ストーカーとモンスターギルド
あらすじ:遂に暗殺依頼が来てしまったようだな……。
結局、キタルダ公爵家の息子さん、キタリウス・キタルダを暗殺する依頼で帝国北部に向かうのは二週間後となった。その際にナツメが無駄に引き出してしまった行き場の無い"殺る気"を発散させるため、ナツメはとある建物に来ていた。その名も、モンスターギルド『魔狩り束ねし異郷』。中々に厨二心溢れる名前だね、嫌いじゃないよ。
「あっ、ユリーグルさん! 一ヶ月ぐらいギルドに来てませんでしたけど大丈夫でしたか?」
そう問いかけてくるのは、モンスターギルドの受付嬢ヒルメッタちゃん。まぁ普通に美人な明るい女性って感じのOLみたいな女の子。モンスターギルドでは女性が少ない上に、依頼を受ける時とかに必ず話すので、自然と仲良くなった子である。たぶん歳は18とか19とかそこらで、たまに一緒にご飯食べたりもする。
ちなみに私がユリーグルと言われたのは偽名を使っているからだ。さらに変身魔法『物真似師の戯れ』により外見を変えている。
今の私は青髪ショートの活発な女の子だぞい。黒髪なんてこの世界ではめっちゃ目立つ! 周り皆、赤とか緑とかだからね。ちゃんと活発な雰囲気に合わせて口調とかも変えている。そしてハンターっぽい服を着て、ハンターよろしくショートソードを腰に携えている。まぁショートソードなんて使えないし使わないけども……。
ちなみに『ハンター』というのは魔物を狩る人たちの俗称。だいたいはモンスターギルドのギルド員の事を指している。
「ええ、ちょっと最近色々忙しくてね。まぁそんなことより、なにかそれなりの依頼とか無いかしら?」
「それなりの依頼ですか、そうですねー……。あっ、最近ブレイディア森林の『ザンコクマ』が問題でして、すでに6名ほどギルド員を亡くしてるんです! 他にもハンターの犠牲が多数で……。なにやら複数のザンコクマが居るらしくて、ユリーグルさんお願いできないですか?」
「ザンコクマかぁ……手頃な魔物だしサクッとやってくるかな!」
『ザンコクマ』、名前の通り残酷な熊! ……などではなく"ザンコ"と呼ばれる高級果実を好んで食べる熊である。大人のザンコクマは3マートル以上にもなり普通に脅威。ザンコは美味いから他の動物も寄ってくるし人間も採りに行く。だから結構ザンコクマとは鉢合わせるらしいし人間を見つけたら即襲うし食べる。だいたいC級のハンターが8名ぐらい、B級なら4名くらいで戦って、まぁまぁ良い勝負ってところらしい。
ちなみにB級のハンター3~6人で戦って討伐できる程度の強さの魔物をB級と呼ぶらしい。つまり、ザンコクマはB級の魔物と言う事だ。
そんなザンコクマの狩りは割りとテンションが上がる。何でかって言うと、ザンコクマって魔物を見つけたら、その近くに高級果実ザンコがあるという証なのだ。つまりザンコクマを狩ればザンコが手に入るとも言える。素敵。あれは高級果実だし美味いから本当に欲しい、是非屋敷に持ち帰りたい!
ちなみに大きさはスイカで味はマンゴーみたいな感じ。超贅沢でしょう!
