ストーカーと生活1
あらすじ:奴隷屋敷攻略完了! いえーい
コンコンとノックの音が寝室に響き渡る。
「失礼します」
澄んだ声がドアの奥から響いて、同時にドアが開かれた。寝室に入ってきた女性は皺一つ無いメイド服に身を纏った灰髪。落ち着いた雰囲気のその侍女はベットに向かっていく。
「おはようございますご主人様、朝食の用意が出来ております。お着替えを手伝いをさせていただきますがよろしいでしょうか?」
掛けられたその声を聞いて、そのベッドから眠たげな声と共にのっそりと身体を持ち上げたのは、薄い寝間着に身を包んだ女性。この屋敷の主人、ナツメ・ヒダカである。
「えぇ、ありがとう。お願いね」
ナツメがベッドから身体を離して立ち上がると、すぐに侍女が隣に付き、手際良く脱がせられ、用意した替えの服に着け替えられる。そうして一分も掛からない内に着替えが終わった。服は洗濯の石鹸の香りが仄かに醸し、着替えをしている間に眠気も覚めてきた。
「本日の朝食は如何なさいますか?」
「そうねぇ、確か今日はハーミィちゃんと一緒にギルドに行く予定があるわね~。じゃあハーミィちゃんと一緒に食べるわ」
「かしこまりました。ではリビングの方でお待ちくださいませ」
「はーい」
侍女はお辞儀をして部屋を出ていく。
「ふふ、この生活も随分慣れたものねぇ、私」
ナツメがこの屋敷に引っ越してから2ヶ月くらい経った。私の生活もこのように貴族っぽい状態になった。いや貴族の生活知らんけども。
さっきの侍女っ子はシンシア・アーネスト。大人な感じの灰髪ボブ。奴隷時代から一新して髪をバサッと切ってしまわれた。過去を断ち切るという事なんじゃないかなと思う。
シンシアは一番初めに襲撃した奴隷屋敷に居た奴隷ちゃんで、今は私の屋敷で侍女長をして働いてくれている。元侍女さんだったらしく、奴隷から解放してからすぐに私の屋敷で雇った。というか雇ってくれと懇願してきた。まあシンシアだけでなく、この屋敷には元奴隷の侍女が30名ほど住んでいる。
なんでそんなに多いんだ、前の話の奴隷屋敷には奴隷が13名+狐耳の幼女だけだっただろうが! なんて言う皆の気持ちは分かる。実際にあそこにいた奴隷は14名だったしさ。
でもね……、私抑えられなかったんです。だってあんな簡単に奴隷解放出来たんなら、一回で終わりなわけないでしょ! 奴隷なんて私、許しませんよ? べ、別に行く先々で幼い奴隷を目にしたからって、怒りに任せて行動したわけじゃないですって! 本当ですって!
といった感じであれから追加で3件。つまり合計4件の奴隷屋敷を襲撃しました。へてっ☆
ちなみに最初の奴隷屋敷襲撃以降、別段強い人なんて出なかった。用心棒さんたちは尽く私の背後からの首刈りで、天に召されたので、たぶん一番最初のナイフさんはマジ強敵だった模様。
というわけで奴隷解放した人たちの内訳は、女性40名、男性12名、幼女5名、ショタ3名の計60名。屋敷に30名を雇って、子どもたちは孤児院に預けて可愛がっている。残った22名の人達は、一応生活出来る当てがあるらしく私に迷惑を掛けたくないとかで、割とすぐ出て行った。
一応、路頭に迷ったら保護するし、困ったら訪ねてね! と固く言っておいた。助けたのに後ろ盾無くなって、また奴隷になられちゃたまんないからね。なんかあったら相談乗るよ? ってスタイルですわ。なにせ私、人間できてるんで、もう人殺しだけど……。
まぁ暗殺者に保護されるってのも意味不明だけど、凄い感謝してた様子だった。ただ、奴隷屋敷襲撃については黙って貰う必要があるからって、皆が色々と考えた結果リュード帝国から出て行くことになったらしい。せっかく助けたのに寂しいなぁ……。
まあ帝国の治安、割と悪いからね。それでいつかは私も帝国を出ようと思った。
あと、私に仕えた侍女の皆さんは何故かせっかく解放したのに、自分に付けられた値段を返すまで私に絶対服従するという謎の団結、というか鉄の意志を見せ付けられた。まぁ本人たちがいいならいいけどさ……。
そんなこんなで屋敷で雇った侍女さんたちと孤児院の子供たちを養うにも非常に金が要る! だけど探偵ギルドで高額依頼ばっかりして、他の人の依頼を根こそぎ奪う感じになるのも申し訳ない。
というかうちの探偵ギルドそれほど依頼が舞い込んでこないの! 全部が全部、高額依頼ではあるんだけどね。なので私はお金を稼がにゃならんのだよ! だから遂に入りましたよ、モンスターギルド!
魔物を狩り生きるモンスターハンター! 火を噴く竜とかデカいイカとか狩りたい! とか思って入りました。いや嘘です、怖いので雑魚を狩って暮らしたい……。まあモンスターギルドの話は後々でするとして、現在の問題はお金が掛かるというだけです。
つまり、残念だけど奴隷屋敷襲撃業務は一旦お休み。悲しいけど、皆を養うには私一人の稼ぎでは厳しいんだわ。一応、奴隷屋敷から金目のものは持てるだけ、戴いてはいたけども……。生活には余裕が必要だしさ。それに微妙に指名手配犯になっちゃってるしね、私! でも顔も姿も見せてないから正体不明の暗殺者の犯行って言われてる。どうですか、凄いでしょう?
姿形、性別、人数全てが不明の状態で指名手配ってのもよく分からんけど。情報提供も求めてたので「怪しい男を見た!」とか「怪物みたいな姿をしたやつを見た!」とか、どこぞの大統領選挙の如く、嘘の情報を流しまくってやった。これでまあ当分の間、安全でしょう。
という独り言を終えて、私は食堂に向かいますね。




