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第10話 死後の世界と吸血鬼

今回はユウキの感情的な描写が多めです

 鑑定の成長が目に見える程、早いのを自覚していた。

 次は素性も探れる様になるのではないかと。

 好奇心に負けて銀髪の彼女に鑑定をしてしまった。

 すると、


 名前:ミシュラ・グランゼール

 LV:???

 種族:ヴァ???

 性別:♀

 武器:???

 属性:???


 ユニークスキル:???



 ――苦しめ、そして這いつくばれ。



「――ッ!?」


 突如、ユウキは苦しみ始めた。

 呼吸が出来ず、地面に這いつくばりもがく。

 苦しみ、苦しみ、助けを求めようとも叶わない。

 もがくことしか出来ない苦しみ。


 身体が硬直していき、とうとう動けなくなる。

 視界も薄れ、光を失い始める。


 ――ああ......俺......死ぬんだ。


 一瞬、ほんの一瞬だけ苦しみが和らぎ、視界が戻る。

 泣き叫ぶレイナ、声をかけて肩を揺さぶるフラン、そしてじっと見つめる彼女......ミシュラ。

 何を言っているかは聞こえないが、自分の死を悟った。


 ――ハーレム、作りたかったなぁ。


 意識も薄れる。


 ――まだ、死にたくない。


 願いは叶わず、意識が途切れた。



---



 真っ白い世界。

 辺りを見渡しても一面、眩しいくらい白い。


 ――死後の世界か。


 太陽とはまた別の眩しさを放つ空間に途方にくれる。

 死して尚、意識があるものか――今こうしてあるのだから歴史的な発見だ。


 ――もう死んでるけど。


 史上初の発見をしても、偉大な発明をしても、極上の女を獲得できても、死んでは意味をなさない。

 ユウキはまた一つ学んだが、死んでいるから意味がないと考える。


 ――ははははは。


 命の呆気なさに笑いしか出てこない。

 眩しく真っ白な面白味のない空間でひたすら笑う。


 考えても無駄。

 発見をしても無駄。

 何をしても無駄。


 なんてつまらない世界だ。

 なんて味気の無い世界だ。

 なんて無意味な世界だ。


 徐々に精神崩壊していく。

 そして、再び意識が薄れていく。


 ――異世界転生ってあるのかな。


 幼少期に母親に買ってもらった絵本、『異世界転生録』をふと思い出し意識は途切れた。



---



 意識が戻ってくる。

 瞼が重くて開かない。

 身体も一切動かない。


 ――死後はこんな事の繰り返しか。


 何故、人は好奇心に勝てないのだろう。

 あの時、ミシュラを鑑定していなければ死ななかったのに。

 焦っていたのか――いや、違う。

 知りたかったのだ。

 強さ、素性、そして仲間に引き入れられるかを。


 ひ弱な自分を守る盾を。

 苦戦を強いられない強力な矛を。


 そんなもの求めても、今となっては意味をなさない。

 段々と放心状態になっていく。

 だが、


「――」


 ――ッ! 声が聞こえた。


 誰かの声が入ってくる。

 ユウキは耳を傾ける。


「......キ。ユウ......キ」


 誰かが呼んでいる。

 人の声を聴くことが、こんなにも夢中になるなんてユウキは想像もしなかった。

 名前を呼ばれることが心地よいなんて不思議なものだ。

 幼い頃、両親に名前を呼ばれて抱き抱えられる記憶が蘇った。


 声は鮮明になるにつれて、様子がおかしいと気付き始める。


「起きてユウキ、起きて!」


 ――ッ! この声は確か......レイナッ!?


 ユウキに語りかける人物がレイナだと知り、失いかけていた感情が沸き上がる。

 もしかして自分はまだ死んでいないのでは......と思い始める。


 声を出そうとも声が出ないし、身体も動かない。

 まるで全身がセメントに固められているかのようにピクリとも動かない。


 だが、ユウキは必死にもがいた。

 このチャンスを逃せば一生このままだと。

 今、掴み取れば自分は生を取り戻せると。

 何故かわからないが、ユウキには確信があった。


 ――死んでたまるか......俺は命が何よりも大事なんだよ!


