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ストーカーは異世界でも女暗殺者(ストーカー)やってます☆   作者: 後伸季孝
2章 私ストーカーだけど暗殺者です!
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帝国の悩み

あらすじ:たぶん幼女とイチャイチャしていたと思う。(ど忘れ)




「そうか、息子(キタリウス)が死んだのか……」


「はい……。

 護衛の依頼を引き受けたにも関わらず、僕がキタリウスさんから離れてしまったから……。

 本当に、申し訳ございません!」


 ケーテ森林から命からがらに逃げ帰って来たユウシは、休む間もなくキタルダ領の領主、キタルディウス・キタルダの屋敷に向かった。


 森での戦闘で神聖魔法を多用し、今にも倒れそうなユウシがそれでも頭を下げて謝っているのには、己のミスにより息子を失った領主に心からの謝罪をしなければとも思っているからだ。

 しかしそれ以上に、今回の森林調査で起こった悲劇をいち早く領主に伝える必要があった。

 今のケーテ森林にはB級の魔物(ザンコクマ)だけでなく、上位種の魔物が二体も存在していた。これはケーテ森林の近くにある、この街の崩壊の危機だと言っても過言ではないのだ。


 疲労困憊のユウシから報告を聞いたキタルダ領の領主、キタルディウス・キタルダ公爵はユウシに頭を上げさせる。

 豪華なソファに腰を降ろし、息子の死にも眉一つ動かさないキタルディウス。

 ユウシには席に座るよう勧めて話を続ける。


「よい……、ケーテ森林には勇者殿でも苦戦する上位種が二体も生息していたとの話だ。

 この話を聞いて貴方に息子を守れ、というのはいくら勇者殿であろうと酷というもの。

 だがもし、勇者殿が自分自身を責めるというのであれば、今後儂らキタルダ領で何か困難に陥った時にでも助けて欲しい。それで勇者殿からの謝罪を受け入れることにしよう」


「はい、ありがとうございます」


「うむ、勇者殿もかなり疲労が見て取れる。

 客室は……もう貸し与えているのであったな。そちらでもう休むが良い」


 明らかに疲労困憊のユウシにそう言って、目に付いた侍女に部屋へと連れて行かせる。

 ユウシを連れた侍女が部屋を出て行くと、大きく溜め息を吐いた。


「バカ息子は死んだ、か……」


 ソファに背を預けて、天井を見やる。

 死んだ息子に思いを馳せようとしたが、中々に思い出というものが浮かぶことが無かった。

 寧ろこの緊急事態、我が息子(キタリウス)の命で勇者殿の力を借り得る事ができ、悲しみよりも希望が沸く。父親としてはあまり良い思考ではない事は分かっているが、公爵として帝国の駒として数十年。

 所謂、一家の父親という思考が出来ないことは分かっていたし、今更考えを改めるつもりも無い。先ほどの勇者のように私に負い目を感じる者ならば、それを利用してやるつもりでもある。


 それに元々あれ(キタリウス)は儂の後を継ぐ地位(嫡男)でもなければ、本人は家名のためという気概も無い。魔法にしか興味を持たんバカ息子だった。

 実家の仕事を多少は手伝うし、魔法の研究で多少金も稼いでくるが、奴の珍妙な行動(けんきゅう)の所為で民からの信頼は徐々に薄れていた。

 仕事も金も困っていないキタルダ家(われら)からすれば、どちらかといえば居て貰ってもプラスにはならない存在だったのだ。


「だがまぁ、居なくなると寂しくもなるものだ……」


 別に仲が悪かったわけでもない。

 バカ息子は様々な魔法の研究を行っていたが、たまに儂に発明した魔法の有益な使用法などを考えてくれと執務室に押しかけてくることがたまにあった。

 あまりにも突然に来るものだから仕事の邪魔だと思いながらも、適当に思いついたその魔法の利用価値の有無について少し話してやったら、何か思いついたのか礼も言わずにさっさと帰っていく。

