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ストーカーは異世界でも女暗殺者(ストーカー)やってます☆   作者: 後伸季孝
2章 私ストーカーだけど暗殺者です!
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勇者と上位種

あらすじ:勇者が居ない間にキタリウスの殺害に成功したナツメ。それはそうと、勇者は何やってるの!遅いよ! というわけで勇者サイドです。




「ググガガアッァアア!」


 ――ドザァァアン……。


 目の前の巨体がユウシの剣で切り捨てられ、雪の積もった地に沈む。

 雪が俟い、鎧に微かに乗る赤い雪を手で払うと、ふぅ、と息を吐いた。


 周囲には一方的に両断されたザンコクマの死体が三体。

 ユウシが先ほど見つけたザンコクマたちは、

 ユウシに傷一つ付けることなく狩られたのだ。


「やっぱり雪が積もっていると動きづらいなぁ……。

 戦闘も長引いちゃったし、早くキタリウスさんのところに戻ろう」


 血の付いた鎧に地面の雪を掴み、擦り付けて出来るだけ汚れを落とす。

 そして、ザンコクマの出現のため、待たせていた森林調査隊の元に戻ろうとした、が……。



「うん?」


 ユウシは視界の端にまた見慣れた魔物を捕らえてしまった。

 またもやザンコクマである。

 散歩をしているのかこちらに気付いておらず、森の奥に消えていった。


「またザンコクマか……。

 やはり多いな。でも一体ならすぐ終わるか」


 見つけたザンコクマを狩りにまたさらに、森林の奥に足を踏み入れた。




「あ!? ここは、ザンコの群生地か!

 って、ザンコクマがあんなにたくさん!?」


 ユウシが先ほど見つけたザンコクマを追っていくと、

 この世界では高級果実である、大きくて甘い果実。

 ザンコが生る木が多く見えた。

 ここはザンコの群生地である。

 しかしそこで見つけたザンコクマの数は予想を大きく上回っていた。



 先ほどのザンコクマが1、2、3、…………10、11!?

 11体もいる!?

 どういうことだ……!



 ――ってあれは!?



「おん、なの子……!?

 どうしてこんなところに!」


 ユウシが目にしたのは有り得ない光景。

 このザンコの群生地の中心には幼い女の子がいたのである。

 雪の上にちょこんと座って身の丈に合わないであろう

 丈の余った真っ黒いパーカーのような服装に、真っ黒な髪。

 それが、露出している雪と見間違える程に白い脚とくっきり分かれて目立っている。


 その少女の周りには、B級の魔物ザンコクマが計11体。

 その熊たちが、我先にと器用に両手で持っている、

 好物であるはずのザンコを少女に手渡している。

 少し遠く、向こうを向いているため表情は確認できないが、

 少女なザンコを受け取るともぐもぐ食べているようにも見えた。



 どういうことだ?

 彼女は何者? こんなところに子供が居るわけないし……。

 だとすれば人の姿をしている魔物? ……まさか、上位種!?



 ユウシは目の前の少女が上位種と呼ばれる魔物ではないかと考える。

 このように魔物を従えている人間を見れば当然だ。

 上位種を知っているハンターならそう疑うだろう。

 ユウシもかつて上位種と相対したことがある。


 上位種とは魔物が人型の姿を模して、知性を得た厄介な魔物。

 会話による意思疎通が出来るため、一見すると魔物であると気付きにくい。

 非常にやっかいな存在なのだ。そんな上位種には大きく分けると二種類いる。


 『単独種』と『女王種』の二種類が存在する。


 『単独種』は名前通り群れを作ることなく、単独で行動する種だ。

 だいたい人間の街に潜んで問題を起こすのがこの単独種である。

 能力も高く非常に厄介である。

 単独種には、100年も昔には国の独裁者に成り代わったり、

 この世界の二大宗教の一つ。世界の創造主ゼビスを主としたゼビス教。

 そのゼビス教の教皇を補佐をする最高顧問、

 枢機卿(すうききょう)にも成り代わっていた事があるらしい。


 そしてもう一つは女王種。

 自分の種族を中心に魔物たちを従える上位種。

 由来は人間で言う女王の役割と似ているためとされている。

 もう一つは女王種は必ず魔物の雌のみしかいない。

 女王種には、主に魔物の氾濫による人間の支配圏を侵略する性質がある。

 原因として従えた魔物が増えすぎたために、食料を求めての侵略とされている。

 その氾濫は約十年に一度の間隔で起きているようだ。



 ユウシの目の前で美味しそうにザンコを頬張る少女も、

 ザンコクマから成った女王種ではないかと推測できる。

 だが少女にはあまりクマ的要素は見当たらない。

 顔が見えないから何とも言えないが……。


「とりあえず、接触して様子を見るか……?」


 彼女が女王種であると決まったわけではない。

 もしかしたら……、可能性は非常に薄いが、ただの人間かもしれない。

 ザンコクマを従え、飼っているだけの少女かも……。

 いや無いな……。B級の魔物を飼うだなんてありえないでしょ。

 

