ストーカーとおっ三と勇者
あらすじ:ザンコクマも倒して、ザンコも美味い!
あ、そういえばおっ三たち
死んじゃったかなー?
「生きてるわっこの悪魔女!」
ザンコをムシャムシャしながら、
ナツメがおっ三が無事死亡していることを願ったその時。
実に狙っていたかのようなタイミングで、
背後から聞き覚えのあるおっ三の声が!?
「うえっ!?」
振り返るとそこには、おっ三のリーダーっぽかったスキンヘッド!?
そして、なんだか苦笑いしてる頭以外、鎧でフル装備の青年がいた。
ザンコクマから逃げ切れたのかと驚いたが、
隣の青年に助けてもらったのだろうと憶測をつけた。
おっ三の服とか、青年の鎧とかにめっちゃ血付いてるし……。
こわっ。
そして、おっ三の死を願った事を聞かれてしまったので気まずい……。
とりあえず話を逸らしてみることにした。
「お、おっ三……。
もしかして女の子が掴まらないからって、若い男の身体で妥協したの?」
「ちげぇよ! アホ女!
くそっ、てめぇはどうしてこんな危険な場所でふざける余裕がありやがるんだ!」
おぉ、なんだかおっ三が怒ってらっしゃる……。
どうした?
あー、三人から一人になってる……。
たぶん脱落したんだろうなぁ、悲しいなー。
でも私はちゃんとおっ三って呼んであげるから安心してね!
「んー、でもどうしておっ三がいるの?
さっきザンコクマに追われて逃げたよね?
もしかして倒しちゃった? オッパイ揉む?」
ザンコクマを倒したら、おっぱいを揉ませてやる的な約束をしていたはずなので、一応おっぱいを揉むかどうか聞く。
クマちゃんを倒せるとは全然思ってなくて、
むしろ途中で全滅だろうと考えていたので、
この結果は予想外なのですけど……。
まぁ、揉むと言っても揉ませてやらないけど……。
口約束なんて約束のうちに入りませんから~。
「俺が倒せるわきゃねえだろ!
こいつに、ユウシに助けてもらったんだよ!」
「うん? そこの青年さんに?
ん? てかユウシ?」
ナツメは聞き覚えのある名前に顔を傾げた。
そしてすぐに記憶の中の該当する人物を浮かび上がらせる。
「あー……。
ユウシ、ってユウシ・ハヤブサさんでしょうか?」
青年にそう聞く、するとその青年は恐縮そうに肯定の答えを告げた。
「はい、そうですけど……」
あっはぁー。まじかー。
おっ三ってば、『勇者様』に助けられたのかよ!
運良すぎだろ。おっ三! 悪運つええなー。
ってまあ、そんなことより……。
「そうですかー。
では私はお邪魔みたいなので、
あとは若い二人でごゆっくりー」
私はすぐにでも逃げますね。
勇者さんとなんて関わりたくないので……。
と立ち去ろうとしたその時、
逆方向から割りと強い力で腕が引っ張られた。
「待って欲しい!」
うおっと!
な、なんと勇者様!?
初対面の私の腕なんか掴んでどう致しましたか!
一刻も早くここから、あなたの前から去りたいのですが!?
とある個人的な感情からあなたの事が嫌いなんです!
積極的なアプローチに驚いたが、
私は勇者さんあなたが嫌いなんです!
離して下さい!
「一つ聞かせて欲しい!
あれは君がやったの?」
「あ、あれとは?」
まあ、聞かなくても分かるけど、クマちゃんのことですかね?
そうですよね?
「さっき酷い姿で死体になっていたザンコクマの事だ。
あれは君が倒したのか?」
あれぇー?
私なんか睨まれてるんですけど……。
何? 私なんかしました?
あー、怖いわー。
「はい、私ですけど……」
「どうやったんですか!?
あそこまで酷い状態の魔物なんて見たこともない!
腕は焼かれて、目を潰されて、耳も切り裂かれて、足が切り刻まれ、胸が焼き溶かされていた!
どうしてあそこまでやったんですか!」
えぇー……。
この人、なんなん?
もしかして私の戦闘方法に文句でも?
人の魔物の処理にケチ付けるんかワレ?
って思わず言いたいくらいウザイわー。
動物愛護の精神ですか?
そんなのはこの世界に来て数ヶ月。
とっくに捨て去りましたよ私は。
勇者はどうなんですか?