「あはは……。ザンコクマが手頃な魔物って、さすがはユリーグルさんですね。じゃあ依頼は受けるという事でよろしいですか?」
「うん、受けさせて貰うね。ありがとうヒルメッタちゃん。じゃあ、ちょっくら行ってきまーす」
「はいはーい、ユリーグルさん。気をつけてね~」
なんてヒルメッタと挨拶交わしてモンスターギルドを出る。
と、すぐに。
「おい嬢ちゃん。そんな装備でザンコクマ狩りたぁ、頭イカレてるんじゃねぇか? しかも一人なんてなぁ! 新人だろ?」
「うん?」
ギルドの外に出たら、なんかでかいおっさん三人組に囲まれる。その中でもリーダーっぽいでかいスキンヘッドおっさんが私に話しかけてきた。
「おう嬢ちゃん、そんな無謀なクエストなんかよりもよぉ。俺たちに一晩腰振ってくれるだけで、金が手に入るぜ? それが嫌なら悪いことは言わねぇ、しょぼいクエストにでもしときな!」
なにやら私の身体が目当てらしいおっさんたち。後ろの二人もニヤニヤしてこちらを見ている。
こんな公衆の面前で援助交際の交渉を始めるなんて! さすが異世界とでもいうべきか……大胆すぎる! でも普通に嫌ですので退散します。
「そうねぇ、ダンスのお誘いは嬉しいけど……。別にお金に困ってるわけじゃないからねー。他の女の子を当たって頂戴ね」
ナツメがニコッと微笑みながらその場を後にする。というかめっちゃダッシュして逃げる。そうすると、背後でスキンヘッドおっさんが声を荒げた。
「ちょっと待てこらっ! あんな女にザンコクマの依頼なんぞ行かせてたまるか! おい、てめえら逃がすな!」
「「おお!」」
おいおい、何で追いかけてくるかなー……。他にも女の子いるのにー、そんなに私を気に入っちゃったかしら? まあ、おっさんに好かれても困るから余裕で逃げるけど。ふふふ、日頃からSASUKEEの反り立ち過ぎた壁で鍛えたクライミング技術を見よ!
ナツメは通りからヒョイッと路地に入ると、建物の壁を蹴って掴んで上へと登る。猿の如き速さで登り屋根の上へ。その間に追いかけてきたおっさんたちは案の定ナツメを見失った。
「はっはっはー、私の【壁登りLV48】のスキルの凄さを見たかー! って、追いかけてくる前に登りきったから見られてなかったけど……」
というかこの【壁登り】、私がこの世界来てから2レベルしか上がってないんだよねー。せめてキリがいい50レベルにはしたいんだけど。
前の世界では、一応運動がてらにボルダリングジムに通ってたから元から高いけどさぁ。まぁ運動がてらってのは建前で……。本当は幼女の家の壁を登って干してある下着を盗るための練習で通ってたけどね! 犯罪じゃねえかって? いやいや、迷惑はほとんど掛けてないですよ! むしろ新品パンツと取り替えさせて貰ったから、被害は実質ゼロ! お互いがウィンウィンの関係になれたと思います。だいたい犯罪とか言われても、ストーカーしている時点で犯罪者なんですが……。
そ、そんなことより、そろそろ【壁登り】のスキル上がってないかな~。
ナツメはスキルカードを取り出して眺める。
【追跡術LV96】【隠密LV85】【隠蔽LV51】
【執筆LV127】【盗視LV102】【壁登りLV48】
【探偵魔法LV24】【鍵魔法LV11】【短剣術LV5】
【逃走術LV17】【変身魔法LV27】
うむー、やはり上がってないかー。あ、でも【逃走術】のレベルが一つ上がってる! やっぱり、今おっさんたちから逃げてきたからだろうなぁ。
「よし、今日は【短剣術】でも上げてみようかな! たぶん素振りなんかより短剣で熊倒したほうがレベル上がるでしょ! そうと決まれば早速、森へゴーだね!」
建物の屋根を飛び移りながら、ナツメは街の外に出る門に向かった。
参考として8話目?に表示したスキルは以下の通りです。
どうですか? ナツメちゃんは割りと成長しています。
【追跡術LV95】【隠密LV83】【隠蔽LV45】
【執筆LV127】【盗視LV102】【壁登りLV46】
というかこの話でやっと2回目のスキル表示なんですけど……。
30話もスキルを表示してなかった訳ですけど……。
別に忘れていたわけじゃないですよ?
本当ですよ? 忘れていたわけじゃないです!
いや嘘です、忘れてました!




