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ストーカーは異世界でも女暗殺者(ストーカー)やってます☆   作者: 後伸季孝
2章 私ストーカーだけど暗殺者です!
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勇者と侵入者の謎

メディア(ナツメ)に宿から追い出された勇者様サイドでお届けします




「はぁ、メディアさん怖かったー……」


 宿にて、日本人だと思われたメディアさんと一悶着あり、

 宿に居られなくなったユウシ。

 彼はひとまず、宿を探すのは後にして、

 先にキタルダ街に来た目的である魔物増加の原因を聞くため、領主キタルダの屋敷に訪れた。



「すいません、こういう者なのですが……。

 キタルダ伯爵に話があって来ました」


 ユウシは畏まりながらも、王家の印が刻まれたスキルカードを見せる。


「こ、これは勇者の証!?

 し、少々お待ち下さい!」


 屋敷の門番はいきなり訪れてきた勇者に戸惑いながらも、

 通門の手続きを終えてユウシを通す。

 門から屋敷までが遠いために用意された馬車で屋敷まで向かうと、

 ユウシを快く出迎えてくれたのはキタルダ領の領主ではなく、

 その息子のキタリウス・キタルダであった。


「ようこそお越し下さいました、勇者殿。

 私はキタルダ伯爵家の長男キタリウス・キタルダ。

 本日は我が父が隣の町へ出張中のため、私のお出迎えでどうかお許し下さい」


 キタリウスは頭を下げて、ユウシに謝罪。

 伯爵家の息子とは思えぬ、腰の低さにユウシは驚いて、

 慌てて頭を上げさせようとする。


「い、いえ、こちらこそ何の連絡もせずいきなり来てしまいました。

 謝るのはこっちの方ですから……。

 頭を上げて下さい!」 


「はい、ありがとうございます。

 では勇者殿、今回の訪問の理由、

 屋敷の中にてお伺い致しますので、こちらへどうぞ」


「は、はい!」


 ユウシは応接間に通されると、

 ユウシはキタルダ伯爵に会いに来た理由として、

 魔物増加に伴い、街の近くにC級の魔物が出始めている事を聞き、

 実際に状況を知るために調査に来たと伝える。

 そして明日、街の近くのケーテ森林に向かう予定であり、

 その調査の許しを貰うためにキタルダ伯爵の下を訪れたのだと告げた。


「なんですと!? 勇者殿はケーテ森林へ向かわれる!?

 これは好機ですね! 私も同行させて頂きたい!」


 その話を聞くと、キタリウスが興奮気味に森林調査のため同行させて欲しいとお願いされた。


「し、しかし――」


「大丈夫です!

 私はこう見えても割と有名な魔法の研究者で通っておりますから!

 少し前まではハンターとしてもB級まではいきましたしね!」


「それでも――」


「いえ、勇者殿の懸念も良く分かります。

 しかし! 私とて、伯爵の息子!

 命を狙われる経験は人より多いですから、

 自分の身は自分で守れる術を持っていますとも!」


「だけど――」


「今は強い魔物が現れていますが、昔はケーテ森林を走り回っていました。

 私にとっては庭も同然でしたね!

 ほら、勇者殿も案内人など必要あるでしょう?」


「うーん……」


「それに勇者殿は一晩屋敷に泊まるでしょう?

 もうこの時間では質の良い宿などは、部屋が空いておりません。

 今日はディナーも豪華に致しますよ!

 夜が寂しくないように、屋敷の侍女を何名か貸してもいい」


「貸し!? いや、あ、そ、そんなに同行したいのなら……」


 若干押しが強いキタリウスに、断れそうも無くなったユウシは仕方なくこれを承諾。

 明日は森林調査隊を組んで極寒の森林と名高い、ケーテ森林に突入することになった。


 べ、別に、侍女を貸す。と聞いて承諾したわけではない。

 あそこまで連れて行って欲しいのであれば、仕方ないと思っただけで……。

 そ、それに! 僕には、ミィリアがいるのだから不貞なことは絶対しないぞ!


「はっはっは! 勇者殿も男ですな!」


「いえ、違――」


「ああ! まずは部屋の案内からせねばな!

 えー、君、勇者殿がお泊りになる部屋へ案内しなさい」


 ダメだ、この人まったく話を聞いてくれない。


 ユウシが溜め息を一つ吐いて、肩を落とすと、傍から声が掛かる。

 うん? メイド服?


