侍女隠密部隊とシンシアの決意
あらすじ:勇者にセクハラ(というほどでもないが)されたので
罵倒してその場を後にした。勇者さん不憫。
「はぁー、ただいま~……」
「おかえりなさいませご主人様。
少し具合が悪いように見えますが、
どうかされましたか?」
「うん、それがねぇー……」
変身魔法を解いて、ナツメとして屋敷に帰ると、
シンシアがお出迎えしてくれた。
流石はシンシアというか、私の体調の機微を瞬時に判別しちゃう。
侍女長で私の専属侍女なだけはあるね!
とりあえず、今日は勇者に会ってまじムカついた。
ザンコも取れなくて、ザンコクマも一頭しか狩ってないから報酬もビミョー。
全部勇者のせい、勇者ふぁ○く。
ってことを話した。
ちなみに、私がモンスターギルドに登録して、
ハンターとして働いているのは誰にも伝えてないけど、
シンシアだけは変身中の私に気付いて、問いただしてきたので教えてある。
危ないので辞めてください。とか。護衛を付けます。とか言われたが、
「どうしてもやりたい! 護衛はなしで!
これは二人だけの秘密にして欲しい!」
って頼んだら、嬉しそうに即承諾してくれた。
シンシアって本当に感情が顔に出やすいね!
「ご主人様の腕を強く掴んで離さなかった!?
……今すぐにでも処刑すべきですね。
私が今から探偵ギルドに行って勇者抹殺の依頼を出してきます」
今日の勇者の話を聞いていたシンシアが、淡々と怖いことを言う。
いつもみたいに優しい目ではなくて、
明らかに殺害計画を立てていそうな暗い鋭い目つきである。
私より暗殺者っぽい。怖い。
「うーん、それもいいけど。
大事になったら困るからねー。
小さいイジワルを仕掛ける程度で許してあげましょう。
とりあえず「勇者はムッツリスケベの変態で、
女性の肌をスリスリと触るのに異常に興奮を覚える偽善者ナルシスト野郎だ!」
って感じの軽めの噂から流しといて~」
「ふふっ、お安い御用です」
シンシアが微笑んで承諾する。
うん、いつもの優しい目に戻ったね! よかった。
シンシアは私のために何でもやっちゃうから嬉しいんけど。
さすがに勇者抹殺依頼なんて出されちゃ拙いでしょう?
勇者は嫌いだけど、別に憎んではいない。
関わりたくないだけなのだし。
帝国にとっては必要な存在だからね。
「じゃあ私は先にお風呂するから。
一旦子供たちのとこ行くから
お風呂の準備してて~」
「いえ、大丈夫です。
もうすでに今日の入浴予定者であるレルとカルが準備しております。
風呂の用意もすでに済ませております」
「あら、ありがとね。
やっぱりシンシアはとても気が利くわ」
「侍女ですから」
うんうん。
こんな優秀な子が侍女になってくれて私は嬉しいなぁ。
よし、今日はレルカルコンビと一緒にお風呂だぞー!
待ってろー、子供たちよ!
いやっほーい!
*************
朝、まだ日も昇らない薄暗い屋敷の中庭。
シンシアの前には11名の侍女が整然と並んでいた。
「昨日、ご主人様が勇者ユウシ・ハヤブサと接触した。
その際、勇者はご主人様の逃走を腕を掴むなどして阻止。
強制的に質問を開始し、数分間ご主人様の機嫌を害しました。
その報復として我ら『侍女隠密部隊』は勇者の悪行を噂として広めると共に、
勇者をご主人様に近づけさせないよう、
勇者に一人の監視を付けたいと思います。
勇者の不審な行動はすぐに報告するように、いいですね?」
「「「はいっ!」」」
侍女たちは返事をして、それぞれの任へと移る。
「侍女長さん、一つお願いがあるんやけど」
11名いた侍女は各々任務に戻ったが、
一人の侍女がシンシアに近づいてきた。
その話し方が特徴的な侍女幹部『守銭奴』リリエラ・バンカーである。
「なんでしょうかリリエラ」
「流石にそろそろナツメ様の変身魔法使用時の姿を教えてもらえへん?
