勇者とメディア
あらすじ:宿で厨房を借りて、侍女さんたちに作ってもらった食事を楽しんでいると、突如あの勇者が現れたのだ! まぁ大変! というわけで勇者視点です。
全身を銀色の鎧で纏った勇者。
ユウシ・ハヤブサはキタルダ領で起きている、魔物大量発生に伴いその対処のため、
リュード帝国ニシルダ領から、北部に向かって移動すること2週間ちょっと。
ここキタルダ領の領主が住む街、キタルダ街にやってきた。
「ふう、ここがキタルダ領最北地の街、キタルダ街かぁ」
やっと到着したなぁ。
やっぱり馬車での移動は慣れないな……。
それに道中で魔物に襲われたり、盗賊に襲われたり大変だったし。
やっぱり治安が悪いよね……。
ユウシは街に入るための検問を受けるの待つ行列を、
大変そうだ。と苦笑いして、すぐに門番のいる所まで向かう。
こういう時、ユウシは外で検問作業に従事している人ではなく、
検問所に行って休憩中の兵士に話しかけるのだ。
「お疲れ様です、門番さん。
これで先に通してもらってもいいですか?」
ユウシを見て怪しげな目で睨んできた兵士も、
ユウシが懐から取り出した、王家の印が入ったスキルカードを見ると目を見開き、
すぐにユウシに敬礼をする。
「ゆ、勇者様!?
お目に掛かれて光栄です!
どうぞお通りください!」
「ありがとうございます。
あなたもお仕事頑張ってください!
あ! あと、この街で良い宿を教えて欲しいのですが……」
「ああ、それであれば――」
ユウシはすんなりと門を通されて街へと入る。
門番に教えてもらった宿を探すため、大きな通りにやってきた。
ここは帝国でも有名な「雪祭り通り」らしいが余り活気が無いように見える。
やはり魔物の大量発生が影響しているのだろうと、考えながら宿を探していたが、
割と目立った建物に門番の兵士に教えて貰った宿の名前を見つけて、迷うことなく宿に入った。
「あ……。こんにちわ」
宿に入ってすぐのロビーのようなところに、一人のメイドさんが佇んでいた。
ビックリして思わず挨拶しちゃったけど、とっても綺麗な子だ……。
ツインテールにメイド服なんてお約束を持ち出しちゃうなんて、本当に異世界って凄い。
控えめな胸も可愛らしい。
よくあるツインテツルペタメイドってやつかな?
身長的には成人ではあると思うけど、幼い顔付きだ。
別に僕はロリコンなどではないけど、素直に可愛らしく思う。
でも、彼女は僕が挨拶をすると、僕を見てちょっと驚いた?
眠たげだった目が少し見開いた。
あ、でもすぐ表情を戻した。
もしかして僕が勇者って気付かれたのかな?
いや、写真も似顔絵も出回ってない(というかそもそもこの世界に無い)から、
王家の印が刻印されたスキルカードを見せないと、僕が勇者だと気付かないか……。
「こんにちわ……」
控えめで小さめな可愛らしい声だけど、すっごい綺麗なお辞儀で返事を返してくれた。
はぁ、やっぱりメイドさんって良いよなぁ。
僕も屋敷とか買ったら、メイドさんを雇ってみたいなぁ。
というか、なんでこんなところにメイドさんが?
宿の入り口にずっと佇むメイドさんに疑問に思ったが、
ずっとメイドさんを見ているのも失礼になるので、
考えるのを止めて、カウンターに向かい宿の手続きをする。
カウンター出てきたのは何処の宿でもお馴染み? の元気な女将さんだ。
メイド服は着てないので、やはりあのメイドさんはこの店の制服などではないだろう。
「こんにちは、部屋空いてますか?」
「はいはい、いらっしゃいお兄さん。
空いてますよ。何泊か決まってますか?」
「いえ、とりあえず一日だけお願いします」
「はいよ、14000リュードになります」
やっぱり高いなー。
まあ門番さんが紹介するぐらいだから、良い宿って事なんだろうけど。
ん、というかとても良い匂いがするし……、ステーキかな?
ああ、お腹空いてきた……。
そういえば昼食とかまだだったなぁ。
「あの、昼食とかって用意できますか?」
「はい、大丈夫ですよ。
あちらを奥に曲がると食堂がありますので、
空いてるお席に座ってお待ちください。
注文はあちらで伺いますので」
「ありがとうございます」
ユウシは金を払って、言われるがまま食堂へと移動した。
「とっても美味しいわシンシア。
私のためにありがとね」
「ご主人様が喜んでくれるのなら、
私はどんなことでも致します。
今はお食事を存分にお楽しみください」
食堂に踏み入ると、近くの席から声が聞こえた。
あ、あれは、またもやメイドさん!?
どうして二人も?
そして机に座っているのは……。
――って、あれはっ!?
