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ストーカーは異世界でも女暗殺者(ストーカー)やってます☆   作者: 後伸季孝
2章 私ストーカーだけど暗殺者です!
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ストーカーと帰路

あらすじ:ペコちゃんとお風呂!




 次の朝、ナツメたちは旅の準備を早々に終えて、昼間の日が高い内に宿を引き払った。


 キタルダ街はキタルダスの館の謎の炎上により、街から出る際には厳しい監視と積荷のチェックが行われていた。

 しかしナツメたちは「早くこの街から離れたい」と告げ、兵士たちへの賄賂を渡すと、特に問題も無く軽いチェックのみで街から出ることが許された。


 その後、馬車での移動となるのだが、自宅のあるニシルダ領へは使い二週間。三つの村を経由しての旅立ったため、今回も同じような経路でのんびりと帰る予定だったのだけど……。



「ごめんね、次の村までは三日も掛かっちゃうの。

 村に着いたらまた美味しい物作るから、ちょっとだけ我慢して欲しいな?」


 隣に座るペコちゃんの頭をナデナデ。

 不機嫌なペコちゃんをどうにか宥めるがまるで機嫌が直らない。不満です! と言いたげに、頬を膨らませて目を合わせてくれないの。そんな拗ねてるところも可愛い!


 ペコちゃんがここまで不満を抱いているのには、一日中馬車の旅に慣れていないのもあるのだろうが、それ以上に理由がある。


 それは旅の間のご飯が美味しくない事。

 美味しい物を食べさせてやると言われたからついてきたのに……。

 実際、宿での夕食と次の日の朝食がとても美味かった。しかし、馬車での移動になってからは食事が貧相なものになり、それが二週間も続くことが堪えられない。といったように怒っているのだ。プンプンだ。

 村に着いたらご馳走を作ってあげると提案し、どうにか宥めてみているが堪えられないそうである。昨日まで魔物の生肉を主食にしていたのに、もう我侭さんになってしまっているようだ。

 シンシアの夕食を食べさせたのがいけなかったかな? 超美味しいからね、仕方ないね。


「おそい」


 どうにか機嫌を直して欲しいと思っていると、ペコちゃんは急に立ち上がり馬車の外へ飛び出した。


「ペコちゃん!? お外は危ないよ!」


 外へと飛び出したペコちゃんを追いかけるためにナツメはすぐに馬車を止めさせてから外へ出る。侍女たちも私に続いて外へと飛び出した。


 馬車の外に出るとペコちゃんの目の前には、私の身長ほどの大きな、濃い灰色の二つの卵。


 ぺ、ペコちゃんが産卵した!?

 くっ! あの怪物(ケルベロス)のような魔物を出す気?


 産卵シーンを目撃できなかったことを後悔しつつ、森林にて卵からケルベロスが生まれた光景を密かに目撃していたナツメは警戒する。


「ペ、ペコちゃん、……何をする気かな?」


 まさか私たちをその魔物で襲わせないよね?

 なんて考えるが、ペコちゃんと私はまだ会って数十時間程度の関係。

 もしかして私の事が邪魔になった? 馬車の中で不自由にしちゃって私の事が嫌いになっちゃった? やっぱり魔物の世界に戻りたくなった? それは非常にショック! びぇええん!


 異様な光景を前に勝手に一人でショックを受けていると、ペコちゃんの目の前の卵が一つ、ひび割れて、ドスドスと殻を叩く鈍い音と共に殻の破片が辺りに散らばった。



 ――ヴゥヒヒィィィン!



 勢いよく飛び出した魔物に目を奪われる。

 黒に近い灰色の毛並みとたてがみ。

 普通の馬より一回り大きいその魔物は、息を吐くたびに闇を口元からどす黒い闇を洩らしている。日が高い昼間であるのにも関わらず、その魔物の周囲だけ何故か太陽に照らされること無く薄暗く見える。


 悪魔の使いようなその姿は明らかに通常の馬などではない。もはや怪物。

 その怪物が吐き出した闇のような吐息が触れると、周囲の雑草を途端に枯れ始める。そして重機のような身体で地面を枯れ草と共に踏み潰している。


「ひっ!?」


 あまりの大きさとどす黒い空気を纏った姿に、ユルユちゃんが小さな悲鳴を上げる。


 そうだよね、怖いよねユルユちゃん!

