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ストーカーは異世界でも女暗殺者(ストーカー)やってます☆   作者: 後伸季孝
2章 私ストーカーだけど暗殺者です!
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勇者の情報収集

勇者さんがユリーグルさんの情報を集める話です。





「すいません。ヒルメッタさんにお話を伺いたいのですが、今どちらにいらっしゃいますか?」


 モンスターギルド『魔狩り束ねし異郷(ベルグオール)』の受付カウンターにて、二人組の男の内、全身を鎧纏った青年がギルド嬢に問いかけた。


 するとその声が聞こえたのか、受付の奥から一人の女性がひょこっと顔を出す。


「はい? ヒルメッタは私ですが~……って、あららっ!? 勇者様じゃないですか~、それとザンテさん……も? 珍しい組み合わせですねぇ? 私に何か御用でしょうか?」


 ザンコクマ討伐の依頼から帰ってきたと伝えて、とりあえず依頼を報告する。

 その後、ブレイディア森林で出会った青髪の女性について聞いた。


「……それで、こちらのギルド員をちょっと探しているんですけど。青髪ショートで革装備のショートソードを腰に下げた女の子で……」


 それを聞くと、ヒルメッタはピクッと眉を動かして反応する。心当たりがあるらしく、しかしあまり良い顔をしないまま口を開く。


「ああ、ユリーグルさんですか?

 彼女は止めておいた方がいいと思いますけど……まぁ勇者様ほどの方であれば、もしかしたら大丈夫かもしれませんが」


「ユリーグル、さんというのですか……止めておいた方がいいとは?」


 彼女はユリーグルって名前なのか。

 でも、何故あまり良い顔をしていないんだ?

 まだ用件も言ってないぞ? 止めておいた方がいいとはどういう……?


 それに何故か"ユリーグル"という名前を聞いて、隣でザンテさんも口を開けて驚いてるけど。


「あなたたちもユリーグルさんの可愛さと強さに惹かれてパーティに誘おうとしてるんですよね?

 勇者様の目に留まるなんて、流石はユリーグルさんですね!

 でもユリーグルさんは絶対パーティなんて組まないですからねー。今まで多くの方から誘われてたのに全部断ってますから、たとえ勇者様のパーティでも組めないと思いますよ」


 ヒルメッタは苦笑いしながら、女の子だし一人(ソロ)は危ないんだけどねー。と口にしている。

 でも、僕たちは別にパーティに入れようとしたわけではない訳で……。

 だけど、何故パーティを組みたがらないのかは気になった。


「ユリーグルさんはパーティを組まないんですか?」


「そうなんだよねぇ~、理由は分からないけどさぁ。

 依頼の時は絶対に誰も同行を認めないんだよ~。

 でも最初はそんなユリーグルさんを、強引にパーティに入れようとしたり、勝手についていこうとしたり、他にもナマイキだと言って暴力で解決しようとした人たちもいたんだよー。

 あの容姿だから男たちは(こぞ)ってね~」


 確かにザンコを食べている姿を影で見てたけど、容姿は明るい女性って感じで、でも顔つきはとても綺麗だった。


「それはさぞ大変だったんでしょうね。でも今でもパーティに入ってないとはどういうことでしょうか?

 色々誘われたのでしょう? 暴力も使われたとか?」


「うん、でもユリーグルさんが全員返り討ちにしたんだよ~。

 確か、A級パーティの『マッスルヒール』もみーんな治療院送り!

 もうただの新入りとは思えないですよね~」


「えっ!? そ、そんなことが!?」


 ユウシは目を見開いて驚いた。

 それもそのはず、A級パーティとはユウシでも勝てるかどうかの帝国主力のパーティだ。

 まだ勇者としての力が発展途上であるユウシ。

 いつかはS級レベルまで上がることは期待できるが、今はA級に届いたばかり程度の力しかない。


 それに比べて『マッスルヒール』は強化魔法と治癒魔法のエキスパートで、全員で接近戦を仕掛けるゴリ押しパーティ。数年前から活躍するA級ハンターたちだ。

 帝国からの依頼で何度か顔を合わせたことがあるが『マッスルヒール』の人たちは、全員マッチョだしデカい。相手にしたら正直怖すぎる。


 それを女性一人で倒すなんて……。

 まずあり得ることではない。


「それにユリーグルさんってば、相手に容赦ないからねー……。

 とりあえずアホな奴が絡んできたら、すぐに拷問紛いな事するんですよ~。

 本当にギルドの中でやるんですから。ほんと見てるほうも失禁ものでしたよー」


「そ、そうなんですか?」


 拷問という言葉にビクッと反応してしまった。

 ユウシはブレイディア森林で見たザンコクマの死体を思い出して、額に冷や汗が流れる。


「この前なんか無理やり肩を抱いて、俺の女になれ。とか言った命知らず(バカ)は軽く床に倒した後に、悪いのは指かしら? って微笑みながら掴んでいた手の指を一本一本丁寧に折ってたんですよ~。

