ストーカーと帰路2
あらすじ:ペコちゃんがお馬さんを産んだ。
ペコちゃんの生み出した黒白のお馬さん魔物。
黒はラオー。白はトキと名付けた。命名は勿論私であーる。
彼らは率先して馬車を引いてくれており、めちゃくちゃ速い。
そしてなにより平和を脅かす魔物のような見た目をしているのだから、こういったことも起きる。
「うわぁぁぁああ! 化け物だぁぁぁああ!」
「う、馬の魔物が襲ってきたぞぉぉお!」
まぁ、案の定ってやつよね……。
村に着くまで三日掛かるはずだったのが一日に短縮されたのは凄い。
ただ、速いのはいいのだけど馬車がガッタンガッタンに揺れて、まぁまぁお尻痛い。
そして村に着いてからは、そりゃあもう村人たちが逃げ惑う状態になってますとも。
だって体調2,3メートルにもなる黒白のう馬の化け物引き連れてきたんですから。当然ですよね。
怯えに怯えた村人さんたちが可愛そうなので、村の手前で停車してあげます。
「すいませーん! 皆さん落ち着いて下さーい!」
馬車から降りて大声で呼びかけるが、どうやら歓迎はされていないようで、村人たちが民家の影から私を睨む。
というか怯えた目でこちらを覗いている。
あっ! あの男の子、気弱そうで可愛い! 後でお名前でも聞かなきゃ!
そう思っていると一人の老人が家の影から現れる。
「おお? ナツメちゃんじゃあないのかね? 一体なんだいその馬は。だ、大丈夫なのか?」
怯えた様子だがこのお爺ちゃんこそ、しわっしわの顔に長くて白い髭をこさえた、まさしくこの村の村長さんだ。この村にはキタルダ街に行く前に寄った事があり、彼らにとって私たちは顔見知りである。
というかよく考えたら、この村から街に行って仕事してここに帰ってくるのに、まだ一週間くらいしか経ってないだろう。
ナツメという名前を聞いて、村の皆さんも「ナツメちゃん?」とか「帰ってきたの?」とか口々に言っているようである。でもまだ、家の影からは出てこない。お馬さんの恐怖は余程らしい。
「ええ、問題ないわ村長。この馬は最近貴族の間で流行っている大きなお馬さんよ!
手懐けてあるから暴れることは無いわ」
「お、おお? そうだったのか。最近の貴族様は分からんなぁ……。まるで魔物のようじゃ」
とりあえず適当に嘘だが、彼らを安心させておくのが大事だ。
明らかに馬には見えないスキンヘッド白馬のトキが居るけど、馬と言い張れば大丈夫大丈夫。
どうせ一日泊まればこの村から出て行くのだけど、怖がらせるより嘘でも安心させた方が何事もスムーズである。
「とりあえず一泊出来るところをまたお願いしたいわ。
今度は人数が八名なのだから、部屋は四つお願い」
「ふむ、そうですか。まぁナツメちゃんの頼みだ。すぐに宿に言って用意させよう。
おい! いつまで隠れてるんだ! ナツメちゃんたちをお出迎えせんかっ!」
村長は未だに家の裏に隠れている村人たちを怒鳴りつけて、私たちには笑顔を向ける。
「では私はこれで。一日だけですが、ごゆっくりと寛いでな。何かあったら言うんじゃぞ」
そう言ってのそのそと自分の家に戻っていく村長。
それと同時に村人の一人が恐縮するように私たちに近づき緊張気味に今日泊まる宿へと案内してくれた。ありがとね。
まぁ、なんでたかが二回しか訪れていない村にこんな村長自らの歓待をされているのかというと、たまたま村に訪れた際に、近くに現れたザンコクマをちょちょいと退治してやったからである。
その時に村壊滅の危機を救った救世主だと崇められてしまったからだ。
B級の魔物が村に現われたら、凄い大事件だからね。
まぁそんなこんなで私たちは何事も無く宿を手に入れたのだー。
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「……ツメさま、ナツメさまぁ。うぅ……」
むぬ? にゃんだか可愛らしい何かが私を呼んでいる?
「ナツメさまぁ、ぐすっ……」
まだ暗い部屋の中で目を覚ました私は、服にしがみ付く天使ちゃんを見つける。
少し目を潤ませている辺り、どうやら怖い夢でも見ちゃったかな?
とりあえず可愛いので、寝ぼけたフリしていただきます。
「ぅん? なぁ、に、この可愛らしい子は……。たべひゃうぞー、ぱくっ」
「あひゃぁ!? ナツメしゃま!?」
お耳をパクッとしてやるとビックリして大きな声を上げちゃう。
隣でペコちゃんがスヤスヤしているから静かにね?
ユルユちゃんの身体を引き寄せて抱きつく。このもちもちの肌! なんて抱き心地!
