↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ストーカーは異世界でも女暗殺者(ストーカー)やってます☆   作者: 後伸季孝
2章 私ストーカーだけど暗殺者です!
53/86

ストーカーと失敗報告

あらすじ:「あ…ありのまま今起こった事を話すぜ! 俺は執務室の扉を開いたと思ったら、いつのまにか屋根の上にいた。 な…何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何をされたのかわからなかった……。頭がどうにかなりそうだった……。催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。 もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ」


って程でもないけど、ちょっと戸惑ったナツメちゃん。





「なんで魔法切れてしまったん?

 今まではこんな事無かったのになぁー……」


 暗殺対象のいるはずの執務室に向かい、部屋に突撃したつもりのナツメだったが、

 気付くと、『立体影法師(リアルシャドウ)』を使用する直前までいた、

 屋敷の屋根の上にポツンと座っていた。


 本体に意識が戻ったのだろう。

 そして、意識が戻るということは、

 分身は執務室の部屋の前で消えたということだ。


 こんな事は今までなかったのになぁ?

 まさか魔力切れ?

 いや違うか、魔力はまだある感じするし……。

 じゃあ、あの執務室に何か仕掛けがあったのかな?

 んー、分からん!

 とりあえず今は退却だね。

 理解不能な事が起こったら、まずは逃げろってコルンくんが言ってた!


 ナツメは分身の状態からいきなり本体に意識が戻されるという非常事態を受けて、

 急いで屋敷から逃げることにした。

 逃走中は【隠密】【隠蔽】【逃走術】を最大限利用して即座に敷地内からの離脱を図る。


 私が雪の積もった庭をワタワタと走っている途中で、

 屋敷の人たちが私が侵入したことに気付いたらしく、

 見張りやら侍女たちが騒がしそうにしているのが見て取れる。


 やっぱり、執務室の扉を開けたときに何かが作動した?

 魔法を阻害する結界とか?

 まぁ無くはないでしょうね……。

 となると誰かが侵入したとばれたかも知れないし、屋敷の警戒態勢は上がっちゃうかも。


「はぁ、暗殺対象に会う前から退散だなんて情けないなぁ……。

 んでも、仕方ないっか!

 さっさと宿に帰って暖かいご飯でも食べなきゃ、やってられないわ! 寒いしっ!」


 ナツメは依頼が失敗したことを、しょうがない! と開き直ると、

 ザクザクと雪の足音を鳴らして、当然のように屋敷の敷地から脱出したのだった。




*************




「シンシアただいま!」


「お帰りなさいませ、ご主人様。

 ……お疲れですね?」


 依頼を失敗してまっすぐ宿に帰るとシンシアお出迎え。


 やっぱりシンシアを見ると家に帰ってきたって実感持てるわ~。

 もう日々の光景だからね。

 はぁ、それより報告しないと。


「そうよー。私はお疲れなの~。

 それに依頼なんだけど……。

 なんか『立体影法師(リアルシャドウ)』がブツッと解けちゃって暗殺できなかったー。

 なんでかなぁ?」


 簡単に屋敷でのことを報告すると、シンシアはすぐに原因を思いつく。


「そうですね……。

 おそらくその部屋には魔力阻害フィールドが敷かれていると考えられます。

 上級貴族の屋敷の重要な部屋にはそれらが設置されている。

 そう聞いたことがあります」


「魔力阻害フィールドねぇ……。

 やっぱりそういうのあるんだ?

 それは要するに魔法が使えない場所って事?」


「はい、魔法による呪いや毒殺、暗殺、

 遠距離からの高威力魔法に対応するため要所に設置されるものです。

 要所にしか設置されていないのは、設置費用が高価過ぎるためですね。

 1メートル四方の空間で相場五千万リュード程です。

 私たちの屋敷にも設置したかったのですが、断念致しました」


 えぇ!? たっか!?

 シンシアってば、そんなバカ高いものを私の屋敷に導入しようとしていたの!?

 そんなことしたら、私が変身魔法で悪戯することが出来なくなっちゃうじゃん!

 却下ね! 却下!


 でも魔力阻害フィールドは厄介ね……。

 つまり『立体影法師(リアルシャドウ)』の分身が使えないから、

 生身での潜入になっちゃうって事ね……。

 んー、分身無しで暗殺をするのはちょっと嫌だわ……。

 私ってばただのか弱い乙女だし、そんな度胸無いわ……。


「しかし、ご主人様は元々高いスキルがありますので、魔法など必要ないかと……。

 生身では少しばかり危険ですが、いつも通り潜入して、

 すぐに首を刈り落とせば終わりです。

 マスターコルンもこの事態を予測していたのでしょう。

 魔法を封じられればあの小僧といえど、簡単には暗殺など出来ませんから」


 うん、そういわれればそうだけど……。

 やっぱり怖いし……。



 ……ってシンシアちゃん!?