 お互いに親子の会話などする気も無かったがあの時間だけは、まぁ(息子)との"思い出"と言ってもいいのかも知れないな。


「……なんだ、あるじゃないか」


 無いだろうと思っていたはずの"思い出"だったが、意外とあるものだな。とこの部屋に来て初めて表情を崩し少し笑った。


 死んでしまった息子を思い笑ってしまうとは何とも不謹慎だと思ってしまうのだが、まぁここは儂一人しか居らんのだからいいだろう。


「だが、のんびりしても居られないか……。森には上位種の魔物が二体。

 死んでしまったバカ息子の後を追わないようにすぐにでも王都に応援でも頼まなければ。来てくれれば良いのだが……」


 息子との思い出を馳せること数分。しんみりと感情に浸ってみたものの、今はそれどころではない。現状について思考しなければならない。


 勇者殿の聞いた話では、この街の近くの森には国を蹂躙すると言われる『女王種』と、王を殺し成り代わるとされる悪魔のような『単独種』。

 どちらも手に負えない上位種の魔物がいるのだから、大きな溜め息も出るだろう。


 この街に攻め込まれた時点で、勝ち目は薄い。

 今攻め込まれたとすれば、すぐにでも地獄でバカ息子とご対面だ。キタルダ領には元々魔物を屠るハンターが少なく、実力者もやはり少ない。このような状況で魔物の軍勢でも引き連れてこられたら、この街は跡形もなくなるだろう事は目に見えている。

 いくら勇者殿を引き止めて街を守ってくれと言った所で、勇者殿一人では戦力が足りないだろう。


 キタルディウスは、上位種の魔物がこの街に攻めてこない事を祈りつつ、帝王へ手紙を綴った。


 暗殺者のように肌を見せず、しかし白い格好をした烈火のように紅い髪の魔物(美女)、ラヴ。

 B級の魔物(ザンコクマ)を侍らせた、白過ぎる肌に相反する黒の髪と服を纏った金眼の魔物(少女)、名称は不明。

 勇者が命を賭して手に入れた森林調査の内容を書き連ねた、王都への応援を求める手紙だ。


「気まぐれな襲撃だけはしないでくれよ……」


 窓の外を眺め、この先の方向にあるケーテ森林を見る。

 すでに悪魔の巣となったであろう森林はどうなってしまうのか……。

 この街はいつか魔物の大群に襲われてしまうのだろうか。

 そんな懸念の中、今日からは碌に寝つけないだろうなとまた一つ溜め息を吐くのであった。


 もうケーテ森林に上位種もB級の魔物(ザンコクマ)すらも存在しない事を知らないまま……。




*************




 ――ケーテ森林から上位種の魔物二体の存在が確認された。


 リュード帝国北部を領地とするキタルダ公爵家。

 その領主、キタルディウス・キタルダからの手紙にリュード帝王城の会議室は騒然とした。


 帝王を含めた数人の国の要人たちは、事の重大さに震えあがる。


 しかし、何の対策も立てられる事無く会議は一時中断、リュード帝国の帝王、クラウニス・リュードは執務室にて苦い顔をしていた。


 そんな執務室に響く数回のノック音。

 クラウニスがその音に気付き入室の許可を出そうとしたが、その前に扉は開いてしまった。


 なんて無礼な奴であろうか……。

 そんな思考が頭を一瞬よぎったが、入室してきた者を見てその考えも消え去る。

 寧ろこんなにも早く来てくれてありがたい。


「サティラス・ドラグーン、参上いたしましたクラウニス陛下」


 サティラスと名乗った男は目の前で簡素な礼をして、すぐに顔を上げる。

 竜を象ったリュード帝国の国章を胸に付けた国家公認のハンターの証が目に入る。

 帝王の前にて、許可無く面を上げるなど、無礼にも程がある行為であるのだが、お互いの表情からはそのような格式張った礼儀は無用であることが伺える。


「うむ、来るのが早いな。珍しく近くに居たのかね?」


 キタルダ公爵家からの手紙を見て、すぐにこの男を呼び寄せたのだが、一日も経たずにこちらへやってくるとは思っても居なかったのだ。

 なにせこの男は常に国中を飛び回り、魔物を生業とする生粋のハンターなのだ。


「はい。現在私はこの帝都にて勇者殿のパートナー、ミィリアの師事をさせていただいておりますので」


「ほう、そうであったか。確かその者は元奴隷であったな、今回の勇者もやはり希有な真似をするものだ……。エルフであるからには、魔法などが上手く使いこなせるのであろうが……、勇者のパーティに入れても問題無いのか?」