ユウシはメイドを傍に携え食事をするその女性を見て驚く。
ユウシが見つけたその人物は、この世界ではあまり見ない長く艶やかな黒髪。
そして馴染みのある黒い瞳を秘めた切るような目つき。
どこか大人びたものの、微かな幼さを兼ねた端麗な顔立ち。
その女性はユウシの最もよく知る人種、"日本人"である事を本能的に理解した。
なんでこんなところに!?
気付くとユウシは、日本人のように見えるその女性のいるテーブルに近づいていた。
目の前まで来ると、その女性はユウシに気付いたらしく少し驚いた後に睨む。
「あの、もしかして……、日本人の方でしょうか?」
ユウシはその質問と共に、魔法を発動させる。
『偽り照らす眼』
対象と眼を合わせて発動する魔法で、相手が嘘を吐いているか分かってしまう魔法。
神聖魔法と呼ばれる、僕がこの世界に呼ばれて転移してきた時に授かったスキルだ。
ほとんど習得している者が居ないスキルのため、
この魔法が使えるのも今のところ、僕以外居ないと言われている魔法でもある。
失礼ながら勝手に掛けさせて貰った。
しかし――。
「ご主人様に不用意に近づく事は許しません!
即刻、離れなさい!」
――――っ!?
彼女の傍に仕えていたメイドさんが僕にナイフを向けてきた。
その刃物の軌道は僕の元まで届かないと見切って、
これ以上近づかないことを選択した。
僕の読み通り、メイドさんのナイフは首筋でピタッと制止した。
けど、非常に危険な状況だよね。これ!?
まさに、一触即発って感じである。
メイドさんが怒りに満ちた顔をしているのが分かる。
「ま、待ってくれ……、ください!
僕は怪しい者ではないです!
こ、これが証拠です」
そう言って、先ほど門番の方に見せた王家の印が押されたスキルカードを手に持つ。
これは僕が勇者であるという証であり、
あまり知らない人はあまり居ないと思うので、何とか信用を得れると思う。
実際、僕がこれを取り出すと、他のお客さんがどよめき出した。
僕が勇者であると気付いたのだろう。
うん、これなら大丈夫なはず。
「ご自分が勇者であるという証明ですか?
そんな物出さずとも、顔を見れば分かりますので結構です。
しかし勇者様であろうと、食事中の淑女に不用意に近づいて良い理由にはなりません。
すぐに離れなさい!」
あ、あれ……?
大丈夫かと思ったけど、意外な言葉が返ってきた。
このメイドさん僕が勇者だと分かっていて離れろと言ったのだ。
なんて主への忠誠が高いメイドさんなんだ……。
将来、こういう人が僕のメイドさんになってくれたら嬉しいな。
……じゃなくて!
それより早く離れなくちゃ。
ユウシが足を下げようとしたとき、主人と思われる黒髪の女性が言葉を発した。
「やめなさいシンシア……。
申し訳ありませんわ勇者様。
私の侍女が非礼を致しましたこと、主である私が謝罪いたします」
女性は立ち上がって頭を下げる。
その様子にメイドさん(シンシアさんと言うらしい)が驚いた表情を一瞬だけ見せて、
しかし僕に「申し訳ありませんでした」と頭を下げてきた。
「い、いえ、僕が悪かったんですから、
頭を上げてください!」
こんな事になっちゃうとは、正直困る。
いや、勝手に話しかけた僕が悪いんだけどさ。
それよりも主人の彼女とお話が出来れば……。
「お許し頂きありがとうございます。
では、私たちはこれで……」
って、え!? ちょ! なんで!?
目の前の女性は、僕が許したことにお礼を言うと、
食事もまだ残ってる(というかまだステーキ二切れくらいしか食べて無い)のに、
メイドさんを連れて食堂を出ようとした。
命令されたメイドさんも黙ってついていこうとする。
「え? ちょ、ちょっと待ってください!
食事の途中だったんですよね?
よろしければ僕と一緒に食べてくれませんか?」
ど、どうにかして話がしたい。
せめて日本人かどうかの確認だけでも……!
「一緒に、ですか……。
……はい。かしこまりました。
勇者様がそういうのであれば……」
はぁ、良かった……。
断られちゃ追いかける羽目になっちゃってたから助かったよ。
あんまり良い顔はしてないけど、きっと大丈夫だろう。
傍にいるメイドさんにもめちゃくちゃ睨まれてるのが辛いけど……。
ごめんなさい……。僕はとりあえず笑みを作ってお礼を言う。
「ありがとうございます。
あの、お名前を伺ってもよろしいですか?」
「はい、私の事は……。
メディアとお呼びくださいませ」
え、メディア?
日本人ではないのかな?
いや……、偽名の可能性もある……。
慎重に行かなければね!
こうしてユウシと自称メディアさんとの食事が始まろうとしていた。
まだ、キタルダ領に入ったばかりですが、周りに幼女がいない為、
愛でれてないのが非常につらい。ショタも愛でたい。早く屋敷に帰って愛でたい。