 いまコルンくんのこと"小僧"って言った!?

 何か恨みでもあるの!?

 あんなに可愛いのに!


 まあ、シンシアにとっては、

 私がコルンくんと会うたびにイチャコラ遊んでいるのが、

 気に入らないのかも知れないわね……。

 今度ギルドにコルンくんに会いに行く時は、

 シンシアを置いていったほうがいいかしら……?


「それには及びません」


 あら? 声に出しちゃってた?

 うーん……、まぁシンシアがいいなら、私も別にいいんだけどね。


 それより、屋敷潜入どうしよー。

 まじこわいわー。まじ。

 もしばれて捕まったら拷問とかだよきっと? あー、こわっ。

 てか潜入するんだったら『立体影法師(リアルシャドウ)』は標準装備でしょう?

 常識的に考えて~。


「いきたくないにゃー」


 近くにあったベッドに寝転がって、だれる。

 今の私はきっとだらんだらんにだれているだろう。

 "たれパ○ダ"くらいだれている。

 あ、あれ、もう古いか?

 今の時代は"ぐで○たま"か?

 いやどうでもいいけど……。


「ご主人様、それでは暗殺依頼を断って、

 ニシルダ領に帰りますか?」


 え?

 な、なんですと……!


 生身での暗殺を渋っていると、シンシアが思っても無い事を言ってきた。


「ご主人様、何もご無理をなされる必要はございません。

 私にとってはご主人様のお体とお心が第一、

 このような依頼など本来は二の次です」


 な、なるほど……。

 嫌ならやらずに帰ってもいいだろうという事か!

 その発想は無かった!

 悪くないね! ただ……。


「ただ、コルンくんのお願いだし~。

 叶えてあげたいじゃない?

 それにキタリウスは奴隷に拷問をして遊んでいる外道なんでしょう?

 そんなの殺さない手はないわ。

 それに可愛い子達が陰惨な目に会っているのを知って、

 私が動かないわけにはいかないわ!

 でも、生身での侵入は嫌だから、何とかならないかしら?」


 結局、自分の命が一番大事!

 だけどコルンくんからの好感度も捨てられない!

 それにやっぱり奴隷なんて許せない。

 特に子供たちの奴隷解放、それだけは譲れないのだ。

 そのためにも僅かな死ぬ可能性を消したい!


 私が死ねば助けられた子達も助からなくなるのだ!

 と、ちょっと格好良いことを思ったりした。


「そうですね。

 機会ならいくらでもあるかと……。

 対象のキタリウスは常に魔力阻害フィールドに閉じ篭っているわけではありません。

 こちらで調べました情報によりますと、

 キタリウスは週に一度、自分で所有する別館に訪れるようです」


「へぇ? 別館?」


「はい、どうやらキタリウスはそれなりに名の知れた魔法の研究者でもあるようで、

 週に一度その別館にて魔法の研究を行っている。

 ということです。表向きには……」


「魔法の研究者ねぇ……、って、表向き?」


 表向き、と言う事はもちろん裏で何か行っているということだろう。

 たぶんそれが……。


「はい、キタリウスは新魔法の人体実験と称して、奴隷を買い入れております。

 市民からの印象は良くないですが、

 奴隷なら仕方ない、という程度の意識ですね。

 ですが奴隷を仕入れている本当の目的は、集めた情報から考えると、

 ただの拷問趣味に付き合わされているだけのように思われます。

 地下には実験施設……、もとい拷問施設を備えている。

 そういう情報もありました」


 そう……。

 やはり殺しておくべきだわ。その男……。


「それで、その別館には魔力阻害フィールドは無い、ということかしら?」


「いえ、申し訳ありませんが……。

 別館にも要所に魔力阻害フィールドが設けられております。

 なので残念ですか狙いはそこではありません」


 ええ!? じゃあ何で別館の事言ったの!?


「さらに調査しましたところ、

 明日、あの勇者ユウシとキタリウスが近辺の森に向かうようです。

 最近魔物が増加しているため、その調査、魔物の処理が目的でしょう」


 へぇ? あのアホ勇者とねぇ?

 もしかしてキタリウスも一応それなりの実力者なのかしら?

 って、そういえば、名の知れた魔法の研究者ってシンシアが今言ってたわね。


 ……ってその話、たぶん今日決まったことよね?

 勇者もアポなしで屋敷に来たって行ってたし……。

 シンシアは何で今日、いやさっき決まったばかりのようなことを知っているの?

 この子の情報網どうなってんの!?

