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ストーカーは異世界でも女暗殺者(ストーカー)やってます☆   作者: 後伸季孝
2章 私ストーカーだけど暗殺者です!
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シンシアとアイの遊び

あらすじ:潜入します!




「ここは……、客室ですね」


 シンシアとスペリアは無用心に開け放たれた館の二階の窓から潜入。


 二人が窓から部屋に踏み入れると、そこはベッドや机はあっても生活感が微塵も無い部屋。

 屋敷で働く侍女にとっては掃除などで馴染みのある空の客室であった。


「しかし、妙ですね。

 どうして誰も使っていない客室の窓が開いていたのですか?」


 そう問いかけるスペリア。罠なのではないか?

 そう疑うが、シンシアが大丈夫だ。と告げる。


「心配ないわスペリア。

 ほら、そこに居るんでしょうアイ?」


 不意に部屋のクローゼットに向けて声を掛けるシンシア。

 するとガラっと開いた扉から、小さな女の子が現れたのだ。


「やっと来たんだ、シンシア!」


 嬉しそうな顔をして、小走りでこちらに向かってくる。


「侍女長、あれが内通者で――」

「下がって」



 ――っえ?


 スペリアは内通者かどうか聞く前にシンシアに手で言葉を遮られ、後ろに下がるよう伝えられた。

 どういう事!? そう思う間もなく、目の前で不意に行われた。



 ――ガキィィィイイン!



 剣戟!? いえ、違う!?

 あれは、ナイフ同士が競り合っている!?

 でも一体何故!


「ふふっ、久しぶり。

 会えてとっても嬉しいよ、シンシア!」


「ええ、私も」


 再開を喜び合う二人、しかしスペリアの目の前では戦いが起こり、剣戟を交わし合う二名。


 数秒の鍔迫(つばぜ)り合いの後、シンシアが不意に蹴りを繰り出すと、分かっていたかのようにアイは姿勢を低くして、そこから足払いに派生する。

 しかし、シンシアもそれを察知して前方に飛ぶと同時に片脚をピンと伸ばしアイに突っ込んだ!


「『仮面二輪飛蝗蹴撃(ライダーキック)』!」


「させない! 『銀巨人十字宇宙光線(スペシウムビーム)』!!」


 しかし、相対するアイも低い姿勢のままで腕を十字に組みその右手から光が放出、シンシアを襲う!



「うわっ!? い、いきなりなに!?」


 スペリアが光線の眩しさに驚いて目を瞑り数秒。

 再び目を開けると、目の前には惨状が……。



 ――って、あれ?



「ふふん、腕を上げたわねシンシア!

 ただの蹴りに前に飛び出す推進力をプラスした、如何にも必殺技っぽいわ!

 きっと普通に蹴ったほうが強いのに、とても無駄だわ! かっこいい!」


「アイ、貴女も素晴らしい必殺技を考えましたね。

 何の意味も無い謎の十字組みからの光線。

 しかし、その変な姿勢(ポーズ)に相手の目線を集中させてから、発せられた目暗ましは意外と効果的でした」


 二人は手を取り合ってなにやら楽しそうである。


「あ、あのー……。

 何をされてらっしゃるのですか?」


 二人の再会? に水を差すのはあまりしたくないが、ここは敵地であるため出来れば大きな音も、目暗ましになる程に明るいフラッシュも焚かないで欲しいのですが……。

 そんな心配を他所にシンシアはその小さな侍女の紹介を始める。


「ああ、紹介します。

 彼女は内通者のアイ。昔の仕事仲間です。

 アイ、こちらは今の仕事仲間、私の部下のスペリアです」


「はい、スペリアちゃんですね!

 ちなみに今のは私とシンシアの謎の必殺技を作るという遊びです。

 これが私とシンシアが手紙で打ち合わせした、出会ったときの相手が本物かどうか確かめるための合言葉みたいなものです!」


 胸を張ってアイはそう語るが、どちらかというと合言葉の"言葉"の部分は、肉体言語的な何かだろう。

 お互いにさっきのよく分からない遊びで通じ合っているのだろう。

 あの真面目なシンシア侍女長がこんな事をしているだなんて信じられないけど。

 にしてもあの身のこなし、侍女長と対等にぶつかれるなんて相当な実力者?


 ……よし、考えるのは止めてしまおう。

 今は任務中だし、きっと気にしないのが一番だ。


「それより、早く任務のほうを遂行しなければならないのでは?」


「ええ、そうですね。

 アイ、現状はどのようになっていますか?」


 シンシアはアイに対してそう問いかける。

 たぶん事前にある程度任務について話しており、先に館内部の情報を探らせていたのだろう。

 スペリアはそう思っていた。だが……。


「そうだね~、手紙に書いてあった地下室の入り口は見つけたし見張りは全員縛っておいたよ。

 今日の館の午後の侍女当番は私とフィリスだけだから大丈夫だし。

 そのフィリスは安全な所に逃がしたから、後は地下室に行って奴隷を保護するくらいかな~。

 あ、契約書はここにあるよ!」


 そう言ってアイはバサバサと紙束を渡してきた。

 それをシンシアが当たり前のように受け取る。


「流石ですねアイ。

 ではスペリア、私たちは地下室に行きますよ」


 そう言ってシンシア、そしてアイは部屋から出ようと扉に向かった。


 そして、今の話の流れにスペリアは完全についていけなかった。


 え、どういうこと?

 このアイって侍女が今何て言ったの?

 確か、私たちがやるべきことは……。

 館の地下室を見つけて、奴隷と誓約書をばれずに盗んでくる。

 そんな高難易度の任務だったはずなんだけど……?