昨日まで囚われていたとは思えましぇん!
「ナツメしゃま! きついでしゅー」
「んん!? ご、ごめんね、ユルユちゃん! 急に近くに居たからビックリしちゃったわ!」
ギュッとすると、思いのほかきつく抱擁してしまったらしく、苦しそうな声を上げる。
危ない危ない。甘い声に脳が解かされて理性が一瞬飛ぶところだったじぇ!
「どうしたの? 怖い夢でも見ちゃったかな?」
「うん……」
私に抱きついたユルユちゃんを見ると、少しお目目がウルウル。
なんて可愛らしいの! こんなに可愛いユルユちゃんを虐めるなんて、悪い夢め! 許せん!
でも私の部屋に連れてきてくれてありがとうございます!
これはさっそくユルユちゃんとの心と体の距離を縮めろというお告げですね。
「ふふ、しかたないわね。ほら私の隣に来ていいわよ」
ベッドを少し開けてここにおいでとポンポンする。
さぁ、隣に来なさい。というか是非きて下さいませ!
「ナツメさま! ありがと!」
ユルユちゃんは勢いよくベッドに侵入すると私に抱きついて、私の胸に顔を埋める。
相当怖い夢を見たのだろう、私はユルユちゃんの赤みがかった細い髪に指を通して撫でて、よしよしよーしと落ち着かせる。
お互いに抱きついたような姿勢で、ユルユちゃんが安心するように背中をポンポンと優しく叩いて落ち着かせる。
ナツメは何かお話をしようかなと考えていると、すぐにスースーと寝息が聞こえてくる。
どうやらユルユちゃんはすぐに眠ってしまったらしい。
可愛らしい寝息を立てる彼女を頬を軽く撫でて、こんな事を思う。
もう寝ちゃったの!? というか、なんたる可愛さ!
ユルユちゃんってば、はぁー……。もう一生離れたくないわ!
ふわぁはぁぁあ、幼女のフワフワした香りが脳髄にまで染み渡るわぁ……。
はぁはぁ、この柔らかなプニモチ肌も私のもんだあぁぁあ! フモフモしたいぃ! フモフモニャンニャンしたいよぉぉおお! 今すぐお風呂でワチャイチャしたいぃぃいい!
んいや、だめだよ! 頼られ系お姉さんを目指す為にここはがみゃん、我慢が大事だ! 寝ている間にさわさわしていいのは、髪の毛とかぐらいだ! あとギリギリほっぺたとかだ!
「きもい」
「んにゃ!?」
ベッドで己が欲望に悶えていると、隣、ユルユちゃんが寝ている方とは反対側から声が聞こえる。
「ペコちゃん、起きてたの? というか起こしちゃったかしら?
ごめんなさいね。でもこんな遅くまで起きてちゃ大きくなれない……いや、大きくならなくていいわよ?」
「どっち……」
低身長推進派の私とて、流石に成長するからといってロリやショタに「寝るな」というような鬼畜ではない。
むしろたくさん寝てたくさん大きくなってね! とか言いたい派閥ではあるのだが、それとは矛盾してすぐには大きくなって欲しくないという気持ちもあるのだ。
「意味不明」
それもそうなのだけど、この矛盾こそが子を思う親の気持ちではなかろうか!
いつか成長していく我が子を思いちょっぴり寂しく思うお母さんのような。そんな母性溢れた心を私は持っているといっても過言ではない。つまり私はお母さんだ!
故に私が小さな子に対して過剰すぎる愛を抱いていたとしても、全てが母性に起因するものであり何ら問題は無いし、こうしてペコちゃんをナデナデスリスリして幸せな気持ちになるのも、母親としての素質を持つ私の愛情故であろう。まぁ子供は産んだこと無いけど。
「きもい」
心の中で私がしていた弁明は全て聞き入れられず、ペコちゃんは私に背を向けてしまう。
「ふふ、そんなペコちゃんも可愛い!」
ちょっと生意気を言っちゃう、そんなペコちゃんに抱きつく。
きっと彼女は甘える事を恥ずかしがって、つい悪い口になっちゃう系の可愛い少女だ。愛いやつめ。
今も彼女は嫌そうに身体を捩じらせているが、やはり夜中に起きたため眠気に勝てなかったのだろう。すぐに私の抱擁を解くのを諦めて、スースーと寝息を立ててしまった。
なんだか無視されたようで悲しい気分……。
もうちょっと話し相手になって欲しかったなぁ。
まぁこうやってずっと彼女たちの寝顔を拝見するのは全然良いのだけど、私も眠たくなってきちゃった。
眠たいのを我慢するより、朝早く起きて彼女たちの愛らしいほっぺにチュッとやって、愛情溢れるおはようをしたい。だから私もおねんねしよう。
じゃあ、おやすみー。
次くらいには新しい章に入りたい。