 クラウニスは、勇者という華々しいパーティに奴隷という身分の者が入ることを、あまり良くは思ってはいない。

 だが代々続く、勇者召還の儀において、秘密裏に書き記されてきたであろう勇者の行動報告書について、疑問に感じる内容が記されていたことを思い出した。


 ――勇者は奴隷を哀れみ、奴隷を救った。そして奴隷と共に魔王を打ち倒した。


 簡単に要約するとこのような内容だった……。

 文献に目を通した当初は、馬鹿げた内容だと気にも留めなかったのだが、いざそれが現実に起こっている現状に今も少しばかり戸惑いを隠せないでいる。

 魔王を倒すため、勇者のパーティに奴隷がいなければならないと言うのであれば、そんな異常な状態にも目を瞑ろうというものである。

 だが、それでも勇者の仲間とあろう者が弱いとあってはならないと、現在師をつけての訓練を行っているのだ。


 そんな勇者の選んだ奴隷を特訓しているのが、ここにいるサティラス・ドラグーン。

 帝国が唯一抱える事が出来ているSランクハンターである。

 よくもまぁこんな仕事を請けてくれたものだと思ったが、そんな彼に預けた奴隷について聞いてみると、彼は意外に楽しげな口調でその奴隷について口にした。


「ええ、特に問題なく。私の訓練にも素直に従いますし、人に訓練を施すより余程知識を吸収しますね。

 あまり大声では言えませんが、『大魔術師』にまで成るとしても可笑しくはないでしょうね。

 まあ、これも一重に勇者殿の力になるため……、愛の力とでもいうのでしょうね。ふふふ」


 ふむ、竜をも圧倒するあのサティラス殿をここまで言わせるとは。

 奴隷の者……、いやミィリアだったかな? その者も今のうちにこの国の重要な地位に縛る必要があるかもしれないな。


 そう考えると、案外いい拾い物なのかもしれない。拾ったのは勇者だが、勇者がこの地に身を埋める覚悟をしてくれさえすれば、そのミィリアも手に入るというもの。

 勇者も見たところ、帝国に悪い印象は抱いていないようなので、問題ないであろう。


 だが国に実力者が増えるのは良い事だと考えつつも、それは未来の話であり、今の現状を打破してくれるわけではない。すぐに考えを切り替えて、サティラスをわざわざ呼びつけた事について話を切り出す。


「そうか、順調ならよい。

 それで話を変えて悪いが、今回こちらに赴いて貰ったのはサティラス殿の力を借りたいからだ」


「ほう……、最近のザンコクマ発生の時でも、私の手を借りなかったというのに。

 それ以上の……余程の事が起きているのですか?」


「ああ、実は――」



 サティラスにケーテ森林の状況、上位種蔓延る危険地帯であることを伝えた。

 すると、上位種の話を聞いたサティラスはすぐに立ち上がり、礼をして部屋を出て行こうとした。

 それを慌ててクラウニスが止める。


「ま、まて、一体何処に行くのだ!? まさか一人でキタルダ領へ!?」


 いくらSランクの称号を持つハンター、サティラスでも上位種二体を相手に戦うのは厳しいだろう。

 上位種の魔物とはSランク級のパーティがようやく互角といった強さで、それを二体となると、これはもう国中の猛者を集めて挑む覚悟が必要であろう。Sランクの、しかも国のお願い事を素直(多少奔放な性格だが)に聞いてくれるサティラスのような存在は極めて貴重で帝国としても手放すことは決して出来ない。

 今、一人で戦いに向かわれて命を失えば、国にとって損失でしかないのだ。そうならぬ様に、クラウニスはサティラスを引き止める方法を必死で考えるしかない。

 しかし、その考えは杞憂であった。


「大丈夫ですよクラウニス陛下、流石の私も一人で二体と闘り合うは厳しいですからね。

 今から行くところは私の友人のところです、とても強いので誘ってみようと思いましてね」


「そ、そうか……ならいいんだ。

 だが、もしキタルダ領へ向かう時には一度こちらに帰ってきてくれないか。

 流石に何も援助も無しで危険なところへ向かわせる事は出来ないからな。

 必要なものは用意しよう、遠慮なく言ってくれ」


「お気遣いありがとうございます。

 とりあえず今のところは特に何も用意する物はありません。ただ友人と会ってくるだけですから」


「うむ、ちなみに何処にいくんだね?」


「はい、ニシルダ領にとても腕のいい探偵が居ましてね。実力も中々のものです。

 ああ、ついでにギルドでニシルダ領に向かう護衛任務でも受けていきましょうかね。

 では陛下、仲間が集まりましたら、こちらにご報告あがりますので……」


 そう言って、軽く一礼するとサティラスは今度こそ執務室を後にした。

 それを見送ると、力が抜けたようにドカリと椅子に深く腰掛けて溜め息を吐く。


「はぁ、儂は儂で被害を抑える対策を考えねばならぬな……」


 これからの事を考えると、酷く憂鬱になってしまう。

 とりあえずキタルダ領には、少ないながらも応援を送っておく必要があるだろう。もし上位種が動いてしまえば、応援など意味も無いだろうが……。




たぶん3週間以上更新を開けてしまいましたが、私は元気です。

一言だけ言うならば、会社って忙しすぎる!!


次の話から3章入ります~。

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