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仮想世界のフォークロア  作者: 黒川零次&同居人
12/15

◇マギテクス

 ……昨日、あんなことがあったのになぜだろう。

 大広間の食卓を囲む中に。


「なんでいるんですか」

「今日は三月の二十九日」

「はい?」

「分かるか? 卒業式直後に……の仮想空間を攻めて、陽動だか何だか知らんがあの学生……いや、卒業生どもをまとめてお先真っ暗にして、終わったと思えばデストロイングエンジェル相手に単機で交戦、アーサーシステムズにアカモートシステムズにアガートラーム! 分かるか? 一国の戦力並みのやつらを相手にオーバーワーク。休みとは何だろうなぁ?」

「…………、マジデスカ?」


 学生のやることじゃねぇ!

 企業の戦力は保安部隊って名目で置かれてるけど、システムズとつけば仮想開発に秀でた企業。当然お抱えの傭兵だとかもいるし最新鋭機ばかり(桐姉ぇから聞いた) 。

 インダストリーとつけば……まあ俺が知ってることがないけど、こっちもたぶんお抱えの傭兵がいるし、使用機体はニュースとかで見た限りは軍用機ベース……というかそれのデチューンモデル。


「コールサイン・スコール、少々手伝え」

「……蒼とバディ組むことになってる。ついでにフェンリルの追っ手をなんとかしたいし」


 ふぇ、フェンリル? 

 機体名じゃないのか?


「あのー……フェンリルって?」

「RC-fenrirを仮想の主戦力とする最強の傭兵集団……って言えばいい訳か?」

「むしろ個人で予備隊扱いできる化け物の集まりという方が正解に……」


 ぞわりと背筋に悪寒が……。

 俺と同じように目の前の男子二人もぶるっと震えて、ギチギチト振り返って寮の外に目を向けた。


「……囲まれた訳か」

「……逃げられんぞ、これは」

「一体なんなんですか?」

「フェンリルの女性部隊」

「どうする? 自衛隊連れてきても返り討ちにするようなやつらだぞ」


 何言ってんだこの人らは。

 なんて思っている間に寮の外で動き回る人影が配置についたのか……なんか、ハンターに狙われる獣の気分?


「おい、アキ」

「なんだよ雅也? どうか……あぁ」


 みんなお盆ごと食べ物を抱えて俺たちの、正確にはあの二人から遠ざかっている。

 うん、これ突入してくるってことだよねぇ!


「鈴那、スモークとスタン、どっちならいい」

「どっちもダメよ!」


 怒鳴り声に合わせてガラスをぶち破って……なんてことはなく丁寧に窓を開けて銃で武装した少女たちがなだれ込んでくる。

 そう、非現実の一部である本物の銃が。


「…………、」

「う、うぉいアキ? これぇなんかまずくね?」


 まずいの前に警察じゃなくて軍隊を呼びたいです。


「しゃーない」

「ユキがいる以上魔法が通用しない」

「……だった、な」


 ◇◇◇


 春休み半ばの空には――――純白のキノコ雲が立ち昇っていた。


「……な、なあ、あれって魔法だよな?」

「……魔法以外になんて言うんだよあれ?」


 腕を振るうだけで炎が、雷が、氷が飛び交いゲームでしか見たことのない召喚獣的なものが暴れ狂い、終いには極小規模核爆発。

 なぁ、俺はあれを魔法以外でなんて言えばいいんだ?

 小さな火炎放射器? 超高出力スタンガン? 冷却スプレー? 遺伝子操作したキメラ?

 どれもこれも今の技術では作ることが可能。


「クラークの法則を知っているか? 行き過ぎた科学は魔法と区別がつかないとかなんとか」

「そんなぼろぼろの姿で言われてもな」

「そうだぜハーレム野郎! つか一人寄越せ! せめてお触りだけで――ごぶっ」


 スコールのハイキックにより雅也、一撃で撃沈。

 余計なことを言うからこうなるのに、なんで学習しないかな。

 人間は学習する生き物だというのに。


「あの、頭蹴ってましたけど大丈夫ですかね、うちの変態バカは」


 念のためね?


「あー……まあ脳震盪で……、でもあー……戦闘慣れしたやつにだからなぁ……」

「え、もしかしてまずい?」

「……たぶん大丈夫だ。後遺症が出るかもしれんが大丈夫……なはずだ」


 早口で言われてその内容! 

 無茶苦茶信用ならないんですが!


「おい雅也! 起きろ雅也! 雅也!」

「……やりすぎた、か?」


 えーっとこういうときってどうするんだっけ?

 揺らさずに気道を塞がない姿勢にして、えーとそれでそれでそれで。


「お、ちょうどいいところに来たな、那岐なぎ


 足を引っかけて転ばすような音が聞こえ、咄嗟によけると雅也の顔にぽゆんと。


「む? この感触はおっぱい、おぱーい!!」


 完全に伸びていたはずの変態はいきなり腕を伸ばして顔面に覆いかぶさった女の子のそれをがっちりと掴んで、


「この――――変態がぁぁぁぁぁぁっ!!」


 次の瞬間、俺は初めてその音を聞いた。

 絶対に人の蹴りでは出せない音、鋭い刃で空気を切り裂く音とダイナマイトを爆発させたような音を混ぜたそれを。


「ぶぉっっっほるほわぁぁぁぁあああああっっ!!」


 そしてなんと表現していいのか分からない叫びを上げて吹っ飛んでいった。

 これまた俺は初めて現実リアルで人が蹴りで人を吹っ飛ばし、川にぶち込むという絵を見ることができた。

 雅也、いまのはお前が悪い。

 撃沈されてピクピクしながらどんぶらこと流されてしまってくれ。

 ま、大丈夫だろ。

 仰向けで浮かんでいるし、ここの川はたいして流れも速くないし。

 海に出ても確かこの川の出口は穏やかな流れだったはずだ……ただし、PMCの敷地がかなり近いから下手すれば不法侵入でそのまま射殺とかな……。


「大丈夫だろうな!?」


 スコールは即座に携帯を取り出して……今頃使ってるやつはいないぞ……ガラケー。


「スコールだ、たぶん一人流れていくから拾え…………あぁ? 学生だよ学生、桜都の。リナがいるだろう、適当にやっとけ」

「どこにお電話を?」

「三大勢力の一角に」


 ……この人はなんでそんなところに知り合いがいるのでしょうか?