 こわっ! この子有能過ぎて怖いわー。

 いや……うん。

 よし! 考えないことにしよう!


「ですのでご主人様には明日、あの森に出向いて頂き、キタリウスを暗殺するべきかと」


「うーん、それは中々悪くないアイデアね。

 勇者がいるのがちょっと面倒だけど……」


 それでも、生身で暗殺しにいくよりマシである。

 というか別に勇者がいても、ずっと暗殺対象(キタリウス)に付いている訳ではない筈だし。

 勇者がキタリウスから離れた時にやればいいよね!

 たぶんトイレ休憩とかするときに離れるやろ。


「では私は明日、キタリウスの別館に赴き、

 奴隷たちの解放を行いたいと思います。

 ご主人様には是非ともキタリウスの血を少し持ってきて頂ければと……」


 血? ああ、奴隷の契約書に必要だったわね確か。

 それは問題ないけど……。



 って、え? ちょっと待って?

 おかしくない?

 なんでシンシアが侵入者の真似事をするのかな?

 あなた侍女だよねぇ!?


「うん、シンシア?

 貴女がそれなりに戦えることくらい、

 屋敷で稽古をしているらしいから私にも分かるわ?

 だけど、流石に別館に侵入するのは……」


「いえ、問題ありません」


 私が心配顔で問いかけるが、シンシアは自信満々そうなキリッとした顔で私を見つめ続ける。


 あらやだ、凛々しいわ~。

 シンシアってばいつも頼りになるから、

 何をやっても大丈夫な気がしたりするのだけど……。

 やっぱり危ないよね?


「大丈夫です、ご主人様。

 こんなこともあろうかと……」


 シンシアはそういうと、一つ魔法を唱えた。


 立体影法師(リアルシャドウ)


 シンシアの本体が抜け殻のように意識を失うと、

 重なり合っていたかのようにもう一人のシンシア。

 立体影法師(リアルシャドウ)の分身体が身体から抜け出てきた。


 意識を失ってもなお姿勢良く立つ本物のシンシアと、

 分身体の二人のシンシアが綺麗に立ち並んだ。


「あら!? 立体影法師(リアルシャドウ)!?

 凄いじゃないシンシア!」


「それだけではありません。

 『物真似師の戯れ(ミミックリィトリック)』」


 分身体のシンシアはさらに魔法を唱える。


 すると、一瞬のうちにあの恥ずかしがり屋さんのクラリアちゃんに!

 さらに唱えて、ツルペタスペリアちゃん!?


「わぁ! スペリアちゃん! 完璧ね!」


 あ、でも顔だけで身体はシンシアだわ。

 まだ身体は変身できないようね……。


 ほら、顔はスペリアちゃんでもシンシアの相変わらずの美乳がそこに……。

 もみもみ。


「あんっ……!? ご主人様!?」


「ほうほう、スペリアちゃんはこんな声で鳴くのね。

 とっても可愛いわ!

 馬車ではスペリアちゃんは声を我慢してたから聞けなかったのよね~」


 ナツメはスケベなオッサンみたいなことを言いながら揉み続ける。

 スペリアに化けたシンシアは戸惑いながらも、甘んじてセクハラを受け続ける。

 ナツメとシンシアが話す後ろで待機していたスペリアも、

 自分の聞き慣れない嬌声に思わず頬を赤く染める。


「あ、あの……」


 割と夢中になってしまったナツメはシンシア、

 ではなくスペリアに、そろそろ止めて欲しいと言われ、

 ちゃんと素直に応じた。

 話が進まないからね。仕方ないね!


「おっと、ごめんなさい。

 それにしても、うん、そうね!

 変身魔法まで使えるのなら潜入させても大丈夫かしら。

 なら奴隷のほうはシンシアに任せるわ。

 奴隷たちを救って頂戴?」


「はい。必ず!」


 シンシアに囚われているであろう奴隷たちの解放の仕事を任せると、

 即座に膝を床について頭を垂れる。


 そこまで畏まられるとちょっと困るけど、これがシンシアだ。

 どんな事にも真面目に取り組んでくれる彼女なら、

 この仕事だってきっと上手くやってくれるだろう。


「うん、でも無理しないでね?

 失敗してもいいから、怪我はしちゃダメよ?」


「かしこまりました」


 変身魔法を解いてシンシアに戻った彼女を、ナツメは抱擁して無理をしないよう言い聞かせる。


 少しして抱擁を解くと、夕食の準備をして、楽しく夕食を摂りながら、

 これからどうやってキタリウスを暗殺するかを話し合うのだった。




暗殺作戦を相談しながら夕食を食べる。

実に不穏ですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓悪くないなと思ったらクリックどうぞ
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。