閑話 ストーカー考案の大会1
この話は閑話です。
ノリと勢いと深夜テンションで作った優れものです。
なお、続き物の模様。
暇なら読んでクレメンス。
「ひぁー! もううちはお疲れやー! もう手が動かへん!」
屋敷の一室で独特な言葉遣いと共に、手に持っていた筆を投げ捨てて、床に倒れこむ侍女姿の女性。
彼女はこの屋敷に収められた財源、金を管理する侍女の一人。『守銭奴』リリエラ・バンカーである。
「リリエラさん。まだ、仕事は残っていますよ。この屋敷の税の支払いと、孤児院への寄付金の調整。
食料移送のための馬車の購入代金の捻出。それとルルーさんがベッドのシーツと枕の追加を要求されています」
傍の机で黙々と作業していたもう一人の侍女から呆れ顔で、残りの仕事内容を告げられる。
その言葉に、仕方なく立ち上がり資料に目を通す。
「はぁ!? やること多いわボケェ!
税の支払いはいつも通りでええ。寄付金はもう面倒だからレーナに詳しく聞きぃ。要求分渡したってな。馬車は食料用だから多少ボロでも構わんやろ? 新品じゃなくて使ってなさそうなもんにしたら代金は減る。探せ!
ルルーはなんやねん! ベッドが増えるわけでも無いしシーツなんて最近買ったばかりでいらんやろ! 理由を書かんかい。って文句言っとけ! え、何? ナツメ様の承認付き!?
じゃあもう好きなだけ買わせたれ! ……よっしゃ! これでもう仕事は無いな!?」
半ば投げやりに、しかしこれで仕事は終えた。そう思って机を立ち、自分の部屋に戻ろうとする。
「リリエラさん。お疲れのところ悪いのですが、これをナツメ様のところに届けてください。
今月の屋敷の予算と来月必要な金額です。あとナツメ様が欲しがっていた物の目録です」
「んあ? ええで。あんたも片付け終わったらさっさと部屋に戻って寝るんやで?」
「はい、ありがとうございます」
部下と別れを交わして部屋を出るとナツメに渡すよう頼まれた資料に目を通しながら、ナツメの部屋まで向かう。
「はぁ、毎回こんだけの金を稼いで、ほんまに凄い御方やんなぁ……。
ナツメ様がいなくなったら、この屋敷も一瞬で火の車やわ。んでも、この目録はなんや……?
スライムの核……、いろんなサイズの下着? うん? ナツメ様、今度は何しよるんや……」
ナツメの欲しがる物の目録を見ながら部屋の前につく。ドアをノックして名前を名乗ると、部屋が空いてナツメ様、ではなくシンシア侍女長が顔を見せた。
「御苦労様ですリリエラ。話は中で伺いますので、入りなさい」
リリエラは収支書類と目録を渡すだけと思っていたため嫌な顔をする。
シンシアはその顔を見て、文句があるのか? と言いたげな表情をする。
「何か……?」
「いやぁ、うちはこれを私に来ただけで、別段話す事も無いと思うんやけど……」
「ご主人様が入ってくるよう言っているのです。まさか、ご主人様の言葉を無視すると?」
なな何やて!? ナツメ様が直々にぃ!?
「ちゃ、ちゃうで! ナツメ様が言うんなら、そりゃあ喜んで入室させてもらうわ! おじゃましますぅ!」
リリエラがナツメの部屋に入ると、ナツメはベッドの端に座っていた。
ナツメの横にはレルが頭を撫でられながら座っており、膝の上にカルがナツメに尻尾をモフられながら、顔を赤くして大人しくしていた。
うん、いつも通りの光景! 今日はレルとカルの日なんやな~……。
ナツメ様はこうやって孤児院の子をお茶会と称して部屋に呼んではスキンシップを図っている。
元奴隷の子供の心の傷を癒すためだとか子供同士の不和を無くすためらしい。ほんまに忙しいはずなのに、良く出来たお方やと思うわ。
「リリエラ、あなたとお話したかったわ。シンシア、リリエラに座るところを用意してくれない?」
「かしこまりました」
シンシアは綺麗に頭を下げると、即座に椅子を用意した。
うわー……侍女長がうちに椅子を用意するなんて、頭が痛いわぁ……。
ナツメ様の命令なら仕方ないけど、侍女長怒っとらんよなぁ?
用意された椅子に座りチラッとシンシアに目をやるが、本人は涼しい顔をしたままナツメに視線を送っている。
とりあえず気にしてなさそうなので、こちらも出来るだけ気にしないようにしよう。
「リリエラ、ほら、お菓子もあるから食べましょう? 仕事終わりには頭に糖分が必要なのよ」
ナツメが目の前にある菓子を勧めてくる。
これは良くあることで、前までは侍女だからと断っていたのだが……。
その度にナツメが悲しそうな顔をするため、結局食べることになる。
そのため、現在は屋敷では「ナツメ様にお菓子を勧められたら、絶対に断ることを禁止する」というルールが侍女間で出来ている。
ルールを作ったのは当然ながら、シンシア侍女長であるのだが。
「ありがとうございます」
そう言ってお菓子を一つ手に取って、口へと運ぶ。
うん~! うまい! やっぱり甘いものはええなぁ。心が洗われるようやわ!
