ストーカーと孤児院
あらすじ:今から屋敷を見に行くぞー。
「これこれこれ! ぜーったいに! ここに決定!」
こんにちは! さっきまで「あまり家選びに乗り気になれない」とかクールぶってほざいていたナツメです!
現在、一つ目のお屋敷を見終わった後、二つ目の安い訳あり屋敷に来たのですが。いやー、お恥ずかしい! やはり、家選びは良いものです。特にこのお屋敷! ここを見た瞬間にビビッと来ましたよ?
ここしかないっ! ってもう一人の私も囁いてるよ! というか最早、叫んでるよ!
でも、私以外の二人はどうもビビッと来ていない様子。というか私が急に騒ぎ出したから、アホを見るような目で見てくる……。
「いや、あのまだ中に入っておりませんが……」
「そうだぞ、それにこの屋敷付近は隣に孤児院が出来上がったせいで、治安が悪くなったって聞いただろ?」
ふっふっふ、お主ら。分かっておらぬ! まるで分かっておらぬぞ! この環境こそが私の楽園! 夢、最終目標、野望であったのだ!
とか口走っちゃったりすることは無いけど。私にとってそれくらい素晴らしい立地であると言う他ないね!
「私はこの屋敷に決定するわ! さっそくお隣さんの孤児院にレッツゴー! じゃなくて、ご挨拶に行ってくるわね。今日から隣に移り住むんだもの、挨拶大事! ハーミィちゃんはこの屋敷を買う手続きをしてて欲しいわ! お願いね!」
逸る気持ちを抑えられないので、ハーミィちゃんに交渉を押し付けて隣の孤児院までダッシュ! 待ってて! 私のカワイイ子供たち!
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「はぁ~、なぁんて可愛い子供たちなの!」
子供たちに脚にしがみ付かれながら、子供を抱き抱えて恍惚の笑みを浮かべてナツメは吠えた。
やはり孤児院は楽園と言って差し支えない素晴らしい場所でした! 最初はいきなり孤児院にお邪魔した私に警戒して、全然近づかなかった子供たちも今では私に懐きまくり!
いやー、やはりお金の力って凄いね! 院長みたいなお姉さんにポンと(100万リュードほど)寄付金上げたら土下座された。子供たちもご飯がたくさん食べられるとかで大喜びされた。出会って十分経たずに私に陥落したからね? この子たち、チョロ過ぎでしょう!? ちょっと将来が心配になってきたよ? お金につられて如何わしい行為なんてしないように教育せねば! というか私だけに身体を許すように教育しよう。うん、それがいい! ナイスアイデア!
え? だ、大丈夫ですよ、性的な意図はないですよ!? 身体を許すって言うのは、抱っこしたり、一緒にお風呂に入ったりってことですよ?
やだな~、私をなんだと思っているんですか? 私は子供に対して性的な感情を持ってませんからね? まぁ強いて言えば、聖的な感情は持ってますけども! 聖母のような精神で子供たちに接してますので。
「ナツメちゃん、あいがとー!」
私が抱っこしていた幼女を下ろすとお礼を言われた。そして周りに群がる子たちが次々に押し寄せる。
「なぁなぁ! 俺も抱っこしてくれよ!」
「何言ってんのよ! 次は私よ!」
「ぼ、僕もしてほしいけど……」
「私も……して」
「ふへへぇ~、お姉さん困っちゃうな~! じゃあ小さい子から順に抱っこしてあげるからね~」
はぁ、カワイイ……。この子たち全員抱きたいのに、何故私の腕は2本しかないのか。せめてあと8本あれば皆抱っこ出来たのに! いやキモイからやっぱいらん。
「やった……だっこ」
「つ、次はぼくだよね?」
「ふんっ、仕方ないわね! 私はお姉さんだから」
「仕方ねぇなー。待っててやるよ」
ほうほう、眠そうな半目の銀髪幼女ちゃん! 雰囲気と口数から一見大人びたクールで心を見せない印象だが、甘えることに躊躇が無いというギャップ!
こやつ、中々やるじゃないか。子供を愛でる心を鷲掴みにしおるわ。おっと、涎が……、フキフキ。
「はーい、あなたの名前はなんていうのかな?」
「レル……だっこ」
「はぁい、レルちゃんね! おいで! ……ぎゅー!」
「ぎゅー……」
は、か、可愛すぎー! こんな無表情を貫いた顔をしてらっしゃるのに、ぎゅーだって! そんなのいくらでもぎゅーしてあげるに決まってるじゃない! ぎゅーぎゅー!
「おねえちゃん……ちょっといたい」
「あ、ごめんね! ちょっと強すぎちゃった!」
「ん……だいじょぶ」
ふぅ、落ち着こう。
モミモミ。
「おねえちゃん……もむな」
おっと、ついお尻を無意識にモミモミしてしまった。危ない危ない。
「ちょっとナツメ! 早く高い高いしなさいよ!」
「そうだぞ、俺たちも待ってるんだからな!」
「僕も、早くしてほしいけど……」
「はいはい、じゃあレルちゃんいくよ~! はい、たかいたかーい!」
といってナツメはポイッと真上にレルを投げる。
「うゎ……やばぃ」
レルの身体がふわっと空中に投げ出されたと感じた頃に、ボスっとナツメの腕の中に落ちた。レルは真ん丸とした目でナツメと顔を見合わせる。
「これ、こわい……たのしい」
「ふふ、そうでしょ? じゃあ交代ね」
と言ってナツメは名残惜しそうにもう一度ギュッと抱きしめてから地面に下ろす。
「つ、次は僕のばん……おねがい、します……」
「はぁい。任せて!」
と気弱そうな少年を抱き上げようとしたとき……。
「ナツメぇぇえ! いつまで遊んでんだよ! 家を見終わったしなにも悪いとこなんて無かったぞ! さっさと契約書にサインしろっ!」
ハーミィちゃんが邪魔しに来た。くそぅ! ちょっと今良いとこだったんですけど……。まぁ契約とか面倒なの全部任せたのに文句なんて言えません、はい。
「はいはーい。じゃあ皆! 一旦終了ね~」
「えー、まじかよー」
「わ、私まだ高い高いされてないわよ!?」
「お、おねえちゃん……ぐすっ」
はわっ!? な、なんて子達なの! 泣かせるなんてマジで私、鬼だわ! ごめん、サインしたらすぐ来るから!
「ご、ごめんね、またすぐ来るから! お姉ちゃんとはいつでも会えるから! これからはお隣さんだから!」
ナツメは家の購入契約をするため足早に孤児院を去る。
大丈夫、これからは毎日遊べるから。もうご飯に不自由もさせないから。そう心に決めて。




