ストーカーと決意
あらすじ:20万でケモ耳幼女が売っていた。異世界ぱねぇ。
「こちらが私の保有する奴隷たちです」
丸々と太った男に案内されてついて来た屋敷の中。
満面の気持ち悪い笑みでそう告げた男、奴隷商人の背後には、鉄格子を挟んで14名の女性が物言わぬ人形の様に並んでいた。そのどれもが余り身ぎれいにされておらず、痩せこけており、汚れ破れた布で最低限の箇所を隠しているだけで服を着ているとは言えない状況だった。
そしてどの奴隷も目の奥に光が無く、魂を抜き取られたような虚ろな表情をしていたのだ。しかしその女性たちは私を見ると、ほんの少しだけ表情を崩す。私のような女性が客として来た故の安堵だろう。
「これだけ?」
奴隷屋敷に招かれて奴隷を並べた状態を見せられたナツメが不満だと言わんばかりの声で問いかける。そのナツメの声や表情に、目の前の男は苦い顔で笑いながら言う。
「ははっ、一介の奴隷商にとってはこれでも多いくらいですがね。数が必要ならば、別の店も紹介させて頂きますよ?」
「いえ、別に構いませんわ。それより、全員でいくらになるのかしら?」
ここに来てから、いやこの奴隷商に話を掛けられてからずっと、高圧的で我侭なお嬢様を装って話している。その方が話が進みやすい。そう思っただけだ。
「そうですねぇ、全員ですと900万リュードほどになりますが、いかがでしょう?」
「そうですか、ではそれでいいです。明日また来ますのでお金はその時に持って来ますわ。奴隷たちを身奇麗にして用意しておきなさい」
「えっ」
簡単に奴隷を買うと約束すると、男は驚愕の表情を見せた。が、すぐに驚きの顔を直し、気持ち悪い程の満面の笑みを浮かべ直す。なんか手揉みまでし出した。
本当にする奴いるんだこれ……。実際にやられるとキモいし反応に困るなこれ。しかも自分から900万だとか言っといて、即決しただけで驚くなよ……たぶん相当ふっかけたんだろうけど。
奴隷の相場は普通の女性(高貴な出身とか見た目が凄く良い等ではない)なら30万~80万くらい。ただ目の前の人たちはそんなに状態が良くはない、よね? 綺麗にしたら分からないけど、高くても50万もないかな……。平均は40万くらい? 14人で40万。だいたい560万か、それを900万で売ってきた。大分ふっかけてきやがったな、こいつ。まぁいくら高くても関係ないけど。
席を立って、「今日は帰ります」と告げて奴隷屋敷を出る。男も大きく売れたのが余程嬉しかったのか外まで出て私を笑顔で見送っていた。きめぇ。
すぐに戻ったからたぶん今は奴隷の子たちを着飾るのに大忙しだろうなー。まあ、人生の最後まで女性たちを囲っていたので幸せだろう。
なんて思いながらちょっと寄り道をしながらも無事帰路についた。
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「おいナツメ! お前どこ行ってたんだよ! 家にも孤児院にもいないから心配したぞ!」
家に帰るとハーミィちゃんが怒鳴ってきた。言うほど遅くなってないと思うんだけどなぁ……。
「え? ああ、ごめんなさい? ちょっと道に迷ってしまったの……」
なんて嘘を吐いてはぐらかす。奴隷屋敷に行ったなんて口に出したら、めっちゃ怒られるからね。この世界の常識を勉強してる時に「奴隷屋敷には行くな」と何度も言われたから。そんなに怖いとこ言われなくても行かないし! とか反論していたけど、結局すぐ行ったなぁ……。
まあ、別にそれで怒られても良いんだけど、今は駄目だ。行った事を隠す必要がある。あの奴隷たちの為にそして私の自己満足の為に、私は今夜の準備しないといけないし。
「おい、ナツメ? もしかして体調でも悪いのか? なんか顔色良くないぞ?」
「え? ……あ、ああ、やっぱり? ここ数日の環境の変化で身体が無理したのかしらね。私も体調が悪いと思ってたの。ご飯食べたら今日はちょっと早く寝ようかな」
ハーミィちゃんがこちらの体調を気に掛けてきた。別に体調が悪いとは思っていないが、それを利用して夜に一人になる時間を作れるように話に乗ってみる。
なんか私悪い子になってる気がするわ~。あ、悪い子って年齢じゃないし、悪い女って感じ? あらやだ、一気に格好良い! 私、悪い女です。なんて言って見たいもんだね!
「ん、また馬鹿な事考えてんじゃねーだろうな? 飯食ったらさっさと寝ろよな」
バカな事考えてたら、バレてしまった。これじゃあ悪い女にはなれないなぁ。でも、本当に悪い事を考えてるっていうのはバレなくて良かったわ。
「ありがと」
とりあえず今はハーミィちゃんと久しぶりの休日を楽しむ。ハーミィちゃんと一緒に食事をして、次はお風呂だー! って感じでハーミィちゃんをお風呂に誘うとまた怒鳴られました。いや、調子悪いのに風呂に入ってんじゃねぇ! って怒鳴られたのであって、決して一緒に入る事を断られたわけではないですよ? でも、今日はお出かけしたのでお風呂には入らなきゃ! って事で入りました。一緒に入りました! はっはっはー、どやー!
いやー、いつもは全然一緒に入ってくれないのに、調子悪いってだけで凄い優しい! この子案外ガード緩々じゃないですかー? そのうち一緒に寝てくれそう! 今日は言わないけど。
なんて事で、ハーミィちゃんにいっぱい心を癒して貰ってから、早く寝ると言ってへやに戻ります。そして、ハーミィちゃんも寝静まった真夜中、俗に言う丑の刻。ではなく、今はだいたい夜の11時くらいだ。ハーミィちゃんは遅くても10時には寝る良い子なのです。かわいい!
ハーミィちゃんが寝静まるのも待ってから、自分の部屋でお着替えする。買ってきた黒い装束を身に纏い、口元を黒い布で隠し、護身用に買った短剣を隠し持ち、足音を消すために地下足袋! なんてものは無いので、黒い布を足にグルグル巻いた。うん、凄い真っ黒。そして見るからに怪しい! これならばれなさそうで絶対大丈夫ね!
自室の窓を開いて、壁を伝ってそっと降りる。屋敷から抜け出すと、私はすぐさまあの奴隷屋敷に向かった。ササササーッとね!
この日だけは私、ストーカーも探偵も捨てて、暗殺者になりますっ!
自重なんてしないからな?




