ストーカーへの忠誠
あらすじ:奴隷の契約書をイチモツハンコで汚す所業に一同ドン引き。
前回のお話は下品なワードが多く、皆々様を不快にさせてしまったことを深くお詫びします。
しかし今後も無いとは言い切れません。
何せ、その場のノリとテンションだけで書いているものですから……。
「はい完了! って、あー……。
手に血がついてる! ちょっと手を洗ってくるから、皆は首輪外しててね!」
奴隷の契約書全てに血の印を押し終わった暗殺者? は握っていたイチモツハンコをポイッと捨て置いた。そして、首輪を外せと命令し、彼女は奴隷たちを置いて部屋から出て行った。それを呆然と見ていた奴隷の一人が我に返る。
「はっ!? み、皆さん、首輪は!?」
名の知らぬ暗殺者に受け答えをしていた奴隷、シンシアは灰色の髪を揺らして、他の奴隷たちに首輪の確認を促す。
「取れたわっ!?」「わ、私も!」「や、やった!」「夢みたい!」「もう奴隷じゃない!」
口々に飛び交う声は、その全てが喜びだった。それもそのはず、私たちは売れ残りの底辺奴隷。女性ゆえに肉体労働、戦闘労働にも期待されず、性奴隷としても中途半端。私たちを買うくらいなら、娼館でプロの技を受けた方が安上がりだし、貴族の性奴隷ならもっと美しい高額な女性を買う。
そういった理由で私たちは需要が低く、最安値に近い値で売られる。それでも食費が掛かるやらで買う人は少ないけど……。そんな私たちの奴隷屋敷での待遇なんて、その辺の家無し子とどっこいどっこいか、それ以下です。だからこそ奴隷でなくなる事は、一般市民が貴族になるのと同じくらい夢のまた夢。それ故の歓喜だった。
だから、だからこそ――!
「皆さん、少し聞いてください!」
シンシアは奴隷たちの前に立ち、自身の決意を表明する。
「私、シンシア・アーネストといいます! 私は奴隷から解放して頂いた御恩を返すべく、先ほどの御方にこの身を捧げる覚悟をしました! もし同じ覚悟がある方が居るのであれば、私と共に忠誠を誓いませんか!」
その表明に奴隷たちはざわつく。
「せっかく奴隷から解放されたのに……」とか「暗殺者だし……」などの否定的な意見が聞こえる。当然折角奴隷から解放されたのに、個人に身を捧げては今までと同じ。奴隷と変わらない……、と考えるのは当然だろう。それもあんな怪しい暗殺者に……。
しかし、違うのです……っ!
身を捧げなければならない奴隷と自ら身を捧げることが出来る従者とではっ! まったくもって意識が違うのです!
……とは言っても理解できないとも思います。従者として仕える悦び。自ら仕える事の快感を……。そう考えるのは私が昔、ある屋敷の侍女だったからで、仕えていた主人が尊敬に足る素晴らしい女性であったからなのですが……。
私だけか……。と内心項垂れていると。
「わ、私、誓うわ!」
一人の奴隷が声を上げる。するとそれを聞いて次々と……。
「私もよ!」「あ、あたしも!」「うちもやっ!」
奴隷が次々と賛同していく。全員が本心であるかは分からない。奴隷を解放された後、生活に不安がありやむを得ず仕える算段を立てているかもしれない。それでもシンシアは自身が提案した結果、このような光景が生まれたことに少なからず感動していた。涙が溢れそうになる。
しかし、私から提案したのであれば、当然私がこの集団を纏める者。涙を見せるような弱いトップでは示しがつかない。弱いままではいられないし、奴隷を解放され浮かれた気分のままではいられない。背筋を伸ばし、足を揃え、賛同してくれた7名の元奴隷たちに向かう。
「分かりました。では賛同して頂いた皆さん! あの御方がこの部屋に帰ってきたら――」
*************
なんなのこの状況……。
豚くんのイチモツを触ってキタナイキタナイしたので、念入りに手を洗って部屋に帰ってきた。そしたらさぁ、奴隷ちゃん達がピシッと並んでお辞儀……どころではなく土下座。そして誰一人顔を上げない……。それを豚くんと一緒に唖然とした顔で目撃する。私はなんとなく部屋に入らず、一旦ドアを閉める。
あれ? 私が助けたのって奴隷だよね? いや、感謝されてるのは分かるんだけど……。てか、この世界でも土下座ってあるんだね。凄いね。
というか別に引き返す必要も無かったよね私? というわけでもっかいドアを開けます。
「「「おかえりなさいませ、暗殺者様!」」」
おおう! 約7名の奴隷ちゃんが一斉にお出迎え? してくれた。他の奴隷ちゃん達は、部屋の隅で棒立ち中。
幼女ちゃんも頭を下げながら、カワイイ声でふさふさの尻尾を振っている。嬉しいけど、普通に止めて欲しい。今、夜中だし声大きいし。でも一応言っておこう!
