ストーカーと探偵ごっこ
あらすじ:探偵ギルドだと思った? 残念、暗殺者ギルドでした~!
今回から「1.5章 屋敷と孤児院の人々」を数話お送り致します。
こんにちは、ギルド丸ごと探偵を廃業して暗殺者になる。IT企業が方針を一変して土木業者になるような……、そんな奇想天外な転職を果たした私、ナツメです。
いやー、ビックリだよね! 何が一番驚いたってさ、コルンくんが名探偵じゃなくて暗殺者だったんよ。コルンくんは東の名探偵じゃなくて、黒ずくめの方だったらしい。怖い組織を裏切って身体を小さくなる薬でも飲まされたのかな? なんちって。
それにしても私もあの小さくなる薬欲しいです! ハーミィちゃんとかに服用させるべく。そして全身全霊で撫で回して差し上げたい。
とりあえずコルンくんが『イルスフィア』を暗殺ギルドだと名を改めてから数日……。どころか1ヶ月経ったけど、特にこれといって動きは無い。別に帝国に対して宣戦布告した訳でもないし、依頼もいつも通りギルドにやってくる。
まあギルド員は情報収集専門の諜報部隊って言うの? そんな非戦闘員の人が多いから、真正面からいきなり帝国に喧嘩を売るような真似はしないのだ。でも表向きは動きが無いだけで裏ではめっちゃ動いてるらしい……。
だけど私にはまだ何も知らされてないし、私に対して仕事も来ない。だから皆が何をしてるかなんてまったく分からんけど……。とりあえず私に与えられた任務は『待機』。なので今日も今日とて孤児院の子供たちと遊んでますとも。ええ。
「おねえちゃん……探偵ごっこ」
「探偵ごっこする、です!」
今日は眠たげなジト目幼女レルちゃんと狐耳のモフモフ幼女カルちゃんと遊びます。他の子達は色々お手伝いがあって、私と遊ぶ係がローテーションで決められている模様。なんやそれぁ……。お姉さんはいつでも誰でもカムバックなんやでぇ?
まあ私の身体は一つだから仕方ないのかな? 私はいいけどさ。でね! 今日は私の中で絶賛激推し中のこの子達。孤児院のレルカルコンビと密かに言われている、名コンビなのだ! たぶん!
「はいはーい、探偵ごっこねー。じゃあ今日は皆でルルーちゃんに見つからずに、尾行してみよー!」
「おー……」
「やってやるです!」
今日の遊びは、屋敷でせっせと働いているであろう侍女、高身長三銃士のリーダーにして僕っ娘のルルーちゃん。彼女の尾行である!
今日はハーミィちゃんは仕事でギルドに行ってていないので、ハーミィちゃん専属侍女のルルーちゃんは、きっと暇なはずである。どうせお仕事と言っても屋敷のお掃除くらい……? うむ、ならばお仕事の邪魔しても何ら問題は無いな!
「ふふ、良いかね? まず尾行についてプロである私から説明してやろう! 尾行とは、相手に見つからずに相手の居場所を特定し、何をしているかを調べる行為である! 探偵になるには必須の技術なのだ。なのでまずは尾行対象であるルルーちゃんにばれずに見つけること! そこから尾行というものは始まるのだ!」
「うん……わかった」
「わかった、です!」
「ふふ、では我が屋敷へれっつらゴー!」
最近のこの子達の遊びは専ら探偵ごっこが多い。私に憧れて? 将来探偵になりたいらしいが、残念私はもう暗殺者なのだよ……。ごめんね。将来真実を知って反抗期にならないように今のうちに愛情を注いでおかねばならぬ。
「ごー……」
「ごー、です?」
私はコブシを天高く上げる。レルもいつも通り私の真似をしてコブシを上げた。カルはそんなレルに釣られてコブシを上げた。
ああ、可愛過ぎるぅ! 思わず抱きついちゃう! だきっ!