 ギルド内でずっと悲鳴が上がってても誰も止められなかったんですからー。

 まぁこちらから何もしなければ、ただの女の子でとても良い人なんですけどね!

 この前なんか私、一緒に食事に連れてって貰いましたもん!」


 にこやかに話すヒルメッタだが、その表情と凄惨な内容がまるでマッチしていない。

 ヒルメッタは最後にユリーグルを擁護するような事を言うが、前半の所業のインパクトがデカくてユウシとザンテは唖然とするほかなかった。


「でもでも! まだまだ続きがあるんですよ~!

 私とユリーグルさんがご飯を食べた帰り道でですねー」


 あまりの話の恐ろしさに、ただただ立ち尽くす二人の事などお構いなしに、ヒルメッタは話を続けた。

 どうやらユリーグルの武勇伝を喋りたいだけらしいようにも見えた。

 ヒルメッタはそれほどまでにユリーグルと仲が良いらしい。


「その指を折られたナンパ男が、街中でユリーグルさんを数名の仲間と囲ってですね!」


「ほ、報復ですか……」


「はい~。私は怖くて震えてたんですけど。

 ユリーグルさんは短剣を構えて、「二回目は容赦しないわよ。私はホトケじゃないんだから」

 なんて決め台詞を言って、全員の片腕をスポポポーンって!

 あれは凄かったですぅー。今では皆、義手らしいですよ~。

 大変ですねぇ~。それと……」


 興奮してユリーグルの話をするヒルメッタ。

 その話の中にユウシは聞き覚えのある言葉が引っ掛かった。

 それはユウシにとって違和感が大きすぎる言葉。


「ちょ! ちょっと待って!」


 ヒルメッタがさらに武勇伝を語るのを止める。

 はい? と喋り足りない不満を顔で表現しているがそれどころではない。

 ユウシはこの世界に来て初めて、前世の言葉を聴いたのだから。


「今、仏って! 仏って言ったよねぇ!? この世界に仏ってあるの!?」


 『仏』、この世界では存在するはずの無い、別の世界の神様の別の呼び方だ。

 この世界の「神様」の総称は「神様」であり「仏様」とは言わないはず!

 そんなことを言うのはユウシが生まれた国、日本だけだ!

 いや、インドの仏教とかも「仏様」言うのか? ってそんなことはどうでもいい!


「この世界? 何言ってんだユウシ? てかホトケって何だ?」


「うーん、私もホトケって言葉は聴いたこと無いですねぇ。一体何なんですか?」


 やっぱり、この世界には『仏』という言葉は存在しない!


「い、いや、僕の故郷の神様みたいなものだよ。

 ユリーグルさんも僕と同じ故郷なのかなーと思っただけさ。あはは……」


 ユウシは二人を誤魔化して「仏」発言について思案する。


 あのユリーグルって子はもしかして日本人?

 僕と同じ異世界に転移してきたのか?

 でも姿や顔は完全にこっちの世界の人。

 名前もユリーグルなんて全然日本人っぽくない。


 もしかして勘違い? 考えすぎ?

 いやでも、二度の襲撃に対して「仏の顔を三度まで」の諺を意識した発言。

 これを日本人と言わずなんという?

 いや、ユリーグルって子には日本人の知り合いがいるという可能性もある……。

 まぁそのほうが可能性としては高いか……?


「ねぇ、ザンテさん……自分の顔や髪色を変える魔法ってあるかな?」


 あの子自体が日本人という可能性も無くはない。

 とくに名前は偽名で、顔を変える魔法があれば出来る。

 だが、顔を変えて生きる理由が分からないが……。


「なんだよいきなり? そりゃあ変身魔法なんじゃねえか?

