ストーカーと奴隷
あらすじ:孤児院ゲットだぜ!ついでに屋敷も。
「はぁー、凄い人集り!」
ごきげんよう。私は自称18歳、探偵ナツメ・ヒダカ! 先輩長身幼女探偵のハーミィちゃんと同棲するべくお屋敷を購入して、3週間が経ちましたん。
ただ家を買ったはいいけど、私が隣に建つ孤児院にばっかり入り浸って、一日中子供たちと遊んでるから、寝る時ぐらいしか家に帰らないし、偶に孤児院にお泊りもして帰らないし、ハーミィちゃんもギルドで仕事に行ったりして帰るのが遅いのですれ違いの日々を過ごしている。
新婚生活ながら夫の多忙で夫婦のコミュニケーションが取れないような寂しさがあったりする。俗に言う離婚の危機である……。
いや、ごめん。そんなことは無いです。私、孤児院で色々と楽しんでますんで。ハーミィちゃんはギルドの仕事で忙しいから仕方ない。でも、休みの日に一緒にご飯行ったり、買い物したりしてるから関係は概ね良好なのだ。
ただ、それ以上に孤児院の子供たちの方が、スキンシップでは遥かに上をいっているだけであって……。なので、私は常に屋敷に居ない状態で、買ったお屋敷はほぼ使われないままなのである。
でも流石にそろそろ家具とか食器とか生活用品諸々を買いに行かなきゃな~と思っていた私は、ハーミィちゃんを連れてレッツお買い物!
という事でここ中央民街の商店通りに来ています! 中央民街ってのは簡単に言うと貴族でも貧乏でもない、言うなれば一般市民が住む地域だにょ。私の屋敷も中央民街の端っこにあるし、ここが一番近いからきたけど……。凄い人一杯いる、でも……。
「幼女、おらんやん!」
と言いたい。
いや、言いたいというか、言ったけども、叫んだけども。一般観衆に奇異な目で見られたけども!
子連れっていないんすねぇー。子どもと一緒にお買い物とか楽しいのにー。まあ理由は分かりますよ?
「当たり前だろ、ここ娼館通りだぞ」
はい、ハーミィちゃんが言ってくれましたー。あれ、さっき商店通りって言ってただろって? そうなんですよ、ここは商店通りであり娼館通りでもあるという凄いとこなんです。なんとここの通り、左側が生活用品を売る商店通りであり、右側は肉欲を満たすお店が並んでいる訳です。
それに完全に娼館通り、って訳じゃ無いけど、昼間でも割と凄い恰好の人が客寄せしている。うわっ! あの人なんか胸元開けすぎてチラッと桃色が見えてるよ!? 外国人特有の乳首チラ見せファッションですね、分かりません。ちゃんと隠してください興奮します。
そしてそんな場所に子供なんているわけないですよね。どれだけ平和な日本でもこんな如何わしい場所には子供はいませんでした。すいませんでした。まぁハーミィちゃんは一応子供なんですけども! 育ち盛りの14歳なんですけども!
まあそんな商店(娼館)通りですが、まぁまぁ賑わってます。でもたぶんただのお客さんじゃないと思います。なんか特に群がってるとことか見て見ると「14万!」とか「15万!」とか大声で競い合ってるし、たぶん競りですね。初めて見ましたわー。
そして商品は変な首輪。おじさん……、よくそんなの買うね。奥さんに付けてSMプレイでも楽しむのかしら? にしてもすんごい人気だこと。てか高くない? 幻の一品か何かなのかな?
「ほら早く家具店に行くぞ!」
辺りをキョロキョロして物珍しい物ばかり見ていたら遅いと怒られて、ハーミィちやんにズザズザ引きずられる。やめるのだ! 服が伸びる!