はぁぁ、ええ触り心地やぁ~。レルちゃんのプニップニのほっぺも、カルちゃんのモフモフお耳も素晴らしかー。離れがたいプニャモフを堪能して……。
……って! してもしても、し足りないぞ! あぁぁっぁ、しゅごいぃぃ、ようじょにあらがえなぃぃ~……。
「おねえちゃん……また?」
「ナツメねぇ、また抱きつく、です?」
ごめんね。また、なんだ。ただ、あなたたちが抱きつきたくなるほどカワイイのがいけないのよ? お姉さんもう一生離さないぞ!
「ふふん、私はこうやってあなたたちに愛を与えているの~。嫌がらずに受け取ってくれたまえー」
「うん……じゃあレルも」
「仕方ない、です」
そういって二人もギュッと抱き返してきた。なんて素敵な子たちなの! レルちゃんは相変わらず本音を隠さない素敵な抱擁を、カルちゃんは照れながらギュッとした抱擁。ふふ、カルったらー。仕方なさそうにしながらも、私に顔を埋めて尻尾は嬉しそうにフリフリしてるじゃない!
よしよーし! こうやって小さい頃から私に依存させることで、一生私から離れない素敵な幼女が出来上がりなのだ! うふふ、二人とも大きくならないまま私のお嫁さんになろうね~。なでなで~。
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レルカルコンビは屋敷の2階廊下にある一室。そこに高身長三銃士、僕っ娘ルルーが一つの部屋に入室した場面を目撃する。目撃した事は、ナツメの探偵魔法『天命の如き報告』により、即座に別室で待機中のナツメに報告された。
「おねえちゃん……見つけた」
「ハーミィねぇの部屋、です!」
『オッケーオッケー、順調のようね! じゃあ、私が教えた魔法を使ってコソコソしてみよー!』
「らじゃ……」
「了解、です!」
「「彷徨い暴く隠者」」
二人とも魔法を唱えると、周りの風景と同化して、姿が見えにくくなる。
やっぱり魔法って凄いです! これならどこに隠れて入ってもばれないです!
「カル……いく」
「はい。慎重に、です」
ナツメねぇから習った歩法、"抜き足差し足忍び足"で部屋に近づく、です! でも抜き足差し足は何となく分かるですけど"忍び足"って一体何なのです? まあいいです。後でナツメねぇに教えてもらうのです。
とりあえず今はルルーさんの入っていったハーミィねぇの部屋で聞き耳を立てるです。相手が部屋の中で何をしているか、どのあたりにいるかを知るのは重要なことらしいです。
共に行動していたレルとカルはハーミィの部屋の扉に近づくと、聞き耳を立てるため扉に耳をくっ付ける。
――サッサッ、パサッパサッ、パンッパンッ!
むぅ……、一応何か聞こえるですけど何をしてるか分からない、です……。
「はきそうじ、ベッドのしわなおす、ふとん干してたたく……」
隣で一緒に聞き耳を立てているレル。彼女は微かに聞こえる物音から、中で何が起こっているか冷静に読み取っている。
「す、凄いです! なぜ分かるです!?」
「ん……、けいけん?」
カルから問われる質問に、表情を一切変えず答える。相変わらず眠そうな目でやってのけるから、やる気があるのか無いのか分からない。
「け、経験です? もしかしてこういった探偵ごっこを何回もやってる、です?」
「うん……ひまなとき」
な、なるほどです。レルは自主的に探偵としての実力を高めてるのです! レル、将来ナツメねぇのパートナーになる時にその座を奪い合う仲になりそうです……! でもナツメねぇの隣は絶対に渡さないです!
