第11話 鮫牙兎とラピットグロウ
今回はミシュラも同行してくれるので、彼女を加えて作戦会議をしている。
まず、強さだけでなく、今回の作戦に一番貢献するほど策士でもあった。
まずは二千の軍勢を萎えさせるか。
この点はユウキの火炎瓶に属性銃の風と火を打ち出し、爆発に巻き込めばいい結論に至った。
うまく逃げ切り、尚且つ威勢のあるものはレイナやフランが対応。
その間、ミシュラは敵の主力であるレイナの兄とクーデターに誘い込んだ親玉を探し出して見つけ次第、親玉を討伐するらしい。
そして、レイナの兄がいる場所に雷魔法を落とす算段となっている。
仕留めきれなかった場合、相手の能力を理解しているフランが担当する事になった。
残りの残党はユウキとレイナが相手をする感じでいく。
「という感じの作戦だよ。意見なりなんなり受け付けるよ」
広げてある地図に人差し指をパンパン当てる。
誰も口出し出来る程いい案もなく、ミシュラの作戦に乗り気である。
一番問題視されていた親玉を担当するだけでなく、その他も三人を無駄なく活かした作戦。
主力を相手せずに比較的安全でいられる要られるユウキはとても満足そうだ。
「意義はないようだね。じゃあこれでいくよ。――っとその前にユウキ君の『チートスキル』を解明しといた方がいいかもね」
「でも、魔物はこの辺にいないみたいですけどね」
ユウキは弾に植物魔法を込めながら返答する。
「......私がドラフォの餌にと狩っていたら殲滅してしまったからね。奥にいけばまだいるとは思うがな」
ドラフォとはミシュラの連れているドラゴン。
ドラゴンの中でも上位種のレッドドラゴンらしいが、人懐っこいため人を襲うことはないそうだ。
レイナはとてもお気に入りらしい。
「ドラフォは大きくて迫力あるけど、近くでみると顔は可愛いわ」
「グフゥ」
眉間を優しく撫でるとドラフォは目をトロンをさせてリラックスした。
この姿を見れば愛嬌もあって可愛いものだが、ユウキの第一印象は山積みになった魔物をむさぼる姿。
とてもではないが触る勇気は無さそうだ。
一行は魔物を探すべく、森の奥に進んでいく。
右側の草木からガサガサと音が聞こえてくる。
目がキラリと光って姿を現した。
兎だった。
普通の兎より気持ち大きいサイズでユウキは一安心した。
「なーんだ、兎かっ――」
「ギシャーッ!」
兎は素早い動きで突進してきた。
ユウキは完全に油断して一瞬硬直してしまったが、かろうじて足を半歩引いてかわす。
かわされて怒りに満ちている兎は猛獣の様に尖った牙を剥き出しにする。
「兎じゃないのかよ!」
「兎の魔物だ。名前は鮫牙兎で毒は持っていないが、咬まれたら木も真っ二つになるくらい顎の力が強い。森の奥には入ったことなかったが、なるほど、魔物のレベルも上がるわけだな」
「嘘だろ、ちょっと説明してないで助けて下さいよ。フランさーん!」
咬まれたら詰むと判断したユウキは助けを求めるが、フラン一歩も動かない。
それどころか助けようとしたレイナを後ろから取り押さえている。
取り押さえられながらフランの行動に文句を言うが、
「未来を救う勇者様がまさかこの程度の魔物に負けないよな? こいつを倒せないようでは足手まといもいいとこだ。我らの王都奪還計画に協力する事を反対をしなかったのは貴様の実力を買っているからだ。逃げるばかりでなく、戦ってみろ! 臆病者がっ!」
「――ッ」
フランに痛いところを突かれた。
ユウキの実力は決して弱くはない。
ガンスリンガーリーグで何度も優勝をするほどの強さで、強豪選手ともなればフラン程ではないが、レイナより強い選手もいるわけだ。
元々、相手の情報を知り計算した上で戦いに挑む戦闘スタイルのユウキにとって真っ新な状態で戦えと言われても、どうしていいかわからなくなってしまう。
どんなフェイントを使ってくるのか、どんなカウンターを仕掛けてくるのか。
どんな攻撃が得意なのか、どんな攻撃をされるのが苦手なのか。
余計な事を色々と考えてしまうせいで、情報がわからない相手に対し、防戦一方となる。
