閑話
本作は全話執筆済みです。
完結まで毎日1話ずつ更新する予定ですので、安心してお楽しみください。
統一暦19年4月4日土曜日
エリカは、イリスを自室に招いていた。幸い、同室の生徒は外出している。せっかく同じ学校に入学したのだから、聞きたいことは山ほどあった。
「ルームメイトはお出かけ?」
「えぇ、そうですわ。せっかく同じ学校に入学したわけですし、ぜひ宮中伯様のお話をお伺いしたくて。」
「宮中伯様って呼び方やめてよ~。そっちこそ、アルテンブルク王国の王女様でしょ?」
「まあ、それもそうですわね。では、イリスと呼んでいいかしら?わたくしのことは、エリカで構いませんこと。」
「わかったよ、エリカ。」
そういいながら、エリカは紅茶を入れていた。
「それで、いくつか気になっていることがあるのですけれど、あなたのことですから、第二大学に入るとてっきり思っていまして。あなた、いつも研究ばかりで社交界には出てきませんでしょ?」
「あ、それはね、入試の日に風邪ひいちゃって受けられなかったの。」
「それは残念でしたわね。」
「第二大学って一回しか試験ないでしょ?だから、滑り止めで出願してた第一大学に来たってわけ。」
「あなたらしい言い方ですわね。」
「まあ、そのおかげでエリーゼと仲良くなれたから、これはこれでよかったと思うよ。」
「エリーゼ令嬢と言いますと、ヴァイセンベルク侯爵家の?」
「うん、私のルームメイト。」
「そうでしたのね。」
「それで、いくつかって言ってたけど、ほかには何が聞きたいの?」
「あなた、入学式で徽章はつけていらしたの?」
イリスは完全に黙り込んだ。公式行事においては徽章の着用義務が定められており、入学式も当然その義務があった。
「着用義務は、当然ご存じでいらっしゃるでしょ?」
「あー…うん、知ってる。だから入学式の後、先生に怒られたよ。」
「それは当然ですわ。どうしてつけていらっしゃらなかったの?」
「だって、宮中伯ってばれたら、距離置かれそうだったもん。中学の時、宮中伯になってから友達、よそよそしくなっちゃったから。」
「そういうことでしたのね。」
「うん、私はただのイリスとして扱ってほしいから。」
「そうはおっしゃるけど、私以外にも何人かはあなたのことを知っているはずでは?」
「たぶんそうだと思うよ。パーティーとか公式行事、必要最低限は出てたから。」
「エリーゼ令嬢はご存じで?」
「ん~多分知らない。」
「いつまで隠し通せるのかしらね。」
「まぁ、いつかはばれると思うよ。」
ティーポットに入っている紅茶も少しずつ減っていくのだった。