 それをこの小さな女の子が、館に居る見張りを全員捕縛して誓約書も地下室の入り口も見つけて……。


 つまり私たちは地下室に言って奴隷をつれて帰るだけ?


 そんな簡単でいいの……?

 だからさっきあんなに遊んで物音を立てても光を放っても、

 見張りの一人も来なかったって事なの!?


「スペリア、早く来てください?」


「――ぅえ!? は、はいぃ!」


 よ、よくわからないけど、ここで私が来た意味ってもう無いんじゃぁ……。



 スペリアはそう思いながらも先に行くシンシアたちについていくのであった。




*************




 長い廊下を歩く三名の侍女。


 館の見張りはアイが一室に縛って放置しているらしいので、最早足音を隠す必要すらない程に自由に動けるのですが……。

 日頃から私たち侍女は「クセになってんだ、音殺して歩くの」状態ですので、まるで私たちは普段から足音がしません。

 私とスペリアは屋敷での暗殺者訓練を行い会得した歩法ですが、何故か暗殺訓練をしていないアイも足音が聞こえません。

 何処で訓練していたのでしょうか?


 ちなみに「クセになってんだ、音殺して歩くの」という目からウロコの名言は、ご主人様の世界で有名は暗殺者の御言葉らしいです。

 その言葉は私たち"侍女隠密部隊"の「暗殺者の教え(著 ナツメ・ヒダカ)」に暗殺者としての心得の一つとして記されています。

 なんとその名言の主は、若干十二歳にして暗殺者として世界でも有名だそうですが、暗殺者が有名というのはどうなのかと思います……。


 ご主人様は御付きである私にだけ秘密を話していただけました。

 ご主人様が別の世界(・・・・)の人間である事。

 この世界に来て、初めて私にだけ話した秘密らしいのです。


 ふふ、私だけ……。それだけ私を信用なさっている。

 ご主人様が真に頼るのは、私しか居ないのではないでしょうか。

 これからも私はご主人様の唯一でありたい……。


 ……おっと、今は任務中でしたね。

 もうアイがほとんどの敵を捕縛したので私も油断をしているのでしょう。私もまだまだです。

 気合を入れなおさなければなりませんね。

 おっと、丁度良いところにネズミが……。


「ふっ!」


 胸元から取り出したナイフをネズミに投げつける。


「侍女長!? いきなり何を!」


「ネズミです。駆除するのは当然でしょう?」


「そうですか……?」


 スペリアにはこう言いますが、本当は集中が欠けてないかの確認です。

 そして一発で仕留めきれたのでまだ私は集中できているという事ですね。

 安心しました。


「はぁ、他人の家なんですから、ネズミくらい放っておいても……」


「そうでしたね。次からは止めておきましょう」



「それより、アイさん、侍女長……。

 この廊下の先なんですが。

 人が複数人……おそらく武器を持っています……」


「本当ですかスペリア?」


「はい、もしかしたら見張りの方では?

 縛って放置していたのなら、縛りが解けたのかも……」


 そう言ってスペリアはアイをチラッと見る。

 確か見張りを片付けたと言ったのはアイだ。

 どういうことだ。といった目で私も見てやった。だが、アイは慌てる事は無い。


「確かにこの先を曲がったところの部屋に全員詰め込みましたね。

 でも彼らがいくら出てこようと、もう一度閉じ込めれば良いのです。

 今度は地下室にでも持って行きましょう!」


 そう豪語している。

 今から私たちを危ない目に合わせてしまう。

 などといった申し訳無さは欠片も持っていないようで、まるで反省の色は無い。

 まぁそこがアイらしいのですが……。


「いいでしょう。もう一度、見張りを倒して縛っておきしましょう。

 ……いえ、私たちの顔が見られる可能性がありますね。

 殺してしまいましょう」


 この任務は目撃者が居てはならない。

 シンシアの言葉に他の二人は少し顔を強張らせた。


 しかし、スペリアは"侍女隠密部隊"の一員。

 いつか来る"殺し"の機会がたまたま今日になっただけだ。

 彼女も今日はそういう覚悟をしていたはずである。

 横目で彼女を見てやると、先ほどに比べて幾許か緊迫感のある表情に戻っている。


 問題はアイだろう。そう思って彼女を見ると、もうすでに決意は固まっていたらしい。

 そうだった、彼女とは手紙で侍女隠密部隊の話もしているし、彼女がご主人様の下で働きたいという旨の内容も手紙で分かっている。

 今日この任務が終われば、私も彼女(アイ)をご主人様に紹介するつもりだ。

 アイが屋敷に来たのであれば当然、侍女隠密部隊に入隊するだろうし、そうなればいつかは暗殺に関わるだろう。

 彼女についても、いつか来る殺しの機会がたまたま今日になっただけだ。

 ならば何も心配することはありませんでしたね。


「スペリア、アイ? 覚悟は出来ましたね?」


「うん、出来たよ!」

「私もすでに覚悟しております!」


「では行きましょう!

 いいですか、この任務は、侍女隠密部隊にとって始めてご主人様から賜った任務です!

 必ず成功させるのです! そしてご主人様に忠誠を!

 敵の不意を突き、理不尽に命を奪いなさい!」


「「はい!」」



 そういうと、三人の侍女たちはそれぞれ武器を手に持ち、この先に居るであろう見張りの集団に突撃する!





シンシア任務の話は二話くらいで、終わるだろうと思ったが、

やはり気分しだいで長くなるものである。


あ、ちなみに『仮面二輪飛蝗蹴撃(ライダーキック)』は魔法ではないただの体術です。

銀巨人十字宇宙光線(スペシウムビーム)』も、たぶんただの眩しい魔法です。


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