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ストーカーは異世界でも女暗殺者(ストーカー)やってます☆   作者: 後伸季孝
2章 私ストーカーだけど暗殺者です!
52/86

ストーカーとアイちゃん

あらすじ:縄と侍女で遊んでた。そしたら幼侍女が勇者連れてきた。




「あっ! フィリスさん!

 お部屋の準備はどうですか!」


「え?」


 私が不覚にも勇者に気を取られてしまっていると、

 勇者の前を歩いて案内していた小さな侍女ちゃんが、

 私に近づいて私に微笑みかけてきた。


 うん、やヴぁい、コレなんて天使?

 いいの、これ抱きついちゃってもいいやつよね? ね?

 抱きます。だきっ!


 小さな天使ちゃんをそっと抱きしめると、ふぁ? と私の耳元で可愛らしい声を漏らす。

 この旅で長い間、幼女と触れ合えていない私には刺激が強すぎるほどに、

 その吐息は全身にゾクゾクと這い回った。

 優しく包み込むつもりが、その吐息(こえ)に思わずギュッと強く抱きしめてしまった。


「フィリスさん? どうしたの?

 おきゃくさまの前だよ?」


 しかし、幸せな時間もそう長くは続かない。

 数秒もしない間しか抱きしめられなかったことを悔やみつつ、

 自ら自制を促して、勇者の前に立つ。


「あ、あらあら、申し訳ありませんでした勇者様。

 あまりに可愛らしいもので、思わず抱きついてしまいました」


 目の前の勇者に向き直り、とりあえず謝罪。

 てか正直勇者なんて放置して、この子を攫う任務に切り替えたい!


「いえいえ、大丈夫ですよ。

 可愛らしいですからねアイちゃんは」


 何!? この子がアイちゃん?

 なるほど、あの名も知らぬ亀甲縛られた侍女が、

 襲うなよ。って言っていた意味が分かったぞ。

 確かにこの幼女は手を出さざるを得ない可愛さであるな。

 現役(ストーカー)時代の私なら即ロックオンしてるわ。


 というかフィリステリアさんって、あの亀甲縛りさんに、

 こんな子(アイちゃん)を襲うと思われるような人なのか……。

 普段からロリコンアピールでもしてるのか……?

 私はもしや変身する人、間違えてしまったか……?

 まぁ話は合うかも知れんけど……。


 まぁでもアイちゃんマジカワイイからどうでもいいな!

 はぁ……、アイちゃんカワユイぃぃ!

 一日中抱き枕にしていたい。

 撫で回したい! お持ち帰りしたい! お食事したい!

 一緒にお風呂入りたい! 濡れた身体をフキフキしてあげ――。


 ……ぅおっと、あかんぞ。

 最近ロリ成分が不足しているからって、敵陣で禁断症状を出す訳にはいかん!

 なんか勇者とか言うアホがいるけど、こいついつまで立ち止まってるの?

 アイちゃん連れてきたのは褒めてやるが、お前はさっさとどっか行っていいよ?

 お前の仕事はもう終わってるよ?


「ねぇ、フィリスさん?

 ゆーしゃさまを、お部屋に案内しなくていいの?」


 ん? あぁ、そっか~。

 アイちゃんは勇者様をお部屋に案内するためにここまで来たんだね! 偉いね!

 でも、だとしたら、絶対あのSM部屋に案内するわけは行かないな。

 ばれるわけにはいかんし。

 適当にあの部屋以外の部屋にでも案内しておくか……。


「そうだったわね、勇者様。

 こちらの部屋でございます。どうぞ……」


 そう言って、近場の部屋の扉を開くと、そこは客室だった。

 まぁ三階フロアはほぼ全部客室だろうから、何処開けても一緒です。きっと。


 ただ、失敗したというか失念していたのだけど……。

 私が侵入した部屋と間取りとかは変わり無いが、

 ベッドのシーツとか、部屋の用意が何もされてない!

 これは失敗しましたな! はっはっは。

 ……んー、まぁ、まだ挽回は可能だろう。


 部屋を空けた後、くるりと勇者のほうを向いて、頭を下げる。


「申し訳ありません。本当は他の部屋をご用意しているのですが、

 現在、お部屋の準備がまだ済んでおらず……。

 少々この部屋でお待ちいただけませんか?

 誠に申し訳ありませんが……」


「え、ああ、大丈夫だよ。

 まだ、寝るような時間じゃないし、

 少し部屋で時間を潰してから夕食に向かう予定だったからね。

 きっと僕がいきなり来たから部屋の準備が間に合わなかったんだよね?

 ごめんね、急かしちゃって」


 身体の前に手を持って来て苦笑いで、大丈夫ですアピールをする勇者。

 気にしてませんから、と部屋の中に入っていった。

 勇者にお辞儀をして扉を閉じる。 


 勇者てめぇ、アポ無しで権力者に会いに来たのかよ!?

 アホだろ! 事前に向かいますって伝えとけボケ!

 常識知らずもほどほどにしとけや!


「フィリスさん? まだ準備ができてなかったのですね。

 ごめんなさい。ゆーしゃさまを早く連れてきてしまって……」


 はっ!? 勇者のアホのせいでアイちゃんが悲しんどる!?

 かわいそうに! 勇者の我侭が侍女たちを苦しめるとは……。

 それでも勇者か! 許せん!


「大丈夫よ、アイちゃん!