うちらも流石に問題があった時に対処できないと思うねん。
変身時のナツメ様って誰も護衛が付いてないのも、
あまり関心できん事やとシンシアさんなら思うやろ?」
前々から議題に上がっていた、ご主人様の護衛。
ご主人様が「外出中の護衛は無し!」
とのお願いがあるため、護衛は屋敷の中のみとなってはいるが、
確かにご主人様に護衛も付けずに外を歩かせるのは不本意ではある。
今回だって、私の知らない間に勇者との接触。
ご主人様が不快な思いをされました……。
私はそういったことからご主人様を守るためにこの部隊を結成させた。
でも、だとしても、私はご命令には逆らえません……。
「確かに護衛が付いていないのはとても危険があり、
改善できるのならしたいですが……。
これも全てご主人様の命令です。
ご主人様は変身魔法の姿を誰にも見せるつもりはありません」
シンシアの言葉を眉を顰めて聞いたリリエラは、
でもなぁ……。と言って現状の問題を提起する。
「侍女長さんはそれでええんか?
ナツメ様に護衛の一つも付いてなかったから、
今回みたく勇者が接触したんやで?
勇者はナツメ様の"会いたくないブラックリスト"に登録されている人物。
もし、護衛が居たら接触せずに済んだんちゃうか?」
「しかし……、それはご命令に反しますので」
自分の無力を嘆くように、
悔しさで拳を握り締め手のひらからは血が流れだす。
それを見てリリエラは意を決したように真に迫る説得を行う。
「そうやないで、侍女長さん!
例え、命令を破ってでもそれが最良ならそうするべき!
そうちゃうんか?
うち等はもう奴隷やない、侍女や!
ならナツメ様の身を守る行動をするのは当たり前や!
もし、ナツメ様の姿を教えきれないって言うんなら、
あんたが護衛をすればいい。
どうせナツメ様がいない間、屋敷でする事もそこまでないやろ」
「むっ、どうしても私にナツメ様の護衛をさせたいようですね。
何か企んでいるのですか?」
「ちゃうちゃう。
なんでも言うことを聞くだけが良い侍女ちゃうで、
って事を教えたかっただけや。
実際、ナツメ様に危険が迫ったときに助けられんかった事を考えてみぃ。
うちらは何のために『侍女隠密部隊』を結成したんやって話やで?」
た、確かにそうでした!
私が結成した『侍女隠密部隊』それはご主人様を影から支えるために、
また、ご主人様の不利益になる人物の排除のために集めた、
いわばご主人様のための隠密集団です。
それなのにご主人様の顔色を伺って。
それで肝心の主を守れなければ何の意味も無い!
やはり、ただ作っただけの私と違い、
リリエラは物事を良く見据えています……。
「リリレラ、あなたはいつも大事なことに気付かせてくれます」
「ええんや。
うちはただ、この部隊の存在意義を再認識させたっただけや。
この部隊も、やり過ぎるくらいがちょうどええ!
うちはそう思ってるで!
ナツメ様にばれへんように、な?」
ニヤリと悪い顔をして提案を持ちかけてくるリリエラ。
彼女が何を狙ってこんな提案をしているかは、わからない。
非常に怪しいですが、ただ彼女がご主人様の不利になることはしないでしょう。
ここは、リリエラの案に乗るべきですかね。
ふふ、やはりリリエラは組織の本質を見極める能力に長けてます。
彼女であれば『侍女隠密部隊』も非常に有用な運用することでしょう。
「なるほど、そうですね。
リリエラ、あなたを『侍女隠密部隊』の参謀に選出します。
次から是非、あなたのその腕を振るってください」
「うえぇ!? そりゃあいきなり過ぎるわ!
そないなことをあっさりと決めんといてくれるか!?」
「いえ、この部隊を効率よく動かせるのはあなただと分かりました。
私は頭を使うことはあまり得意ではないので、
そういうことは全部あなたにお任せします。
ご主人様の有益に成るような素晴らしい運用を期待しています。
これは隊長命令です。いいですね?」
リリエラは驚いた顔を見せたが、すぐに冷静になる。
少し何か考えた後、シンシアに目を合わせた。
「んー、まぁしゃあないなぁ。
任せとき! 侍女長さん!」
右拳を平たい胸に当ててポンと叩くと、
悪そうに笑ってシンシアの提案を了承した。
こうして屋敷の主が知らずのうちに結成されていた『侍女隠密部隊』。
彼女たちの組織は今日をもって、本当の意味で隠密部隊となる。
これを期にナツメに敵対するものは、
ナツメすらも知らない間に消される事となるだろう。
この部隊が帝国を騒がせるのも、そう遠くない。
また新しいタイトル思いついてしまったので書きた過ぎて困る。
そういう時って皆どうしてるんですかね?
我慢ですか? ですよねー。




