第12話 レジェンド級と検証スタート
初めて目にする『チートスキル』に一同は未だに理解が追い付いていない。
スキルの派手派手しさは凄まじいものだったが、演出で比較するとエンペラー級の魔法と大差はない。
魔法には威力や範囲によってランクが定められている。
一番下がノーマルで次にシルバー、ゴールド、プラチナ、マジカル、エンペラー、ファイナル、そして最後にレジェンド級である。
因みにユウキの両親はファイナル級で父だけがレジェンド級に近い人物と言われていた。
エンペラー級の威力だけでも十分すぎるほど強く、小規模の王国程度なら壊滅出来るレベルだが、三人が驚愕している点はそこではない。
見たこともない威力。
そして、自分達の魔力が何千、何万倍に増えたとしても相殺不可と断言できる程に計り知れないくらいの魔力。
まさに文献に書かれているレジェンド級そのものではないかと。
ミシュラだけが落ち着きを取り戻し、
「私はエンペラー級まで扱える。ファイナル級の使い手も見たことはあるが、魔力と威力がはっきり言って桁違いすぎる」
ミシュラの説明にガクリと落ち込む。
どうやら自分のスキルがファイナル級に届いていなかったと勘違いをしてショックを受けているのだろう。
落ち込むユウキに「逆だ」とミシュラが補足を加えると表情が一瞬でパァーと明るくなった。
現金な奴である。
「――ってことは俺のスキルってレジェンド級なんですか?」
「断言は出来ないが、おそらくそうだろう。私が今まで見てきた奴等全員の魔力を足しても相殺は無理だ。発動すればどんな奴でも確実に仕留められると思えるレベルだよ。無論、私でもそれを食らえば兎と同様、生前の肉体は何も残らず木に生まれ変わるんじゃないかな。仮に今の魔力が数万倍になろうとも結果は変わらないと思うよ」
『チートスキル』のぶっ壊れ性能を聞いてユウキは固まった。
条件さえ満たせば誰だろうと倒せる代物。
圧倒的な力を持っているミシュラでさえ仕留められるスキルを自分が持っている事にユウキは「ぱねぇ」と驚いている。
「スキルの発動条件は多分わかったよ」
「な、なんですか?」
「観察した考察から察するに、血が流れるくらいで、傷口の深さは指二本分くらいあれば発動出来ると思うよ」
ユウキは首を傾げる。
こんな単純に発動出来るものなのか、疑問に思っている。
「魔力の流れを見るからに発動条件はそんなものだと思うよ。なんなら他の魔物で試すかい?」
ユウキは頷いた。
発動条件がそれだけであるなら本当に『チートスキル』だと思っている。
皆の驚いた反応が忘れられないのか優越感に浸って「デヘヘ」と笑う。
ユウキの表情が視界に入ったフランが我に返り、
「その顔やめろ、気持ち悪い」
フランにしかめっ面で言われて涙目になる。
美人にディスられるのに弱いユウキであった。
みんなが落ち着いた頃に引き続き森の奥を探索開始した。
ミシュラの言うことが正しいか検証をするために魔物を探している。
「こういう時に限って出くわしたい時に出ないもんなんだよな」
ぼやくユウキに一行は苦笑する。
探索開始から一分も経っていない。
根をあげる早さはレジェンド級だろうと皆、ひしひしと感じただろう。
が、意外とすぐに出くわした。
大きな岩陰と草陰の隙間から細い尻尾が見える。
「出た......――ちょ、デカッ!」
のそのそとこちらへ身体を向ける。
なんと本体は巨大な岩の山であった。
全長八メートルはあり、顔も岩のようにごつい。
こちらへ向き、ギロリとユウキ達を睨む。
若干、冷や汗をかき始めたユウキを見てフランがため息をつく。
「ユウキ、ビビることはない。ジャイアントロックリザードだ。見た目の割にそこまで硬くはない。動きも鈍いから狩るのは楽だが、生命力だけはかなりしぶとい」
