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春風は魔女の名をまだ知らない  作者: カエデ
第2章 魔女の常識、学園の非常識

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第4話 慣れればできる

本作は全話執筆済みです。

完結まで毎日1話ずつ更新する予定ですので、安心してお楽しみください。

 統一暦19年4月6日月曜日


 イリスとエリーゼは実習室に向かっていた。基礎魔法の授業だった。


「基礎魔法の授業、退屈なんだよね~。」

「先生に聞かれましたら、怒られますよ?」

「それはそうだけどさ~。やっぱり退屈なものは退屈!」

「まぁ、あなたの魔法の腕を聞く限りは、必要なさそうですものね。」

「えへへ、まあ、魔法には自信あるから!とはいえ、必修だからさぼるわけにはいかないし…。」

「まじめなことは、いいことだと思いますわ。」

「いえーい!褒められた~。」

「…授業をさぼらないことは当たり前のことですわよ。」

「…まあね。」


 実習室について席に座りしばらく待っていると、授業開始のチャイムが鳴った。


「それでは基礎魔法の授業を始めてまいります。基礎魔法を担当します、フローラ・フォン・アイヒェンフェルトです。まず皆さん、教科書と実習用の魔石があることを確認してください。魔石は3種類置いてあります、足りない場合は今すぐ申し出てください。」


 二人は机に3つの魔石が置いてあることを確認した。


「うん、3種類あるね。」

「3種類ということは、熱、光、運動エネルギーに適した魔石かしら。」

「んーと、見る限りそうだね。」


「さて皆さん、基礎魔法の授業は応用魔法と違って、つまらないと思っていらっしゃる方もいるでしょう。ですが、基礎が疎かでは優れた魔法は使えません。ですので、魔法系を履修している方は特に、基礎魔法をおろそかにしないよう気を付けてください。

 期末試験では、実技試験も行います。基礎魔法の訓練は、一朝一夕では伸びませんので、授業がないときでも安全な範囲で練習をするようにしてください。」


 そういうと、板書を書き始める。


「魔石の定義ですが、魔力を貯められる石のことを総称して呼ぶ場合と、人工的なものを指す場合の2通りがあります。今回の授業で用いるのは後者、人工的に作られた魔石です。

 魔石の使い道は皆さんもご存じのとおり、魔道具に魔力を供給することが基本となります。また、自らの魔力だけでは魔力が足りない魔法を行使する際の、外部動力として使う場合もあります。」


「それでは魔力とは何か、という話になります。端的に言ってしまえば、動物が体内で生成するエネルギーのことです。

 人間に限らず、一部の動物も魔力を生成することができます。そのような動物を魔獣と呼びます。定義の方向を間違えないよう気を付けてください、魔獣だから魔力を生成できるわけではありません。魔力を生成できるから、魔獣と呼ばれます。ですので当然、魔力を持たない魔獣は存在しません。」


(…やっぱり退屈。そのくらい、小学校で習ってるもん。)


「さて、魔力の使い方ですが大きく3つに分かれます。まず1つ目、直接エネルギーに変換する方法。例えばこのように。」


 そういうとフローラは指先に光をともした。


「これが1つ目です。わかりやすいように、光に変換しました。さて2つ目です、術式を通して物理現象などを引き起こすものです。これについては従来、属性で区分され、それぞれ異なる魔法体系として扱われてきました。しかし現在の学説、つまり統一魔法理論では、物理現象を引き起こすという点で同一であるとされています。

 最後に3つ目は、直接魔力を物質に変換するものです。これについては、高度な技術が必要とされますので授業内では基本的に扱いません。」


 フローラは2つのグラスを取り出すと、その中に魔法を使って水を入れた。片方はこぼれる寸前まで行くが、もう片方は少ししか入らなかった。


「皆さんに見てもらった通り、同じ水を生成する魔法でも、術式で凝縮させるのか、直接水を生み出すかによって、結果は異なってきます。今、私は同じ量の魔力を使って水を注ぎました。満タンな方が術式を使って凝縮させたもの、ほとんど入っていない方が直接水を生み出したものです。

 見てもらって分かる通り、両者の効率は大きく異なります。後者の方が断然効率は悪いため、使われることはほとんどありません。

 それでは実習に入っていきましょう。まずは手元の魔石に魔力を入れてください。それと、グラスに水を入れるようにしてください。」

「それじゃあエリーゼ、水の方お願い。」

「わかったわ。」


 エリーゼはそういうと、教室の横に並んでいる洗面台で水を2つのグラスに入れた。その間に、イリスは魔石に魔力を充填した。


「さて、まずはそれぞれの魔石を使って光を起こしてください。それぞれの魔石は、貯められる魔力の量が同じになっていますが、変換効率が異なりますので、光り方の違いで違いがわかると思います。」


 二人はそれぞれの魔石を取って、光を起こした。1つだけは少しまぶしいくらいまで光るが、残り2つは少ししか光らなかった。しばらく光らせると、どれも光は消えた。


「それでは次に、直接魔力をエネルギーに変換することをやりましょう。グラスに注いでもらった水に熱を加えて加熱してください。温度計があると思いますので、60度を目安に熱を維持してください。」


 まずはエリーゼの番だった。だんだんと温度計が表示する温度は上がっていき、60度前後で数値が安定していた。61度を示し魔力を少なくすると今度は59度に下がってしまう。60度ぴったりに合わせるのに苦戦しているようだったので、イリスは簡単なコツを教えた。すると、先ほどよりも水温は安定していった。

 次はイリスの番だった。イリスはグラスの水を温めると、60度ぴったりに合わせた。


「…さすが、魔法が得意と言ってらしただけありますわね。」

「それほどでもないよ~。これくらいなら、慣れればできるようになるよ。私は魔法、昔からよく使っていたから慣れてるだけ。」

「それでは、今度練習に付き合ってくださるかしら。」

「うん、全然いいよ!どれだけでも付き合うよ。」

「それは頼もしいことですわ。」


 実習が一通り終わると、再びフローラはしゃべり始めた。


「水温の維持は、地味に見えますが魔法の基礎訓練にはとても適しています。各自、普段から練習をするようにしてください。水温の維持の練習は、魔法の精度に直結します。

 特に、大型の魔法などでは少しのミスが命取りになる場合もあります。ですので、様々な魔法を練習するだけではなく、このような基礎訓練も欠かさないようにしてください。

 さてここまでで何か質問がある人はいますか?」


(やっぱり退屈だよ。基礎訓練が重要なのはわかるけど…。水温の維持くらいできるって。)


 特にだれも手を上げない。その様子を見ると、再びフローラは話していった。授業はまだしばらく続ていくのだった。

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