*************
「ねぇハーミィちゃ~ん、まだぁ~?」
「うるせぇ! 何回言ってんだ。そんなに退屈だったら先帰ってろ!」
ハーミィちゃんが家具選びでここまで拘るとは思いませんでした。何なん? 屋敷も家具も私のお金なんですけど? 私が「これどう? シャレオツじゃない?」なんて言った物は全部却下。なんだよー。もー。
孤児院の子たちに喜ぶと思って、カラフルな家具ばっかり選んでたのに「屋敷に合わない」の一言で却下ですよ。一応ハーミィちゃんが楽しそうだから良いんですがね。でも、何時間選んでんの? って話ですよ。その間、ハーミィちゃんのハーフパンツから覗く生脚を舐めるように見ること以外やる事なかったし……。今もフトモモを容赦なく撫で回しながら聞いてるんだけど、たぶん気付いてないし……。
どんだけ家具選びに集中してるんですかね? 私が痴漢だったらどうするつもりなのかしら? ぷんぷん。もう仕方ないから、私先に帰りますわ。と、お店をでちゃう。そしたらもう外は陽が落ちて薄暗い夜になってた。
おお流石、娼館通り! 胸元バックリのスリットぱかーのお姉さん方が店の前で手招きしてる! それに男共も街頭に集まる羽虫の如く色香に寄せられてる!
ってちょっと過剰に言ってみたけど、実はそこまででもない。男性の方がちゃんとエロい勧誘に負けずに、値段交渉で娼婦さんと言い合いじみたバトルを繰り広げてる。でもあんなことして安くしたら女の人がやる気失くして気持ちよくサービスする気が失せて、結局損するんじゃないのかなー? なんて思った。まぁどうでもいいけど。
なんて思いながら帰り道を歩いていた。
「ん、なにあれ?」
私は見ました。
色々とごちゃごちゃに物やゴミが散乱した狭い路地。何となく視線が釘付けになったのは、鉄格子。その中に居る、たぶん生き物? ぬいぐるみとかではない。何となく見たソレに目を凝らすと、ソレは大きな尻尾に包まって鉄格子の奥でプルプルと震えていた。
「キツネ……?」
動物が檻に捕えられているのかと思って寄ってみた。近づいていくに連れて徐々に露わになっていくソレに私は嫌悪の表情を見せる。完全に見える距離まで近づいたナツメ。そのナツメの腰の高さほどしかない箱のような鉄の檻。そこに囚われていたのは、獣の耳と尾を身に着けた――。
「おん、なの子……!?」
明らかソレは人間の姿をしていた。
ナツメは檻の前でしゃがんでカタカタと震えるその少女に声を掛ける。
「ねぇ、あなた。これは何かしら?」
出来るだけ笑顔で、優しく尋ねていたつもりだった。
「ヒッ……!? ゴ、ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
あら、どうやら怯えさせてしまったようね……。
抑えてはいたのだけどやっぱり顔に出てたのかしら?
ナツメはスッと立ち上がると、ため息を一つ吐く。
これが奴隷なのね……。話に聞いてた通りのクソ待遇みたい。外に捨てられたように……、でも逃げられないようにこの子は檻に入っている。で、たぶんこれがこの子の値段?
檻に括り付けられた紙を見て、売り出している値段であろうと予測。ナツメはまだ文字は読めないが、数字だけは優先して覚えたので値段の部分だけ読むことが出来る。
20万リュード……。
ありえない……。人に値段をつけるなんて頭が逝かれてるんじゃないかしら? ましてやこんな小さい子が奴隷なんて……。
「その奴隷がお気に召しましたか?」
――――っ!?
ナツメに声が掛かる。
それは檻を挟んだ向こう側。淫らで華やかな娼館通りの小道を通った向こう側。そこに佇む太った豚のような男は、ニタニタと笑みを浮かべていた。
ナツメはその男を見た瞬間にふと、ある感情が心を染め上げナツメは自然にその感情に任せないよう押さえつけた。そして目の前の男にそれを悟らせない様、上品に、高圧的に、それこそお嬢様然とした品のある態度と笑みでこう答えた。
「ええ、そうね。是非とも売って頂きたいわ。あと、あなたのお店にも興味があるわね。案内していただけないかしら?」
それを聞いた男は少し驚いた様子で、しかし嬉しそうに「こちらです」と案内を始めた。
その後ろをついて歩くナツメは、表情に笑みを貼り付けながら、眼だけは目の前の男を射殺すほどに見開いていた。
別に後味が悪い展開にはならないです。