 近寄ってきたメイドさんを見ると、ユウシの頭二つも小さな子供のメイドさん。

 綺麗なお辞儀で挨拶された。


「ゆーしゃ様、お部屋に案内致します。

 屋敷内でのゆーしゃ様のお世話は私、アイが努めさせて頂きます!」


 どうみても可愛らしい子供メイドである。

 メイドさんのお仕事に一生懸命な感じがして非常に好感が持てる。

 無邪気そうな笑顔もまた可愛らしい。


 というかテーブルの向かいで親指を立てて笑顔なキタリウスさんには悪いけど、

 僕はこんな年端もいかない女の子に手なんて出さないぞ!?

 ロリコンじゃないんだから! ロリコンじゃないんだから!

 いや、適年齢期の女性なら手を出す。なんて言ってるわけじゃないからね!

 何度も言うように僕にはミィリアが……、って僕は誰に言い訳してるんだ!?



 ユウシの無意味な言い訳を他所に、

 案内を始めたメイドのアイちゃんにユウシは慌ててついていく。


 後ろから一生懸命にユウシを案内するアイちゃんの姿を眺めて、

 今日はメイドを良く見る日だな。と考える。


 うーん、やっぱりメイドさんを雇うとしたら、こんな子も良いよなぁ……。

 あの宿で会ったクラリアさんにスペリアさんもTHE・メイドさんって感じだったし。

 あ、でもシンシアさんは厳しそうだったし、傍に置くにはちょっと大変かも……。

 なんて、勝手に思っちゃうな。はは……。


 可愛らしい侍女服と腰まである長い髪を揺らしながら、斜め前を歩くアイちゃん。

 彼女を微笑ましく思いながら見ていると、すぐに屋敷の三階までまで案内された。

 すると目の前にはもう一人、フィリスさんという女性が立っていた。



 アイちゃんがフィリスさんに話しかけると、

 なんといきなりフィリスさんは出会い頭にアイちゃんを抱きしめた!?

 いきなりの事に驚いたが、アイちゃんも困惑したらしく、

 それでも冷静に注意を促す。


「フィリスさん? どうしたの?

 おきゃくさまの前だよ?」


「え!? あ、あらあら、申し訳ありませんわ勇者様。

 あまりに可愛らしいもので、思わず抱きついてしまいました」


 いや、その気持ちは分かるけどさ……。


 うん、どうやらフィリスさんはちょっと残念な人かもしれない。

 でも穏やかそうでこれもまた良い。

 メイドさん同士の絡みなんて、なんて目の保養……。



 その後はフィリスさんも普通に部屋を案内してくれたが、

 どうやら部屋の用意はまだ出来ていなかった模様。

 まあ僕がいきなり屋敷に訪れちゃったし、仕方ないよね。

 申し訳なく思いながら、何も用意されていない部屋に入る。

 とりあえず部屋の準備が終わるまで、椅子にでも座って待っていよう……。




*************




「ぅえ!? なんで動けるの!」


 部屋でメイドさんたちを待っていると、

 部屋の外からアイちゃんの驚いたような声が聞こえた。

 何かあったのだろうか?


 やることも無いので、どうかしたのか聞こうと部屋の扉に手を掛けると、

 僕が扉が開く前に数度、ドンドンと扉が叩かれた後、

 幼い女の子の焦る声と共に扉が開かれた。


 目の前のアイちゃんは焦っているように見える。

 僕が扉の前にいた事など気にしていないようだ。


「ゆーしゃ様、申し訳ありません!

 緊急事態です、失礼します!」


「どうしたの?

 そういえば廊下で君の声が聞こえたけど……?」


「あの、あの!

 しんにゅーしゃです!

 さっきのフィリスさんはニセモノで、フィリスさんじゃなくて!

 今、走ってキタリウス様の執務室に!

 きっと襲うつもりです!」


「なんだって!?

 アイちゃん、執務室はどこ!?」


 なんてことだ!?

 まさかあのちょっと抜けているように見えたフィリスさんは演技!?

 実は暗殺者だった!?

 そんなの笑えないぞ!

 しかし、勇者である僕がいるのを知っていながら犯行に及ぶなんて相当自身があるらしい。


「2階奥です! お願いします!」


「うん! わかったよ!」



 ユウシは部屋を飛び出して走り出す。

 長い廊下を走り、階段を下りて2階へ。

 またも続く長い廊下を走り、廊下の奥の部屋へ向かう。


 すると、執務室だと思われる部屋の扉。

 それが開いたままの状態であるのを目にした。

 扉の前には、脱ぎ捨てられたように侍女服が落ちている。

 きっと先ほどのフィリスさんに化けたやつのものだろう。


 まずい!