 でも会得したらダメだぞ?」


「え、どうして!?」


 変身魔法、そういうものは世間一般で存在することは認識されているのか……。

 だけど会得は出来ない? 何故?


「そりゃあ、昔の王様が変身魔法で成り代わられるのを恐れて変身魔法の資料と術者を淘汰したんだよ。

 まぁ国の研究だったからあまり広まってないし、魔法のお偉いさんが何人か死んだ程度で済んだらしいが……。その後、変身魔法の会得、開発、情報共有の禁止とする国法が出来たんだ。まぁ、だったら最初から研究させるなって話だが……」


 なるほど、確かに変身魔法は権力者にとって怖い魔法だろうね……。


「でも、隠れて研究している人とか居たらどうするんでしょうか?」


「そりゃあ居てもおかしくはねえな。

 ただ今は魔法認知と魔法不可域の技術が高まってるからなぁ。

 成り代わっても案外ばれるんじゃねぇか?

 そもそも、口調やしぐさでばれるだろ?」


 なるほど、そこまで積極的に変身魔法を禁止しているわけではのか……。

 だったらあの子が変身魔法を使っている可能性も無いわけではないはず……。


「でも変身魔法の資料なんて無いし、魔法の知識ゼロからの会得は生涯を費やすほどの時間が掛かる。

 だったら別の魔法を覚えたほうがいいだろ?」


 どうやら僕が変身魔法を覚えたがっているように見えたのか、ザンテさんは変身魔法に否定的な情報ばかり渡してくる。それにしても……。


「ザンテさんって、物知りですね?」


「んぁ? そうだなぁ。

 一応情報は飯の種で自分の命を守るもんだ。

 そういう情報は知っといたらいいだろ?」


「でもユリーグルさんがA級パーティに返り討ちにしたとか、ギルド内で拷問紛いな事をした。とかは知りませんでしたね?」


「いやいや、知ってたぞ。ただユリーグルって名前だけを聞いてただけで、まさかあんな細い女だとは思わなかった。あの新人はギルドに加入して一ヶ月で来なくなったからよ。

 てっきりリタイアしたもんだと思って、今話題のユリーグルだとは思わなかったんだよ」


 なるほど、ザンテさんは偶々知らなかっただけか。

 もし知ってたら仲間の二人も失わずに済んだのに……なんて不幸な人なんだろう。


 それにユリーグルさんの『仏』発言を聞いて、僕はますます会わなければならないと思った。

 彼女が転移者かは知らないが、転移者は総じてスキルレベルが高いらしい。

 他の転移者とは会ったことはないが、帝王様が言っていた。

 もし転移者が僕の他にも居るなら是非とも僕に力を貸して欲しいと思う。

 

 僕は勇者とはいっても、まだまだヒヨッコだ。

 一人では魔王を倒すことは出来ない。


 勇者認定のパレードに出てから一年も経ち。それでも未だ帝国から出ていないのは、僕自身の力不足で強い仲間が必要だからだ。

 だからパーティに同郷(転移者)を引き入れるために、日本語を知っていたユリーグルさんと話がしたい! それにユリーグルさんもザンコクマを一人で倒せて、A級パーティも倒せてしまうのだから、是非僕の仲間になって欲しい。


「あのヒルメッタさん! ユリーグルさんってどこに住んでいるんですか?」


「むっ? 勇者様。女性の家に押し入りなんて、迷惑がられて好感度下げますよ?

 あと、私は知らないです。むしろ分かったら私にも教えて欲しい!」


「そ、そうですか……」


 ユリーグルさんの居場所が分かればすぐに向かうのに……。

 しかし今日からギルドにやってきたってことは、明日また来るかもしれない!


 そう思っておもむろに懐から紙とペンを取り出し、何かを書き上げるとヒルメッタの前にそれを置いた。


「あの。ユリーグルさんが次来たら、これを渡してもらえますか!」


「えーと、なになに?

 『あなたと話がしたいです。

 ブレイディア森林での謝罪もしたいので、昼食を是非ご一緒に頂きたい』?

 うーん、こんなんでオッケーするかなぁ?

 一応、こういう手紙なんていくつかあったけど、ユリーグルさん今までも全部無視してたよ?」


「それでもです!

 もしダメだったらギルドに泊まってでも待ちますので」


「……んー、まぁ渡しておくわ」


「ありがとうございます。明日も来ますので……」


 そういって勇者ユウシはギルドを出て行った。




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