 三大勢力と言えばこの国、桜都国が抱える傭兵集団のこと。

 外縁の守護者、花の護り手、白き乙女。

 桜都が保有する戦力のほとんどが傭兵。

 お金持ちの国が相手だとまず傭兵がいなくなるので負け確定……。


「まあこれで」

「おいこらアンタ! あたしの胸はそんなに安くはないんだけど?」

「……毎度毎度だな。大会が近いし、練習相手になる、それでどうだ?」

『狼谷影秋、先日の追試結果が合格点に達していません。補習、及び再追試を行いますのでただちに教室まで来なさい』


 突如、学園を管理するAIからの音声が脳内に響いた。


「うげっ……」

「チッ……」


 目の前を見ればガラケーのディスプレイ見ながら嫌な顔をしているスコールがいた。


「あの、あなたもですか」

「あぁ……講義も試験も全部エスケープしたからな、今日だけで……三十件の呼び出しが入ってる」


 ……おい?

 この人なんのために学園に行っているんだ?

 うちのさぼり姉さんよりも酷くないか?

 とか考えているとスコールの肩に後ろから手が当てられた。


「えっと……」

「コードは蒼月だったな。呼び出しに応じないから連れて来いと言われたか」

「うん。えっと、名前……は?」

「本名はほとんど出してない、コールで呼べ、スコールだ」

「分かった。じゃあスコール、一緒に来て。来てくれないと私が怒られるから」

「はいはい……くそっ、電子工学科がなんで機械工学系の補習を……」


 学科としては本当に別系統じゃないか。

 電子工学と機械工学って方向性が違いすぎる。

 せめて仮想工学科なら分かる。

 内容的に電気、電子、仮想系はやることがほとんど同じだ。


『狼谷影秋、先日の追試結果が合格点に達していません。補習、及び再追試を行いますのでただちに教室まで来なさい』


 ……いかんな、無視し続けると先生に何言われるやら。


 ◇◇◇


 学園につくなり俺を出迎えたのは洪水だった。

 別に屋上の貯水タンクが爆発したとか、プールの水道設備が壊れたとかじゃなくいきなり空から滝のように降った水が洪水になって――


「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 当然よけることなどできずに押し流された。

 舗装された学園のキャンパスは卸し金のように俺の腕を擦り、敷地外に押し出されてようやく洪水から解放された。


「げほっげほっ――魔法科の連中……ふざけるなぁぁぁ!!」


 外国の学校でよく変な学科があるだろう。

 某映画に出てきた言語を専門にするようなところだってある。

 それと同じような……というのもあれか。


「おう、すまんすまん一年。制御プログラムの座標系ミスった」


 胸に付けた科章の色で先輩だとは分かるが。


「殺す気ですか!? ミスったで済まされることじゃないでしょう!?」


 かなりの水圧だった。

 下手しなくてもどこかにぶつかって死んだかもしれない。

 もしかしなくても溺死、窒息死、圧死、ショック死していたかもしれない。


「いやぁ、新型デバイスはプログラミングの言語とか全部変わってるから。うん、ごめんね」

「…………、」

「そんなに睨むなよ一年。アセンブリでコード書ければ誰にだってでき」

「ないからあんたら魔法科って呼ばれてんでしょうが! さっきも聞いたけどいきすぎた科学は魔法と区別できない。俺たちにはそうなんですよ! 第二世代型ナノマシンを制御してあたかも魔法ようにとかって、そのプログラムが超絶ムズイからウィザードとかいう魔法使い的な呼ばれ方してるんでしょう!?」

「だなぁ。まあ一つ訂正としては、なにもプログラミングで使うのは旧世代の言語であるアセンブリだけじゃないからな?」

「はぁそうですか……」


 仮想工学科の俺だ。

 ちょっとくらいの簡単なものなら書いて読めるけどさ。

 ……そういえば原始的なプログラムほど処理速度が速かったな、機械が理解しやすい代わりに人が理解しづらいって難点があるが。

 アセンブリ言語とか俺は全然書けないがすごい速いらしい。

 レジスタ使ってやり取りするからだとかなんだとかいうけどよく分からない。


『狼谷! 貴様よほど留年したいらしいな。今月中に点が取れなかったらまた一年をやりなおしてもらうぞ』

『す、すぐに行きますから留年だけは勘弁願います!』


 シェルの大会控えて留年の危機?

 冗談きついよもぉー。

アセンブリ言語

ここテストに出ますよー 最近はどうなのか知りませんが

Assembly



B言語C言語D言語とかいろいろありますが、とりあえずややこしいので電子工学科、電気工学科その他電子電気系の学科の方はこれを理解できる変態だということを覚えておいてください

ちなみに学生の時点で四つ程度の言語を使いこなせるようです

最近はどうなのか知りませんが

それにしてもアセンブリ言語ってその意味でアセンブラって呼ばれたりするからちょっとどころではなくややこしい、話の流れからアセンブラがアセンブリを示すのか変換するプログラムを示すのかはたまた……とにかくプログラムは簡単なものは簡単ですが面倒なものは上が見えません

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