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ストーカーは異世界でも女暗殺者(ストーカー)やってます☆   作者: 後伸季孝
3章 私ストーカーだけどもう普通に暗殺とか依頼されちゃいます
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ストーカーとただいま

あらすじ:また新しい依頼貰っちゃいました。



 コルン君と別れてギルドからの帰り、ついに我が愛しの屋敷が見えてきた。

 連日馬車で揺られまくって、疲れきった状態の私はもうベッドに直行したい気分だ。

 流石に旅の終わりにギルドに直行して、コルンくんと空元気で戯れたのは非常に体力を消耗していたらしい。ペコちゃんやユルユちゃんも完全に寝入っている。

 逆にクラリアとスペリア、シンシアの侍女グループは微塵も疲れを感じていないのか、ただただきれいな姿勢で座している。主人である私を前に疲れた顔を見せないようにしているのだろうけど、それでもうちの侍女はおかしい。そもそもこの長旅で彼女たちが寝ている光景を見た記憶が無い。


「「おかえりなさいませ、ナツメ様」」


「おかえりなさいませです。ナツメねぇ……様」


 屋敷に帰ると多くの侍女と共に、なんとカルちゃんがメイド姿でお出迎え!?

 一体私の居ない間にどうしたというのか。

 とりあえずケモ耳幼女メイド最高でしゅ。とだけ言っておこう。ぐへへ。


「皆ただいま。ふふふ、カルちゃんは侍女ごっこでもしているのかしら? とても似合っているわよ」


 かしこまったままでいるカルのピコピコと動く狐耳と尻尾を目で追いながら声を掛ける。きっと何かのごっこ遊びでもしているのかと思ったが。


「あの……カルはこのお屋敷で侍女として、働いているのです!」


「え、カルちゃんお仕事で侍女をするの? もしかして侍女さんのお仕事に憧れていたのかしら?」


「は、はい! カルは頑張って働いて強くなってナツメ様を守る侍女になるです!」


 うん、強く? カルちゃんってば、侍女のお仕事を勘違いしていないかしら?

 屋敷のお掃除とか家事とか、私の身の回りの世話には強さは関係ないと思うよ?

 カルちゃんが何か勘違いしていないか?

 誰だ侍女になることを勧めたやつは!? あんまり侍女の事を分かってなさそうだよ?


 少し不安な顔になった私の心情を察知したのか、側からシンシアが私に補足する。


「カルに侍女になることを勧めたのは私です。

 彼女はこの屋敷で侍女をする為に一番重要なものを持っております。是非彼女に侍女の仕事をさせては頂けないでしょうか?」


 へぇー、シンシアにそこまで言わせるとは、カルちゃんも中々凄いね。

 それにシンシアが勧めたのなら安心かな。見ていると、カルちゃんも何か熱意のようなものが感じられるし、そんなやる気に満ち溢れている子に"ダメ"と言って放してしまうような残酷な選択は私には出来ないわ。それに侍女なんて危ないものでもないでしょうし、私の屋敷の侍女たちなら任せても問題ないわね。

 侍女になるために一番重要なものってのが気になるけど、それは暇な時にでも聞きましょうか。


「ええ、問題ないわ。無理をさせない範囲でさせてあげましょう。でもお休みはちゃんと取らせるのよ?」


「はい、かしこまりました」

「ありがとうございますです、ナツメ様!」


 シンシアと共に深くお辞儀をするカルちゃん。とても嬉しそうで私も喜ばしい。


「でもカルちゃん? "ナツメ様"は侍女のお仕事をしている間だけにしてね」


「わ、わかりましたです!」


 とても笑顔なカルちゃんは私の長旅で廃れた心を癒してくれた。

 頭をナデナデして、さらに可愛さを堪能する。


「あ……ナ、ナツメ様。だめです、今はお仕事中……」


 これこれ、このファッサファッサした狐耳の触り心地たるや。もはや私的には侍女の仕事なんかより、永遠に私の隣でモフられるお仕事に従事して欲しいくらいだ。

 あ、私の専属侍女に指名したらいいんじゃないか?

 それならカルちゃんは侍女の仕事が出来て、私もいつでもモフモフに手が届くじゃないか。

 うん、名案。


「それはいけませんご主人様」


「え? 今口に出てた?」


「いえ、表情を見れば分かります。しかし、ご主人様の専属侍女は私か、私以上の侍女でなければなりません。

 これはいくらご主人様でも覆せない事です」


 なんてこった。私に仕えているはずなのに、私の横につける人を選べないだなんて!

 まぁシンシアが言うなら仕方ない……とか思ってしまう辺り、シンシアに頼ってるよなぁ私。

 そう考えると、シンシアってば常に私の側にいて仕事をしている気がするけど、お休みって取ってるのかしら? うちはブラックじゃないからね? 休日には休んで欲しいわ。


「ねぇシンシア、突然だけどあなたお休みの日とかあるのかしら?