えぇ!? まだお捨てになってない!?
そうでしたかー……。
この世界に転移して一年以上は経っているはずなのにおかしいなぁー。
って、感じの煽り文句を今すぐに言いたい。
けどぐっと堪えます。
私は、大人なんで!
「あのさぁ……。
質問は一つって言いましたよね?
だからこれ以上は答えない。
勇者様が自分からそう約束したんだから守ってくださいね?
ほら、その強引に掴んで私の柔肌を傷つけている御手を離して下さい?
女性にこんな簡単に触れるものではないですよ?
それに痛いですからさっさと離せ」
そう言って迷惑そうにだけど笑顔で言ってやったが、
ユウシは唖然として動かなかった。
なんだかイラッときたので身体を押してやった。
オラァ! そのまま転んで運悪く骨折しろ!
「うわぁあっと!?」
体を強く押してやると、そりゃあもう無様に尻餅をつく。
そんな勇者を見下して文句の一つでも言ってやる。
え? さっき大人だから文句は言わないって言ってたって?
知らん! 私の好きにさせるのだ!
「そんなに離したくなかったのですか?
このムッツリスケベの変態勇者君?
では、私はこれで。
おっ三! あんたは頑張って生きろよ!」
なんだかイラッときてしまった勇者くんと、
話について行けず立ち呆けしている哀れなおっ三とお別れ。
私はさっさと帰ることにした。
まだクマさんを一頭しか狩ってないけど、
勇者に邪魔されたって言えば良いし。いいよねー。
…………。
……あっ! ザンコを持って帰るの忘れたっ!
くそっ! 勇者め!
帰ったら勇者がムッツリスケベの変態だって噂流してやる!
*************
「なぁおい、ユウシ。
あの女は知り合いか何かか?
お前の事をやけに嫌ってるようだったが……」
「い、いや、初めてお会いしましたけど……。
でも勇者と知った瞬間からすぐに立ち去ろうとしてましたから。
僕を嫌っている人なんて、少なからずいると思います。
理由は分かりませんが……」
僕の事を何故かとても毛嫌いしているのは明らかだけど。
あの女性は相当な実力を持ったハンターだ!
彼女が倒したというあの無残な姿のザンコクマ。
焼け爛れた両手は火属性の魔法。
両目は血の付いていた短剣によるものだろう……。
両足の切り刻まれた跡、あれは分からない。
たぶん風属性の魔法だろうとは思うが……。
しかし、それよりも恐ろしいのは、
身なりに少しも汚れが無いことだ……。
あの死体の周りには相当量の血が飛び散っていた。
ザンコクマの胃酸も掛かっていない。
あれは強烈な酸性もあるけど、臭いも強い。
戦闘中にそれらを少しも浴びることなく、服装の乱れもない。
そんな芸当が出来るなんて、紛れも無く実力者。
それもきっと僕よりももっと強い!
話したい! 話すべきだ! あの女の子と!
どうやってその強さを得たのか。
師は誰なのか。
そしてあわよくば、僕の仲間になって共に魔王を……。
「おい、ユウシ!
向こうからザンコクマが来たぞ!」
ザンテの言葉に、意識を戻された。
少し遠くにザンコクマの頭が見て取れた。
辺りをキョロキョロと見回している様子だ。
きっと、ここにあるザンコを食べに来たのだろう。
でも、この辺りにはザンコクマの死体から発生している血の臭いが流れている。
きっと警戒しているのだろう。
「ザンテさんはここにいてて欲しい。
僕が先手を打ってくるから」
そう言ってユウシは、腰に下げた剣を抜刀し、
ただ単純にザンコクマに向かって突進する。
「グルァア!?」
ザンコクマはユウシに気付くがまったく構わない。
「はぁぁあああっ!」
ただ剣を振り下ろし、目の前の巨体を両断した。
ザンコクマは見事に一線で両断され、一瞬で命を失った。
強すぎるが故に単調な攻撃で十分魔物を打ち倒せる。
それが勇者ユウシ・ハヤブサなのだ。
「とりあえず僕は森のザンコクマを一掃しなければね。
あの人とはその後話をしよう」
ユウシはニシルダ領の領主から直接頼まれた依頼。
ザンコクマの掃討の任を遂行するべく、
ザンテと共にブレイディア森林の深くに歩を進めた。