 貴女はとりあえずお仕事に戻ってて?」


 頭を撫でて、気にしないでくれと言って、他の仕事に向かわせる。

 流石にあのSM部屋を見せて、アイちゃんまで縛る気にはなれない。

 いや、私としては試しに縛ってみたいのだが、

 アイちゃんが縛られて動けない状態なのを良い事に、

 良い事をしようとする輩が現れるかもしれないと不安なので、安易に縛ることは出来ない。


「え、お部屋のお手伝いしたほうが……」


「大丈夫よ。

 それと、今キタリウス様は何処にいるか分かるかしら?」


 部屋の手伝いをさせないついでに、暗殺対象の居場所を聞いてみる。

 たぶん勇者を連れてきたということは、今まで勇者は誰かと応接室にでも居て、

 この屋敷の主、もしくはその息子キタリウスと歓談していた可能性が高い。


 だとすれば、アイちゃんがここまで勇者を連れてきたのは、

 歓談が終わった後、勇者を客室に案内するため近くに居た侍女、

 アイちゃんに案内を頼んだからだ。

 もし、勇者の歓談相手が暗殺対象のキタリウスなら、

 案内を頼まれたアイちゃんはキタリウスの場所を知っている可能性がある。


 そして私の推理どおりアイちゃんはキタリウスの居場所を知っていたようである。


「え? キタリウスさまですか?

 ゆーしゃさまとお話された後は、執務室に戻られましたが……」


「そう、ありがとう。

 それで、アイちゃん?

 執務室はこの屋敷のどこにあるか覚えている?」


 私には執務室の場所がわからないから、ついでにアイちゃんに教えてもらおう。

 質問がなんだか怪しいけど、きっと大丈夫だろう。

 だってアイちゃんはこんなに素直で無垢で可愛らしいのだから。


「え、それは、2階の一番奥のお部屋ですよね?

 どうしたんですか、そんな事聞いて……?」


 執務室はどこかという質問には、流石に戸惑ったようだがちゃんと教えてくれた。

 戸惑う様子もとても可愛い!

 仕事が終わったら、帰るついでにお持ち帰りしようか本気で悩む……。


「いえ、アイちゃんが覚えているかのテストしただけよ。

 ふふ、アイちゃんは偉いわね~。

 じゃあ、私はちょっとやることがあるから」


 そう言って、アイちゃんをいい子いい子とナデナデ。


「え、ゆーしゃさまのお部屋の用意は……!?」


「それも私に任せて大丈夫よ。

 アイちゃんは自分のお仕事に戻っておいてね」


 ニコッと笑って、廊下の真ん中で呆然とするアイちゃんと別れる。

 アイちゃんと離れるのは名残惜しいが、致し方なし。

 私は執務室を目指して歩き出した。



「えっと、2階の奥の部屋よね~……。

 さっさとやって帰りた――イッ!?」



 突然、ナツメの背中に痛みが走った。


 刺さるような、鋭い痛み。


 これって……。



「ふふふ、どろぼうさん、つーかまーえた。

 フィリスさんの姿をしたってバレバレだよぉ?

 口調もぜーんぜん違うし……。

 とってもあやしすぎぃー。

 わたしを子供と甘く見ちゃったのかなぁ? きゃは!」



 背後からの声に痛みに耐えながら振り向くと、

 ナイフを持ったアイちゃんがめっちゃ笑顔……。


 ま、またナイフに刺されちゃったよ……。

 それに、あんなカワイイ子が今では、

 ナイフを片手にヤンデレの表情(それ)にしか見えない……。



 うん、中々悪くないと思う。

 ヤンデレ顔の幼女もかわいい……。

 後ろから刺されたい……。

 いやもう刺されているか、はは。


「つう、かくかい、じょ……」


 痛みで気絶する前にさっさと痛覚を解除する。


 やはり痛みには慣れない。

 というか死ぬほど痛いので、痛覚解除は絶対する。

 マジ痛いかった……。泣きそう。

 というかもう涙がちょちょ切れている。


 背中に手を伸ばして、ナイフを引き抜く。

 当然この身体は『立体影法師(リアルシャドウ)』の分身なので、血は出ない。

 だが侵入者だとばれてしまったので、仕方なく走って逃げるぞ!

 そりゃあもう凄いダッシュするからな!


「ぅえ!? なんで動けるの!」


 私がスッと立ち上がると、すぐに背中を見せて階段まで走ると、

 背後から幼女の驚く声が聞こえた。カワイイ。

 どうやらナイフで刺されたくせに、機敏に動くので驚いたらしい。

 是非、カワイイ仰天顔も見てみたいものだが、

 今は残念ながらさっさと執務室に押し入って、クズ野郎(キタリウス)をササッとぶっ殺しないといけない。

 ごめんねアイちゃん!

 機会があったら今度は遊ぼうね!


 唖然としているアイちゃんはもう遠くにいて、ナツメは難なく階段まで到達。

 すぐに降りながら【隠密】と【隠蔽】のスキルを意識して使用。

 執務室がある2階の奥まで駆け抜けていく。

 途中で侍女一人とすれ違うが、スキルを使用しているので、何か通ったか? 程度で済む。

 やはり、スキルは使うべきでしたな。


 2階の奥、いかにも執務室っぽい?

 というか扉の上に執務室と書かれている部屋に来た。

 扉に手を掛けて、ババーンと開け放ちお邪魔します!



 おらぁ! 暗殺者の登場だぁ!

 神妙にしろぉい!



 …………。



「って、あれ……?」


 扉を開いたと同時に部屋に入ると、そこはあたり一面白い雪が積もっていた。


 うん、ここ侵入する前の屋敷の屋根の上だわ……。



 なんと部屋に突入すると同時に『立体影法師(リアルシャドウ)』が解けてしまったらしい?


 なんてこったい。




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