 いつも私の側に仕えてくれている気がするけど……」


「私はご主人様に仕える事こそが喜びであり日常。非日常である休暇など必要ございません」


「でもシンシアが過労で倒れちゃったりしたらとても困るわよ。それに貴女がずっと働いていたら、部下である侍女たちも休み難いでしょう?

 あっ、そうだわ、旅の疲れもあると思うし今日から二日くらいお休みにしましょうか。シンシアと、一緒に旅をしたスペリアとクラリアはゆっくり休みなさい」


 思いついたような提案だが、我ながら悪くないだろう。というか旅の後も、疲れも見せず働こうという意思が見えるシンシアは本当に凄いとしか言えない。けどこういうタイプはいきなり疲労が襲ってくるのだ。無理やりにでも休みを入れないとね。

 スペリアとクラリアに目をやると、休みを貰える事に少し安堵しているようだった。うん、あれが普通の反応よね。

 旅の移動で何もしていない私が今とても疲れているんだもの。身の回りの世話をしていた二人はもっと疲れているわ。全然疲れているような感じはしないけど……。


「そう、ですか……かしこまりました」


 そんな中、仕事人間のシンシアは見るからに残念そうに、休みが欲しくないような口調でしぶしぶ了承した。そこまで私の側に居たいのかね?


「そう致しましたら、私も明日はお休みさせていただきます。ですが、二日も休みを頂くのは……。それに本日は十日後の依頼についての打ち合わせをする必要がございますので」


 今日はもう休みだと言っても、全然休もうとしないシンシアさん。今日は旅で疲れたでしょ? 休もうよ? でも依頼の打ち合わせって私も参加しなきゃだよね? 正直今すぐベッドに入って寝たいのよ私。


「シンシア、それは別の日でも……私も疲れているし打ち合わせなんて出来そうも無いわよ?」


「いえ、打ち合わせについては私と他の侍女数名で行います。作戦もそこで複数立案致しますので、ご主人様には後ほど確認して頂きたく存じます。本日はごゆるりとお休み下さいませ。カル、ご主人様を寝室までご案内して下さい。では私は失礼致します」


 シンシアはそう言うと、軽く頭を下げて去っていく。


 うーむ、依頼を受けたのは私なのに、作戦を考えるのは侍女たち? 一体どういうこと? 侍女って主人の仕事の手伝いまでしてくれる存在だったっけ? もしそうだとしても、暗殺の計画を立案させるって大丈夫なのかしら? 私の知らないところでうちの侍女さんたちが大変なことになっていっている気がする。

 どうなんですかシンシアさん。


「ナツメ様、寝室までお連れいたします、です!」


 考え事をしていたら隣にカルちゃんが寄ってきて、お部屋に案内してくれるという。尻尾をフリフリさせてなんと可愛らしいことか。とりあえず、またも狐耳をモフっておく。


「ふぁわ……だめぇです。ナツメさま今仕事中……」


「ふふ、私に仕えるのならこれくらいの我慢しなくちゃダメよ? さぁ案内して頂戴」


 侍女になったことで私には逆らえない立場を利用して、これから会う度モフってやろう。これが役得というものだ! あー、癒されるぅ~。


「で、ではナツメさま、こちら、です」


 流石に案内中はモフをする手を止めて、カルちゃんの初々しいお仕事姿を眺めよう。


 しかし微笑ましい光景になるだろうと思っていた仕事姿は、私が居ない間に相当仕込まれたのだろう。

 綺麗な姿勢でぶれる事無く、足音も聞こえない。所作一つ一つが洗練されていて、まるで本物の侍女だった。うちの屋敷の侍女教育がすごい。


 いや、これはカルちゃんが侍女に一番重要な何かを持っているからでもあるだろう。たぶん。

 シンシアが言っていた一番重要なものというのが余計に気になるなぁ……。


 慣れない仕事に戸惑いながら、というシチュエーションを期待していたのに予想以上にスムーズに案内されてしまった。これは想定外である。


「それではナツメ様、ゆっくりとお休みくださいです」


 綺麗なお辞儀を見せすぐに引き下がる。

 案内の後は必要以上に主人に関知しないという侍女の規則もしっかりと守っている。そんな完璧に仕事をこなすカルに、心を打たれたような気分になる。


「はぁ、子供の成長って嬉しくもあり、悲しくもなるものね……」


 そういって寝室に入ると別の侍女がお出迎え。お待ちしておりましたと、直ぐに服を脱がされてお風呂へ。綺麗に身体を洗われて寝巻にチェンジ。あっという間にベッドに寝かせられた。うーん、とってもスムーズだ。


「うーん、そういえば……」


 おやすみなさいませ、と部屋を出ていった侍女さん。それを見てナツメはふと思う。


 あれ? 私、自分の身体を自分で洗ったのっていつだっけ?


「はは……もう、元の生活(日本人だった頃)には戻れなさそうね」


 一人暮らしの頃に自分で全てやっていたのが嘘のようで、屋敷に居るとほとんど周りの侍女たちがやってくれる。

 私って変わったなぁ。そう思いながらナツメは徐々に襲い掛かる睡魔に抗う事無く目を閉じた。




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