 その瞬間、今まで重かった身体が僅かだが動いた。


 ――い、いける。


 先程よりも身体が軽い。

 どんどん軽くなっていく。

 そして、ユウキの目が開いた。


 涙でボロボロになったレイナ、肩が折れそうなくらい強く握り締めるフラン、そして、人差し指をおでこに当てているミシュラ。

 仮面を外しているようで、素顔はとてもロリ可愛い。


 自分は死んでなんかいない。

 生きている。

 目の前の美しい美女達に囲まれているではないか。

 生の実感を感じて自然とユウキの目から涙が溢れた。


「あぁ、ただいま......マイハニー達よっ――」


 三人まとめて抱き付こうとした瞬間、フランの右フックがユウキの顎に命中して吹き飛び、再び意識を失った。

 下心丸出しなのがいけない。




 意識が戻ると顎と肩の痛みで飛び起きる。

 再度、抱き付こうと思ったが、殴られた記憶がフラッシュバックしたお陰で我に返った。


 起き上がったユウキを見て、嬉しそうに「ユウキー!」と飛び掛かってきた。

 別な意味でユウキも嬉しそうだが、フランと目が合うと身体が凍り付いた。


 その後、死の世界について語り、レイナは興味津々に聞いている。

 自慢げに語るユウキに呆れた表情を浮かべるミシュラが口を開いた。


「お前は本当に死んでいたのだぞ。少しは危機感を持ったらどうなんだ」


「やっぱり死んでたんですね。でも、良かったー! 生き返れて」


「私も賭けだったよ。君の生きたいという意志が余程強くない限り、蘇生は不可能だったからね」


 「そりゃそうだ」と言おうとしたが、ミシュラが言葉を続ける。


「二度はないよ。この術は暫く使えん。全く、人を勝手に鑑定するんじゃないよ。鑑定対策に罠を仕掛けているのは私だけじゃないからな? これからは気を付けて使え。それに被害者が加害者を助けて礼の一つも言えないのか? 悪いことをしたり、良いことをしてもらったら共通で『ありがとうございます』だろ? お前は色々抜けすぎだ。自分でわかっているのか?」


「――」


 長々とマシンガントークならぬ説教を受けて、ガクリと項垂れる。

 返す言葉も御座いませんとは、この事を言うのだろう。


「すいません......後、助けてくれてありがとうございます」


 深々と頭を下げて謝罪と感謝を述べた。

 反省するユウキの姿勢に「うんうん」と満足そうに頷く。

 ミシュラふと何かを思い出したように「あ、そうだ」と言い、


「私を鑑定したってことは、私が吸血鬼(ヴァンパイア)なのもバレたか」


「「「――ッ!」」」


 吸血鬼(ヴァンパイア)という言葉に全員が驚きと同時に身構える。

 最初、鎌を突き立てられた時のような緊張感が一同に走る。


「おいおい、待ってくれよ。吸血鬼全員が人を襲うわけじゃないからな? 貴族をやっている奴もいれば、美味しい作物を育てて人と一緒に食卓を囲む者もいるんだ。一部の吸血鬼が人を襲うせいで偏見を持たれているだけなんだよ」


 頭を抱えて弁明する。

 言われてみれば納得する部分が多くある。

 人を襲って食うような吸血鬼ならば、既に三人の命はない。

 ここまで強い力を持っていて、ユウキ達に危害を加えていないだけでなく、無礼に値する事をやっていたにも関わらず、自業自得で死をさ迷っていたユウキを助けたのだから。


 三人は武器をおろした。


「えぇー! 警戒心解くのはやー!」


 武器をおろした事に目を開いて驚く。

 仮面を被っていた時と人格が違いすぎて、別人みたいに今のミシュラはハイテンションだ。


 フランが溜め息一つ吐いて、


「構えても無駄って事だ。戦えば我らに命はない。敵意がないと表明した、そなたを信じる他ないってことだ。二人の考えはどうか知らんがな」


「なるほど!」


 手をポンっと叩く。

 ユウキは命の恩人と仲間に引き入れたい欲望で武器をおさめ、レイナはガールズトークがしたいのだろう。

 ミシュラが付けているアクセサリーに興味津々だ。


 場の流れを読み、ユウキは交渉に入る。


「突然ですが、ミシュラさん。貴女の強さと自分の弱さをわかってる上での相談なんですが、内容に関しては信じて貰えるかわかりません」


「ん、なんだ?」


「俺、未来を救う為に旅をする事になったんです。でも、俺は弱いです。だから力を――」


「すまない、断る」


 話を遮られて拒否されてしまった。

 ミシュラの表情を見るからにおちょくられて断ったというより、別件な様子だ。


「私も目的があるんだ。お前と同じくらい大事な事がな。力になってやりたいが、それは出来ない」


「――」


 ズーンとひどく落ち込む姿のユウキを見て苦笑する。

 ミシュラは一言付け加えた。


「少しの間だけなら力になろう? それでダメか?」


「お、お願いします!」


 先程の落ち込みっぷりから一転、パァーっと目をキラキラさせているユウキがツボにハマり腹を抱えて笑っている。

 ツボに入ったのはミシュラだけでなく、レイナも同様。

 フランは、


「やめろ。気持ち悪い」


 ユウキに対しては常に辛口であった。

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