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ストーカーは異世界でも女暗殺者(ストーカー)やってます☆   作者: 後伸季孝
2章 私ストーカーだけど暗殺者です!
40/86

ストーカーとザンコクマ

あらすじ:勇者さん、おっ三を連れて、ストーカーの元へ

     ところでストーカーはどうしているでしょうね




「おっと、はっけんはっけん!」


 ブレイディア森林の奥深くまでズンズンと進んでいたナツメ。

 彼女は胸の高さまである草むらで姿勢を屈め、視線の先に居るクマさんを見つめる。

 最初に見つけたクマよりも少し大きめ? でも丸まって寝てるから分からない。


 暖かな日向に当たっているその魔物は自身の巨体が寝そべられるような拓けた場所に陣取って、まるで猫のように丸まって寝ていた。

 どんな狂獣も寝ていたら愛らしい。


「あのクマさんたち、やっぱりお昼寝が好きなのかな?

 案外猫みたいでカワイイわね……たぶんカルちゃんの尻尾と良い勝負のモフモフ具合だわ」


 ナツメはそう呟きながら一度大きな木に登り、準備を整え懐から取り出した短剣を手に持つ。

 起こさないように静かにゆっくりと回り込むように移動しながら、目の前で眠る大きなクマを愛でる箇所を考える。


 とりあえず"耳"か"目"からかしらね……。

 その後はあのカワイイまん丸尻尾、そして両手、もしくは両足でいいかしら。


 ゆっくりと近づいてようやくクマまでの距離は1メートルもない。

 つまり目の前である。それでもまだクマは起きない。

 高いレベルの【隠密】スキルのお蔭だ。

 ナツメは先手必勝とばかりに短剣でクマの目を。



「ギュルギャォオオオオオオ!」



 ――抉り潰す。


 暴れるように起き上がるクマの背にしがみつき、首の裏に回ってもう一方の目も潰すように抉る。

 痛みで暴れているクマから飛び降りて、茂みに隠れると視力を失ったクマが叫び声を上げながら、

 周りの木々を薙ぎ倒していく。

 辺りは木の葉が無数に絶え間無く宙に舞い、暴れる魔物の目元からは血が飛沫となり辺りに振り撒かれた。

 広がる血の臭いが戦闘への高揚を強く思わせる――。


「うわぉ、強烈な右フックね……当たったら即死だわー」


 ……なんてそんなことも無く、ナツメは至って冷静。

 軽口を叩きながら、手頃な石を拾って今潜んでいる位置と反対方向の茂みに投げ込む。

 ザンコクマはガサッと鳴る茂みの音に気付き、その方向に突進。

 思い切り振りかぶった両腕が地面に突き刺さる。

 石を投げただけで、当然何も居ないので攻撃は不発だが――。


「ガルガャガォォオオオ!?」


 何かが焼ける音。ザンコクマが殴りつけた地面。

 そこにはマグマのようなドロドロとした炎が、まるで攻撃を待っていたかのように煮えていた。

 『粘質なる炎熱(ドロリフレム)』によるマグマの罠を仕掛けていたのだ。

 そこに手を突っ込んだザンコクマは当然、思い切り火傷を負う。いや、火傷などと生易しいものではない。

 焼け爛れて、毛で覆われていたはずの両手は肉が見え隠れする。手を上げて痛がるクマがなんとも痛々しい……。


 しかし、さらに怒りを露わにしたザンコクマは、いきなり周囲に口から薄黄色の液体を吐き散らした。


「うわ……、胃酸?」


 周りの木々に触れた薄黄色の液体は、ジュッと音を立てて表面の樹皮が焼けた様にうっすら煙を出す。

 周りの茂みも触れた箇所には草が無く、茶色の地面に液体が煙を帯びているだけである。

 ザンコクマは自身の胃液の強力な酸性を利用し、周囲の敵を溶かし動きを鈍らせる事で有名だ。

 獲物の狩りの際にも利用している。出す事が出来る液体の量は非常に多くバケツ4杯分くらいは吐き出す事ができると言われている。


 一通り胃液を吐き出したクマはその場で立ち上がったままじっとしている。

 怒りで我を忘れていると思っていたが、ザンコクマは自身の胃酸でもダメージを受けてしまうため、すぐには動けないことを理解しているのだ。

 胃酸は数秒すると酸性が急激に消えて、ただのヌルヌルした液体と化すため、それを待つ必要があるのはザンコクマ本人でも同じことである。


