、森でのお話覚えてますでしょうか?」


 そういえば助けた時にそんな事を約束した気もする。まぁ減るものでもないし、それに私と同じ異世界から来た存在、リサがどんな生活を送ってきたかも少し気になる。それに彼女は転移してきたにもかかわらず私の様な高レベルのスキルを持ってなさそうなのもかなり気になる。それともその高レベルなスキルは隠しているのか。


「ええ、覚えているわ。シンシア、貴女も一緒にご馳走になりましょうか?」

「是非! シンシア殿にもご馳走させていただきたい」


「いえ……大変申し訳ございませんが私は夜にて別の用事がございますので、お誘い頂き大変嬉しく思いますが又の機会にお願いいたします」


 意外だ、私と常に一緒に行動したがる彼女が私と一緒の食事を断るだなんて、余程この後の予定が重要と見える。まぁ彼女にもプライベートはあるのだから気にしないでおこうかな。重要な事であればシンシアはちゃんと話してくれるからね。


「そ、そうか、それは残念だ。であれば私たちは一度宿に戻って着替えをしてきたいのだが、ユリーグル殿はどうされる?」


「そうね、私は一度行かないといけないからところがあるから、また夕方になったらこのギルドに集合にしましょう」


「分かった。では、後ほどだ。今回は本当にありがとう!」

「「ありがとうございました!」」


 『新世界への帰還』パーティ全員からお礼を言われて一度解散。とりあえず、まずはレルとカルの様子を見るために治療院へ行かなきゃ行けない。


「シンシア貴女はどうするの? 今日は何か用事があるようだけど?」


「いえ私の用事は夜からですので治療院にはお供させていただきます。レルとカルの容態もそうですが、治療院へ搬送した侍女たちへの労いも必要でしょう」


 幸いにもシンシアの用事は夜かららしいので一緒に行くことになった。私もレルとカルを治療院まで送ってくれた侍女たちに感謝しなきゃね。それに可愛いレルとカルにも傷が残っていないか体の隅の隅まで確認しないといけない。


「そうね。それじゃあ行きましょ――」

「待ってくださいユリーグルさん!」


「うわっ!? 何かしら、ヒルメッタちゃん?」


 治療院を出ようとギルドの入り口へ向かうとヒルメッタに大声で呼び止められる。手には何やら手紙らしきものを持っていて嫌な予感。


「ユリーグルさんがギルドに来ていない間に預かってます。領主様からのお手紙です、絶対に読んでください! ……あっ! そ、そんな露骨に嫌な顔しないでくださいって、受け取ってくれないと私が大変なんですからぁ!」


 嫌な予感は的中。面倒な事に新人ハンターのユリーグルちゃんは領主にまで目を付けられる存在になってしまったようだ。そんな手紙なんて毎度のように無視してさっさと治療院へ行きたいところだが、ヒルメッタちゃんはいつの間にか縋るように私の腕に抱きついてきており離す気はなさそう……。仕方ないし別に受け取るくらいならしてもいい。


「ええ……そうね。仕方ないけどヒルメッタちゃんの迷惑になるのなら、受け取らないわけにはいかないわね。……でも読むとは言ってないわ!」


 手紙は受け取っても読まなければそれはまだ受け取ってないのと同義なのではないか。意味不明は屁理屈で自分を納得させたところで、ヒルメッタちゃんの手に持っている手紙を受け取る。すると必死に抱きついて今にも泣き出しそうだったはずのヒルメッタちゃんはけろっと態度を変えて私を見た。


「ええ、私は渡せればもう何でも良いです。後は勝手に放置して勝手に怒られてください」


 ヒルメッタちゃんは仕事をやりきったとでも言いたげな様子。そりゃあ領主からの手紙だし手元に置いておきたくないだろうけどさー……、まあいいか。


 領主からの手紙を受け取ったナツメはすぐに懐に仕舞う。


「あ、本当に読まないんだ……」


 常識の欠片も無いのかと私に告げたいような表情に私は無視で返す。


「じゃあ私はこれで失礼するから。シンシア行きましょうか、ヒルメッタちゃんはまたねー」


 こうして私はレルとカルが搬送された治療院へ向かう。




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