ナツメは知らないが、カルはナツメに助けられた時から一つの決心をしていた。命の恩人であるナツメを主人として崇め、自分はその隣に立ち主人を守る護衛として一生を尽くす程の恩を返す事である。その決心は獣人ではよく起こる思考で、助けられた命で恩人を助けるのは獣人として最高峰の誉れである。とされている。
でも、私はまだ子供……。なら今のうちから実力をつけて、誰にも負けない力を手に入れるです! そのためには、こんな"ごっこ遊び"でも全力を尽くして技能を高める必要があるです! だから、今度の物音はレルよりも早く分かってやるです!
「ん……?」
気合を入れて聞き耳を立てようとしたカル。そのとき、レルがハテナを浮かべたような眉を顰めた表情をする。
「ど、どうした、です?」
「この音……聞き覚えがない。新しい、分からない……」
「どどど、どういう音、です?」
カルは慌てて扉に耳を押し付けて、集中して部屋の中の音を察知する。
――クチュ、クッチュ。はぁ、ぅくう! はぁはぁ。
何ですかこの水がパチャパチャと散らされたような。あとルルーさんも何故か息が荒いような? です。
――クチュックチュ、はぁぁ、ハーミィさまぁ。
――!? 何なのです!? ルルーさんは中で一体ナニを? いや、この音聞いたことがあるような……、無いような……です。お、思い出すです! 絶対に聞いたことがあるです! これは、これは……。
――あっ……。
思い出したです! 奴隷屋敷で奴隷のお姉さん達が我慢できないとか言ってやってたアレ、です!
確か……、オナ――。
――ビターンッ!
イタタっ……。
あら? いつの間にか床に私倒れてる、です? それに部屋に入って……。
ふと、横を見ると、レルが堂々とドアを開け放っていた。なんてことをしてるんです!? 対象にばれてしまったです!
「ひゃぁ!? あ、あああ、あなた達!? どうしてこの部屋に!?」
部屋の中で小さな叫びが上がる。カルが顔を上げると、目の前にはベッドの上で裸に近い格好になっているルルーさんがいた。シーツをクシャクシャにして、枕を抱いて身体を隠しているが、大きく実った胸が片方が零れ落ちているのがよく見えた。
はぁ……、ばれてしまったです。でもルルーさん、なんだか顔も赤いし息も荒いです。これはやっぱりしてたんですか、オナ――。
――バタンッ!
「はぁはぁ、これを見ていたのは君達だけだよね? ね?」
ルルーさんはいつの間にか部屋のドアを閉めていた。まるで私たちを逃がしたくないよう……です? なんだかちょっと怖いです。
「いいかな、レル、カル? 今見たことは誰にも言っちゃダメだよ? 僕がハーミィ様のベッドの上で裸で何かしてたなんて"誰にも言っちゃダメだよ"?」
「え、でも――「いいね?」
ルルーはレルとカルに詰め寄って、恐怖を感じさせる笑顔。有無を言わせない雰囲気で命令に近い形のお願いを押し付けてきた。子供であるカルには、逆らう事は出来ずただただ頷くことしかできない。大人の女の恐怖には勝てないのだ。隣のレルも空気を読んだのか無表情ながら頷く。
「おっけー……いわない」
「わ、分かった、でしゅ……」
ルルーさんの今まで見たことの無いくらいの怖い顔。ちょっとチビリそうになりながらも、カルは涙目で何度も頷く。そんなカルを見て、我に返ったのかルルーは、ごめんごめん泣かないで!? とあたふたし始めた。しかし、えぐっ、えぐっ……。と涙を止められなかったカルがこの場に崩れ落ちてしまった。
「カ、カルちゃん!? そ、そんな、どうしたら……!?」
部屋はオロオロと狼狽える半裸の女性と、泣き出した狐の幼女。無表情に達観する幼女、というカオスな空間が生まれまったく収集がつかなくなりそうな。そんな雰囲気に包まれ始めていた。
「なんだ……これ」
もう自分の力ではどうにもできないだろうと諦めたレルは明後日の方向を向き、独り言ちた。
やっぱこういう話を書いていると、アホになった気分で楽しいです。