 すでに部屋に入られているのか!?

 キタリウスさんはB級まで上がった魔術師らしいけど、部屋の中だと分が悪いはず!

 くそっ、無事であってくれキタリウスさん!


 ユウシが無事を祈りながら、腰に挿した剣を抜刀して部屋に突進する。


「キタリウスさん! 無事ですか!?」


 部屋に入って、周囲を警戒しつつキタリウスさんを確認。

 僕がいきなり来たことにどうやら、少し驚いている様子だ。

 しかし、部屋には敵の姿がない?

 争った形跡も無いように見える。


「うむ? おお、ユウシ殿!

 流石は勇者なだけあって、駆けつけるのが早い!

 これなら明日のケーテ森林の調査は私も安心だな」


 キタリウスはそう言って笑う。


 いや……、そんな事を言っている場合じゃないと思うんですけど……。


「あ、あの……、侵入者は?」


「ああ、安心してくれ、賊はこの部屋に入ること叶わずに消滅した」


「え、消滅?」


 勇者は目を点にさせて、首を傾げる。

 どうやら侵入者は退けたらしいのだが、消滅とはどういうことだろう?



「どうやらこの部屋の魔力阻害フィールドが反応したらしい。

 賊は全身魔力の塊だったのか、目の前で消滅して侍女服だけになりおったわ」


 侵入者が現れたことをさほど気にしていないようで、

 余裕の表情を見せているが、ユウシにとっては驚きだ。


「え!? それは人型であっただけで、魔力の塊だったということでしょうか?」


「ああ、もしアレが魔物ではなく魔法であるならば、非常に興味深い魔法だな。

 魔力を人型だけでは、あのように精巧な人間は作れないだろう。

 それにあの魔力は服を着ていたらしいしな」


「はい、僕とちゃんと話をしてましたし、

 アイちゃんに触れても気付かれていないようでした。

 あんな魔法があるなんて……」


「ふむ、それにあれは人の姿を真似る魔法……。

 変身魔法の領分も兼ね備えているんじゃないかね?

 侵入者がそんな魔法を持っているというのは、只者ではない。

 だが、魔力阻害フィールドに警戒できていない時点で、

 襲撃者としてはそこまで熟練してはいないのかもしれないがね」


 笑いながら、しかし今見た魔法を冷静に分析している。

 流石は、名のある魔法の研究者だ。

 しかし、どうやら今目にした魔法に興味を持ってしまった様子。

 そういう僕も変身魔法と聞いて興味を持たざるを得なかった。


「変身魔法?

 それは習得が禁止されている魔法なのでは?」


「確かにそうだが、禁止されている魔法を裏で習得したとして、

 それを実際に目撃されなければ分かるはずも無い。

 まあ、スキルカードを見れば【変身魔法】とでも書かれているのだろうが、

 他人のスキルカードなど早々見れるものではないしな。

 実質、処罰などされないのではないかね?」


「た、確かに……。

 他人のスキルカードなんてあまり見た事ないかも。

 って!? 魔法談義をしている暇は無いですよ!

 明日の森林調査ですが、どうするんですか!?

 こんな事があっては危険です!

 狙いがキタリウスさんで、魔力阻害フィールドがあると分かった以上、

 今度はキタリウスさんが外に出た時に狙われてしまうんじゃないでしょうか?」


 そう、キタリウスさんへの襲撃が失敗したからといって一回で諦めるとは思えない。

 つまり今度もまたいつ襲われるか分からないのだ。

 そんな中森林調査なんて、襲撃者にとって絶好のチャンスだろう。

 なら熱りが冷めるまで、屋敷に立て籠もるべきでは?


 ユウシはそう考えたが、キタリウスは全く逆の事を提案する。


「確かにそれはあるが、そうだとしても、

 私はいつまで閉じこもっていなければならないんだね?

 逆にユウシ殿がいる間に、私が囮になって外に出て、

 賊を刈り取るのが良いと思うが?

 もし襲ってきたら返り討ち、襲ってこなければそれでも良し。

 うむ! 実に素晴らしい案だ!

 というわけで、明日の森林調査では頼みますよユウシ殿!」


 そう言ってキタリウスは勝手に方針を決めると、嬉々として明日の森林調査の準備を行うのだった。


「その作戦って僕頼みってことじゃあ……?」


 そんなユウシの声はキタリウスには届かなかった。




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