特に並みの機動力とそれなりの攻撃力以上の相手には恐怖で攻撃を仕掛ける隙を作れなくなってしまう。
出会って間もないが、フランは見抜いたのだろう。
熟練者の勘とも言える。
ただのスキル条件を知るためだけではなく、ユウキの根性も鍛えようと考えていたので、今回の魔物探索に乗り気であった。
戦闘経験を詰ませて、いつでも実戦に備えられるようにと。
「戦えユウキ! 貴様は自分が思っている以上に強いぞ」
――嫌だ、怖い。
目が泳ぎ、手が震える。
鮫牙兎の攻撃をかわし続けているため、足だけはしっかりいている。
「私はこんな者の仲間になれと言われていたのか。ユウキ君の無神経さはすごいねー」
ミシュラが煽る。
それがきっかけになったのだろうか。
先程の怯えた様子は消え、悔しく、怒りに満ちた表情になった。
そして、魔物を睨めつける。
――くっそ、雑魚ぐらい俺が片付けてやるよ。
真正面から突進してきた鮫牙兎をギリギリで避けて、ユウキはカウンターの膝蹴りを顔面にかました。
たまたま、背後の木の幹が尖った形状になっていたためか、鮫牙兎は吹き飛ばされた衝撃によって腹に深々と突き刺さった。
痛みでもがき苦しみ脱出をしようと暴れているが、中々うまくいかないようである。
銃を構えて撃とうとした時、ふと思い出す。
「鑑定のレベル上げの為に一応しておくか」
もがく兎を視界に入れて鑑定をした。
名前:鮫牙兎
LV:8
種族:兎
性別:♂
武器:牙
属性:なし
想定内の鑑定結果が出て苦笑する。
お調子者のユウキは「選ばれた者とそうでない者の違いとはこの事だ」と心の中で呟き、不敵にクスクスと笑う。
性格はまさにクズである。
が、一つ遅れて入ってきた情報にユウキは目を見開いて驚く。
チートスキル:『宿り木の弾丸』......鮫牙兎のお腹にある傷口のみ発動可。
「――なっ、なぜ!」
「どうした」
どうしたも何もチートスキルの発動条件がいつの間に満たしていた事にユウキは驚き、訴えたかった。
あまりにも衝撃的だったため声を出そうにも口をパクパクしているだけで何も聞こえない。
「キッシャアアアア」
ユウキが数分も固まってぶつぶつ言っていると、とうとう鮫牙兎が脱出した。
怒り爆発で周りを見れる余裕がないみたいで、そのままユウキに向かって突進をした。
が、ユウキの反応が遅れて避けきれず、脇腹に食らって吹き飛ぶ。
生い茂る草がクッションになってくれたお陰でさほどダメージはないだろう。
「キッシャッシャアアア」
してやったりと言いたげな鳴き声をあげる。
嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねている。
と、その時、
「天才イケメンガンナー様の実験体一号よ。お前は選ばれた魔物だ。一生に一度見れないスキルをお前の冥土の土産にくれてやるよ」
ナルシスト且、気取ったセリフを語って銃を構える。
レイナは「ユウキ―!」と叫んでテンション上昇しているが、フランは「気持ち悪い」と言いたげな表情をしている。
ミシュラは二人の温度差があるテンションとは違い、瞬き一つせず真剣に戦いを見ている。
銃口が緑のほわほわした優しい光に包まれた。
そして、
「あばよ、選ばれし兎」
『宿り木の弾丸』
銃弾が放たれ鮫牙兎の腹に命中した。
緑の光が傷口に素早く流れていき、光は消えた。
ユウキが「え、何もないの」と口に出した途端、鮫牙兎の傷口から植物の葉が顔を出した。
その瞬間、葉が急成長して天に向かって勢いよく伸びていく。
兎の身体がバラバラになっていくが、植物の根が地面に落ちる前に肉片一つ残らず掴み取り、あらゆる養分を急速吸い上げていく。
たった数秒の出来事で鮫牙兎はこの世から消え去った。
「や、やりました! 俺やりましたよ!」
想像を絶する光景と威力に、誰もユウキに返事を返せなかった。
喜ぶユウキの背には、周りの木々より一回り大きい、かつて兎の魔物であった木がそびえ立っていた。
今日中に次話も投稿いけそうなんで夜に更新します。




