レルとカルの仲良しパーティ
あらすじ:幼女だけで魔物の討伐だなんて、ナツメちゃんは許しませんよ! プンプン!
「レル、この依頼にするのです」
「これ……悪くない」
モンスターギルド『魔狩り束ねし異郷』。
普段、厳つい大男やゴツイ装備を纏った者、何者も寄せ付けない眼光の女性ハンターなど、様々なれど腕に覚えのある強者が蔓延っていた。
そこに最近急浮上した新人ハンター二人組みパーティ。通称レルカルコンビと呼ばれる彼女たちは、最近の噂の種となっている。
なにせ見た目がどうしようもない程に幼女なのだ。それに片方の狐の獣人であろう女の子は何故か侍女服を着ている。戦闘力も何もあったものではない。見ているだけで微笑ましい二人だが、この場所モンスターギルドではやはり目立つ存在となってしまっていた。
だがそんな事はつゆ知らず、彼女たちが受付に渡した依頼を周囲のハンターたちは勿論、ギルドの受付嬢も固唾を呑んで見守る。渡された受付嬢はゴクリを唾を飲み、その依頼書の内容を確認する。
『フェルラビットの捕獲』
不安げに依頼書に目を通した受付嬢は、安心したように息を吐き途端に笑顔になる。
「はい、受け付けました。依頼内容を確認させていただきます。フェルラビットの捕獲、最低でも5匹は生きた状態で捕獲する事になりますがよろしいですか?」
少し大きめに発声した受付嬢の言葉に、レルとカルを見ていた周囲のギルド員は安堵の表情を浮かべ、また厳つい表情に戻しながらレルとカルから離れていく。まるで、危険な依頼に向かわせない様に少女たちを影から見守るご近所さんの様だ。
その状況に気付いているのか分からないが、レルとカルは依頼の手続きを無事済ませて嬉しそうに了承する。
「はいです!」
「うん……だいじょぶ」
「あと、こちらでは少し大きめの麻袋を無料で貸し出しておりますので、宜しければ使用いたしますか?」
「お願いしますです!」
「いる……ありがと」
しっかりとお礼を言う事と、それなりの装備から育ちも悪くないだろう。身の程を弁えた依頼選びも好印象。可愛らしい見た目で庇護欲を掻き立てる。これがここ最近話題のレルカルコンビであった。
そんな二人に一つの影が忍び寄る……。
「ねぇ君たち、見ない子だね新人さんかな?」
レルカルコンビに近づいてきたのは、青髪の髪もあまり長くは無い、如何にも冒険者らしい女性だった。
なんだか明るいお姉さん? でも何かを隠しているような感じ……です。
第一印象で何処か怪しい部分を察知したカルは、身構えながらも問いかける。カルの方をチラリと見るが、こいつはこの女の人の怪しさをあまり感じていないようだった。それどころか、知らない相手に無防備で突っ立っているなんて本当に肝心なところで抜けている。
仕方ないのです。こういう対話の場面ではレルはあまり役に立たないから、代わりにカルが相手してやるです。
カルは一歩前に出て話しかけて来た女性に警戒しながら問いかける。
「誰、です?」
「ああ、ごめんね。名乗る時は自分からって言うしね。私の名前は――」
「ユリーグルさん!? 帰ってきてたんですか!」
ユリーグル。話しかけてきた女性が名乗ろうとした時、一人の受付嬢がその女性を見て声を上げた。
ユリーグル、珍しい名前だなと思ったがその名前を受付嬢が口にした瞬間。周囲の強面大男や冷めた女性ハンターなどの表情が一気に切り替わる。
「……ユリーグルだと?」
「あの子が帰ってきた!?」
「お、お姉様が!?」
など様々な声が聞こえてくる。
有名なハンターなのだろうか? けれど誰も近づこうとはせず遠目から様子を伺っているようだった。
一人を除いて。
「ユリーグルさんお久しぶりですね! まったく帰ってこないから心配してましたよ~」
カウンターからひょっこり顔を出した受付嬢だ。
彼女が顔を出すと、ユリーグルさんというハンターもやはり顔見知りのようで、カルたちを置いて話し始めた。
「おかえりヒルメッタちゃん。でも、たぶん一ヶ月くらいだと思うけど?」
「長いです! その間どれだけユリーグルさん宛てに依頼やら手紙やら招待やらが来たと思ってるんですかぁー!」
「うぐっ、それはちょっと後で確認するよ……。今は彼女たちに話しをしていたんだからね。ねぇ、君たち」
受付嬢のヒルメッタさん? と親しげに会話した後に、ユリーグルさんはカルたちに用があるとでも言いたげにこちらに顔を向ける。
置いてけぼりにされると思っていたが、不意に話を振られても困る。カルだって、レルほどでは無いにせよ知らない人との会話は苦手なのだ。それに、このままだと面倒ごとになりそうだったのでさっさと話を終えることにする。
「いえ……カルたちは、これから依頼をこなすのです。だからもう行ってもいいです?」
少し強引だけど、さっさとカルたちは魔物を倒しに行きたいのです。ユリーグルさんには悪いですが、又今度にして欲しいです。
レルに早く出るぞと目配せしようとしたら、すでに出口に向かっていましたです。早い……。
「え、待って待って! ちょっと君たち」
頭を下げて、カルもレルを追ってギルドの出口に向かおうとしましたが、ユリーグルさんに止められた。
「なんなのです?」
しつこい。そういった感情を少しだけ顔に出してやるです。引き止められている間にもレルはもう先に行っちゃうのです。少しはカルを待って欲しいのです。
「カルちゃんだったよね? 今日だけでいいから私をパーティに入れてくれないかな?」
ユリーグルさんがそんなことを言うと、少しの沈黙の後、ギルドの中にいた人たち全員が驚愕した。
――アイエェェエェエエ!?
――あのユリーグルがパーティを組みたいだと!?
――ナンデ!? お姉様ナンデッ!?
ギルドの多くの人が驚いているようだけど、何に驚いているのか分からない。とりあえずカルからいう事は一つだ。
「却下です」
そう言ってやると、またギルド内で驚愕の声が叫ばれるのであった。
むぅ、一体何なのです……?