フランの解説を聞き「うんうん」と頷く。
情報を知ったユウキはいつもの調子に戻った。
やる気満々な姿勢を見て、喜怒哀楽に近いほど感情がコロコロ変わる姿を見てレイナとミシュラはクスクスと笑う。
「さぁ! みんな検証スタートしますよ!」
うざいくらいテンション急上昇するユウキはジャイアントロックリザードを指差す。
レイナが弓を構えて、矢の先端から渦が水しぶきをあげ始める。
水属性を矢に付与しているのだろう。
狙いを右腕に定めて放ち、見事命中した。
矢は貫通して地面にサクッと刺さって、ジャイアントロックリザードが鳴き叫ぶ。
「ユウキ君、いけそう?」
レイナの弓術に見惚れていたがミシュラの一言で鑑定を始める。
ユウキは焦点をジャイアントロックリザードに合わせて鑑定をした。
名前:ジャイアントロックリザード
LV:7
種族:爬虫類
性別:♂
武器:爪
属性:土
ここまでは兎との戦いと同じ要領である。
条件を満たしていれば、同じように発動可と情報が入ってくるに違いない。
もし、条件に達していなければどうなるのか、ユウキは考えてしまう。
頭に情報が流れてこなければダメなのか。
『宿り木の弾丸』のタイミングがわからず、もどかしくなっていると、
チートスキル:『宿り木の弾丸ラピットグロウ』......ジャイアントロックリザードの右腕傷口のみ発動可。
――きたっ!
とりあえず余計な事を考えるのをやめて、右腕の傷口に狙いを定める。
装填した弾が植物弾なのを確認して、発砲した。
傷口に光が飲み込まれていき、葉が顔を出した。
すると、
――ゴォオオオオ
「きゃああああ」
「レイナッ!」
兎に放った時とは比較にならないくらい葉が急成長して木になっていく。
周囲の事などお構いなしに暴走し、暴れ狂う木の枝等の風圧が衝撃波となって当り散らす。
爆風に巻き込まれかけたレイナはフランの『瞬足』による救出で回避出来た。
元々、足の速いユウキとミシュラは避難済みでスキルの様子をうかがっている。
「こ、これが俺のスキルなんて」
バラバラになり、木の栄養となっていくジャイアントロックリザードを眺めて呆気にとられる。
木の成長が止まり、兎の時の倍にもなる巨木を見上げて皆固まる。
どんなに弱い相手でも、強い相手でも発動させしてしまえば同じ様に命が散るのだと。
ミシュラが『宿り木の弾丸』の威力はレジェンド級というのも頷ける。
使っている自分が恐ろしくなるほど別次元のスキルなのだとユウキは理解した。
ふと最悪の状況を考えた。
もし、発動可が味方にも出て間違って当たってしまったらと。
間違いなく視線の先にある魔物同様、木に変わり果て死んでいくだろう。
それに近くに味方がいた場合、巻き込む可能性も否定できない。
迂闊に使えるような代物ではない事をユウキは学んだ。
「......これ考えて使わないと不味いですね」
当たり前だと言わんばかりに全員が強く頷いた。
巻き込まれる側からすればたまったものではない。
「しかし、想像以上だな。観察しても発動後の仕組みが理解出来ないよ」
うーん......と顎に手をあててミシュラは考え込んだ。
何故、ユウキの少ない魔力総量であれほどの威力と魔力が溢れかえるのか。
謎に包まれるチートスキル、『宿り木の弾丸』に一同は興味津々だ。
「ユウキ、もう一体くらいいくか?」
「いくー!」
フランがもう一度見せろと言わんばかりの表情で問うが、ユウキが返事をする前にレイナがノリノリで手を挙げた。
発動条件の可不可を判別したいのもあってユウキは頷いた。
巻き込まれて危なかったのに一番乗り気のレイナを見て命知らずもいいところだとユウキは思ったに違いない。
果たして、『宿り木の弾丸』の詳細を解明出来るのだろうか。
再び、森の奥を探索する一行であった。