 上位種の魔物は自動的にS級に認定される。

 勇者といえど、一人で相手取るには厳しい相手だ。


 ただ、あの周りのザンコクマだけは倒そう。

 11体ものザンコクマが街を襲ったりしたら、被害が大き過ぎる。

 それだけは避けなければ……。

 あの上位種の怒りを買ってでも、あのザンコクマたちは消したほうが良い、はず。


「よ……し、いくぞ」


 ゆっくりと剣を抜き、ギリギリまで接近する。

 そしてユウシは一番近くに居る背を向けたザンコクマへ剣を振り下ろす。


「はあ!」


 一刀両断。

 ザンコクマの頭から丸々断ち切ったユウシは勢いに乗って、次のクマに接近。

 辺りのザンコクマはいきなりの事過ぎて、

 未だに何が起こっているのか理解できていないように見える。


「ふっ!」


 今度は横薙ぎで二体目のクマを胴体を斬った。

 まだ死んだことにも気付かず、

 斬られた後に何事だと振り向く様はなんと間抜けな事か。


「次! 三体目! 『限界突破の臨界点(レベルオーバーターボ)』!!」


 ユウシがそう叫ぶと、彼の身体からは眩しいほどの光と、輝きが溢れ出した。

 全身から魔力が(ほとばし)り、巡り、包み込む。

 『限界突破の臨界点(レベルオーバーターボ)』は単純明快、身体能力を大きく向上させる神聖魔法である。


 ユウシは剣を構えて標的に向かって、ただまっすぐに疾走。

 ザンコクマにとっては一瞬で目の前に現れた錯覚であろう。

 だかその認識をした時にももう遅く、すでに身体が両断された後である。


「はぁぁぁあ嗚呼! 四体、五体、六、七、八、きゅう――!!」


 目にも留まらぬ速さでザンコクマを両断していくユウシ。

 ザンコクマはただただ狩られて行くのみで、

 鳴き声一つ出すことなく亡骸が崩れ落ちていく。


「十体目っ! ラストッだ!」


 十体目を両断し、最後に定めた目標に一気に詰め寄り剣を最速で薙ぐ。

 これで全部のザンコクマを倒した……。

 後は上位種に一撃を入れて様子見だ。

 ヤバかったらすぐに逃げればいい。

 ユウシは身体に光を纏わせたまま、上位種の魔物の方に顔を向けた。




「死ね」



 そのか弱い声に一瞬身が硬直した。

 そして目の前からユウシに襲い降る。


 ――黒い光っ!?



 ユウシはその光に触れる前に何とか避ける事に成功。

 しかし黒い光の着弾の衝撃にやられ、辺りの木々まで吹き飛ばされる。


「ぐっ!?」


 木の幹に身体を受け止められると、そのまま落ちて地面に手足が着き、

 目の前の抉り抜かれた地面の穴を目にした。

 そして、その元凶である少女に目をやって、ようやっと状況を理解する。

 いや理解せざるを得ないだろう。


 この少女に安易に踏み込んではいけないということに……。




「死ぬ?」



 目の前に佇む少女は、顔をこてりと傾けながら表情を変えずに問いかけてくる。

 その顔は童女ながら恐ろしい程に端麗で、

 雪の中で在りながらまるで一番に溶けそうなほどの白い肌。

 そして自身が纏う輝きさえも霞むほどに、

 少女の……、魔物の眼は眩しいほどの金色に輝いていた。



 なんて物騒な問いかけだよ……。

 はは……、ちょっと、いやかなり怖いかも。


 彼女の底知れぬ魔に当てられて、身体が本能的に震えてくる。

 無意識に後ずさりしてしまう程だ。

 これほどの重圧を僕は知らない!

 逃げるなら今しか……。



「死ね」


 魔物は目の前で大きな黒い光を生み出す。

 そして、その光は圧倒的な恐怖と速度を持って、ユウシに襲い掛かった。



 ――速いっ!? くそっ!



「『嵐を滅す神変(ミラクリオス)』!!」



 ユウシが黒い光に触れる間際、一つの魔法を唱えた。

 すると同時に、自分の身体が何かに操られているかのように無意識に制御される。


 『嵐を滅す神変(ミラクリオス)』は全身を包む膨大な魔力に身体を委ね、

 意思のない魔力に自身の身体を操作させることで、

 身体能力の限界を境界線まで無理やり引き上げる。

 まさに人間を超えた、神聖魔法の真髄である。


 すでに避けるのは不可能だと思われた迫る黒い光。

 しかし、ユウシが知覚する頃には、ユウシの身体はすでにその黒い光から逃れており、

 そのまま魔物に背を向けると、その場から消えるように逃走。

 密集した木々の間をギリギリを、針の穴を抜けるような精密さで走り抜ける。

 そして悪魔のような彼女(恐怖)から少しでも距離を離すのだ。


 ただ無我夢中に走ること数分。

 自分の身体を操る魔力は、ユウシの出せる最高速度を無理やりにでも維持し、

 身体が悲鳴を上げる程の速度で、上位種からの逃走に成功したのだった。




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