 ただしそれをナツメが待つ必要はない。


「ふふっ、『複製刃呪(ホーストエッジ)』」


 ナツメがそう唱えると、周囲にナイフの刃程度の刃物が数十以上出現する。

 それらは一斉にクマに向かって射出され、ほとんどが両足に突き刺さった。


「ギュギュウルルァァアアア!?!?」


 目を刈り取られ、手を焼かれ、足をめった刺しにされたザンコクマ。

 立ち上がることも難しくなり、前のめりに倒れる。

 ナツメはそろりとクマの顔の前まで来ると、差し出されたかのように目の前にある両耳を短剣で切断。

 悲痛の声を上げるザンコクマだが、闇雲に腕を振るっても攻撃が掠ることもない。


 そして、ナツメはザンコクマの上に乗っかると魔法を一つ唱える。


「『粘質なる炎熱(ドロリフレム)』。ごめんなさいね痛くして……」


 ナツメの手から放たれた炎熱ヘドロ。

 ザンコクマの胸にドロッと垂れると、ゆっくりと皮膚を溶かし、脂肪を燃やし、心臓を焼き尽くした。

 そして数秒の間もがき苦しんでいたザンコクマは、ピタリとも動かなくなった。



「はぁ、見事に残酷な殺し方をしたものだわ……。

 こんな事しちゃって、動物愛護の精神が汚されていきそう。

 いや、もう十分汚されちゃってるけども。なんて恐ろしい精神になっちゃんたんでしょう私……。

 かつての私もこの光景を見たらブーイングものね。それに言うほど短剣も使えなかったし……。

 たぶんレベルだって上がって無いわね~」


 心臓を焼かれたザンコクマを眺めながら、ナツメの体はスウっと消えていく。

 戦闘を行っていたその残影はナツメの『立体影法師(リアルシャドウ)』であった。


 背の高い木の上に姿を隠していたナツメはヒョイッと降りる。

 酷い惨状の死体はそのままでナツメはさらに森の奥へと進んだ。




*************




「ここにあのクマさんがいたということは……。よし、あった~!」


 ナツメの目の前には太いの幹から直接実っているスイカほど大きな薄緑の果実『ザンコ』が多く実っていた。


「やっぱりー! あのクマさんったら中々良い果樹園守ってたわねー。

 さっそく一個食べましょう! 昼ご飯もまだしてないしー。

 果物が昼ご飯なんて贅沢でヘルシーだわ!」


 さっそく一つ切り落として、短剣で真っ二つ……。


「あっと、これ血が付いてるから使えないわ……。

 包丁も持ってこればよかったかしら? あ、これでいいか」


 ナツメは地面に落ちている20センチほどの木の枝を一本手に取る。

 そして先ほど戦闘で用いた魔法『複製刃呪(ホーストエッジ)』を唱えた。

 すると手に持っていた枝が一瞬の内に抜き身の刃に変わった。

 それを使ってナツメはサクッとザンコを四つ切りにする。


「ほんと魔法って便利ね~。複製刃呪(これ)も何でも刃物にできちゃうし、ほんと使い勝手が良いわ」


 『複製刃呪(ホーストエッジ)』は、周囲の指定した物体を刃物に変身させ操る変身魔法である。

 先ほどのザンコクマ戦では、クマが暴れて大量に宙に俟った身の回りの木の葉を刃物に変換。目標を足に指定して飛ばしたのである。


「おいしー! やっぱマンゴーって最高だわ。あ、いやザンコなんだけど、味がほぼマンゴー! いや~、スプーンは持ってきて良かった!」


 ナツメはザンコをスプーンで掬っては食べ掬っては食べる。

 スイカほどの大きさのため、ボリュームが凄い。

 一つ丸ごと食べきるとナツメは満足そうにホッと息を吐いた。


「はぁ、休憩したらもう一狩りしてからザンコを何個か持って帰ろっかな~。

 あ、そういえばあのおっ三たちはどうしたかなー?

 無事に帰ってたら、街で顔合わせずらいなー……うーん、まぁ死んでるでしょ!」


 街で出会ったりしたら、気まずいので、出来れば死んでいて欲しい。

 そう願っている辺り、暗殺者的な考えに染まってしまっているなと思ってしまうナツメであった。




ただただクマさんが可哀想。

次出てきたときは優しくしたい(願望)

まあ無理だけど。

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