「ふふ、美味しいでしょう?」
「はい、とっても美味しいです……っと、そういえばうちはどうして部屋に呼ばれたんでしょうか?」
「もう、すぐに本題に入るのねぇ?
まぁいいわ。あなたも疲れているでしょうし。ちょっとあなたにお願いがあるのだけど」
おっと、ナツメ様はもうちょっと話をしていたかったのかぁ……。
うちはせっかちやからなぁ……こういうところは直さなあかんかもな。
「はい、ナツメ様の願いならなんなりと」
「うん、ありがとう! でもそこまで重大な事では無いわ。ちょっとやりたいことがあるのよね!」
「やりたい事……、ですか? それは?」
「ふふ、それはね! これよこれ!」
楽しそうにナツメはリリエラが持って来た目録を手にとって、一つの項目を指差した。
「スライムの核、ですか?」
「そう! このスライムの核あるじゃない? それを使って、とっても楽しい大会を開こうと思うの!
屋敷の皆も孤児院の皆も平等に楽しめる、楽しいイベントをね!」
「大会、ですか?」
「そうよ! 是非とも皆でやりたいわ! だからあなたにはその大会の賞品考えて欲しいの!
とりあえず、大会の内容もあなたとシンシアを交えて詰めていきたいから……。
そうねぇ、スケジュールの開いている日に会議を開こうと思うわ! きっと楽しいイベントになるはずよ!」
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大会当日、屋敷の裏庭には、屋敷と孤児院に住む総勢56名が集まっていた。
その周りには外からの視線を遮るように大きな垂れ幕が四方を覆っていた。
そんな裏庭に集まった者たちの視線は今、高台に立つ人物に注がれている。
この屋敷の主、ナツメ・ヒダカである。そして今ナツメ主催の大会を始めるべく、開会の挨拶を口にした。
「はーい、皆さん! 集まりましたねー!
ではこれよりぃ『ドキッ! 女だらけのヌルヌル相撲大会!』を開催したいと思いまーす!」
「「「うぉぉおおおお!」」」
四方の垂れ幕に囲まれた会場は女性や幼女たちの熱気に包まれた。
その中でも特にやる気をあげていた女性たち。今回、恥を忍んで大会に出場して頂いた32名の女傑たちだ。
彼女たちはすでにスタンバイを終えており、身体を覆うほどの布を一枚羽織って身体も顔も隠してはいる。
今回行うこの大会『ドキッ! 女だらけのヌルヌル相撲大会!』では、スライムの核の「水につけると水がヌルヌルになる」という性質を用いた画期的な大会となる。
ナツメが今立っている、直径4メートルの円形のフィールド。
そこにスライムの核を置くと、水桶を持った次女たちが次々と水を流し込んだ。
ナツメはそこに立ったままだったが、少しすると挙動がおかしくなり、立っているのもやっとの状態になっているらしい。
フラフラとした挙動から一転、足を滑らして大げさに転ぶ。
その様子に一同驚き、主の身を案じる悲鳴を上げるものも出た。
「ご主人様!?」
その様子にシンシアが咄嗟に立ち上がるが、それをナツメが待てと静止させた。
「あー、だいじょぶだいじょぶ! 怪我してないよー。と、このように、床は転んでも大丈夫なように魔法でクッションコーティングしてますから。参加者の皆さんは思う存分転んでくださいねー!」
スライムの核を用いたヌルヌルがどの程度なのかと、本大会の安全性を皆に分かりやすく実演して、ナツメは舞台から下がった。
ナツメが舞台から下がる際にも、2度ほどさらに転んだため、あのフィールドで綺麗に立つことは困難であると、観戦する者にも、参加者にも分かっただろう。
ナツメが解説者席に戻ると、大会の説明を続ける。
「えー、このように、今回はこの高台の上で参加者が相手を落とし合うバロルロイヤル形式です!
まず始めの第一試合は4名による落とし合い! 残った一名のみが次に進むことが出来ます!」
ナツメがそういうと、上から布を羽織った4名の女たちが高台の前に並んだ。
「ふふ、では左から順に自己紹介をお願いします!」
ナツメの言葉とともに一人の金髪を揺らした女性が前に出ると、羽織っていた布を投げ捨てて名乗りを上げた。
「わ、私はジュエル! この大会に優勝して! 100万リュードをゲットしてやるんだから!」
名乗りを上げた侍女、ジュエルを見て観客は一斉に目を見開いた。
彼女が顔を赤らめながらも高らかに宣言したその姿は、まさに一糸纏わぬ姿に近かったのだ。
最低限着ているのは下半身を包む下着のみで、他は堂々と曝け出していたのだ!
その姿に驚いていると、ナツメがニヤリと悪い顔を浮かべた。
「非常に素晴らしい自己紹介でした! なお、この大会ではヌルヌルを妨げる衣服は原則禁止!
参加者はパンツのみ着用となります! 会場は女性だけですので心配は無用です!
だから、お目当てのオッパイを存分に拝みやがれぇぇええ!」
「「「うぉぉおおおおお!」」」
こうして『ドキッ! 女だらけのヌルヌル相撲大会!』は幕を開けたのであった。