「た、ただいま?」
「「「はい! おかえりなさいませ!」」」
返事を返してみたら、全員パッと笑顔になる。
なにこれ? そして声でかいよ……。
「あの、ちょっと声を小さくして欲しいんだけど……。ばれちゃったら大変だよ?」
「はっ!? ……申し訳ありません。暗殺者様の帰還に我々一同、場所をわきまえず歓喜してしまいました。何卒、罰は私だけでお願い致します」
非常に申し訳なさそうに、だけども何か期待してるような……。うっすらと頬を染めた表情で一番前に陣取る奴隷ちゃん。
「えっと……、罰とかは良いから。まずは立ち上がって。地面に座ってちゃ辛いでしょう?」
「いえ、そうはいきません! 私たちこの7名の元奴隷一同、暗殺者様にこの身を捧げる所存! そう決意致しました。 しかし今しがた失態を犯した我々に……。いえ、その原因を作った私に是非! この身を震わせる程の罰を与えて頂きたいのです! できれば、ご主人様自ら!」
ぅわーお……。
いきなりご主人様認定された!? 助けただけでこんなになるん? それに、この子マゾかな? ちゃんと悟られない様に真剣な表情を貫いているけどマゾだ。間違いない! だって目が! お目目が輝いてらっしゃるもの! 私からの罰を、今か今かと待っているんだもの!
うーん、仕方ない……。
なんでこんなことになったのか知らないけど。本人が欲しいって言うのなら罰をくれてやろう。私はマゾっ子にも理解があるからね。いや、私はマゾじゃないよ?
それに私が今思いついた罰なんて、この奴隷さんが考えていそうな、嬉しくなっちゃう様な罰とは違うと思うけどね。ちょっとだけ貴女の覚悟を試す様な小さな罰。私に仕えるつもりなら、こういう覚悟が必要になるかもしれないから……。
「ではこれを持ちなさい」
そういってシンシアに短剣の柄を方を差し出す。
「これであの豚くんの首を刎ねて。それがあなたへの罰よ。いいかしら?」
「え!? は、はいっ!」
短剣を渡されたシンシアは身体を硬直させ、渡された短剣を呆然と見つめている。
やっぱり人を殺すのは抵抗があるのかしら? でも、私に仕えるのなら、つまりは私の理解者、共犯。そういう事でもあるのよねぇ……。ここで殺せなければ、きっといつか私の傍が恐ろしくなる。そして耐えられず離れてしまう。
「どうしたの? できない?」
「い、いえ! やらせて頂きます!」
ナツメの言葉にハッと顔を上げて答える。両手で受け取った短剣を握りなおして息を飲むと、覚悟を決めて奴隷商人の前に立つ。
「ひっ」
死の宣告を受けた男は、地べたで転がされながらも最早恐怖で抵抗する気もない。目を瞑りただ自らの首が刎ね飛ぶのを待つのみである。
「では……」
シンシアは強く握った短剣を振り下ろした――。