 私もあの威圧感のあるお馬さんには驚きだよ。まじこええ。


 でもこの馬……どこかで見たことがあると思ったら、あれだわ。




 黒王号。



 あれ? ここって世紀末でしたっけ?



「うま」


 私が少し現実から目を背けていると、ペコちゃんが黒王号に命令? をする。

 それを聞くと、わかった。とぶるんと鼻を鳴らして返事をし、まだ割れていないもう一方の大きな卵の方へ向かった。そして重たい前足でその卵を蹴るとバキリとひび割れて中からもう一体の黒王号が……!?



 ――ウォォオオオオ!


 かと思えば、そんなことは無かった。

 黒ではなく、まったく逆の純白。遠くから(・・・・)見れば完璧な白馬だろう。

 その上に王子様でも乗れば白馬の王子様の出来上がりである。


 しかし、目の前の全身を白に染めた、白馬に似た怪物は、きっと白馬の王子様すらこの馬を選ぶことは無いだろう……。


 だって、白色の肌をしたごついスキンヘッドのオッサンの上半身が馬の頭の代わりに付いてるんだもの。

 これが俗に言う人馬一体というやつですか……。まさに言葉通りですね。はい。


 そして卵から産まれた二頭のお馬さんは、馬車を引くのはこの俺だ。と言わんばかりに私たちの乗っていた馬車に近づき、繋がれていた(相対的に見て)小さな馬を蹴り殺し、噛み殺し、ぐっちゃぐっちゃと食している。うわぁ、無慈悲……。

 特に白馬さん? あなた上半身は人間なんだから、そんな顔から突っ込んでガシガシ食べないでよ……。もうお顔前面血だらけですけど。


 その光景を見て、ユルユちゃんもシンシアの後ろにしがみ付いて怯えている。

 いやぁ怖いよねぇ?


「ひぃぃぃいい――!?」


 アイちゃんの恋人のフィリスさんも流石にこの光景には恐怖しているようである。

 私の横で眉間に皺を寄せて拳を構えているアイちゃんとは違って一般人のようだ。よかった。


 ……というかアイちゃん?

 そんなメリケンサックなんかつけてやる気なの? あの黒王号に勝てるの?

 そもそもどうしてメリケンサックなんて持っているのかな?

 え? メイン武器? そうですか……。


「じゅんび」


 生まれたお馬さんに驚く私たちを他所に、ペコちゃんはさらにお馬さんたちに指示を出す。

 白馬と黒王号は口元を赤い血で濡らしたまま顔を上げてそのまま馬車の方へ。そして馬車に繋がっている馬を繋いでいた縄を白馬さんが手に取り、黒王号と自らの首に掛けた。



 ――ブルルルオウ!

 ――ウォォオオオオ!


 準備が完了した。いつでも行けまっせ! たぶんそんな感じの事を言っているのだろう。

 こちらを向いて大きく鳴く二体の巨大馬を見て、ペコちゃんは満足気だ。

 そして、ペコちゃんはこちらをチラリと見ると、これならさっきより速いぞ。と言わんばかりのドヤ顔アイコンタクトをして、一人馬車の中に戻っていく。


 まぁこれの方が速そうではあるけどさ……。

 でもそれ自転車が遅いからって、戦車持って来てるようなもんだよペコちゃん?

 速度は知らないけど、戦闘力がたぶん段違いに上がっているよね?


「あー……これは乗ればいいのかしら?」


 乗ることは最早、決まっているのだけど、なんとなく隣のシンシアに話を振ってみる。


「そうですね。元々居た馬もあのように食べられてしまっては、彼女が召還したあの魔物に馬車を引かせるほか無いでしょう」


 うん、シンシア。その通りなんだけど、貴女はなんでそんな冷静なのかな?

 私でも突然の捕食シーンにビックリしてるんだけどなー……。


 というかこの馬車で村とかに近づいたら村の人絶対怖がるだろうなぁー……。


 私は馬車の前でヤル気満々な黒白の馬と、妙に自慢げなペコちゃんを見て、絶対に厄介な事になるだろうと思った。

 でも移動手段がこれしかなくなったので諦めます。


 しゅっぱつしんこー(白目)




明日もう一個だします。

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