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『東海道線の心読師(マインド・レコーダー)──京都発東京行の迷宮列車──』  作者: 夜名


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22/30

第22話:汽車の窓に映る首都、明かされる最終局面

タゴト、ガタゴトと、重厚な鉄の車輪が鉄レールを叩く規則正しい音が、どこまでも続くかのように客車の中へ響き渡っていた。

国府津の修羅場をどうにか切り抜け、再び東海道線の座席に身を沈めた神山蒼生と久楽蓮の足元には、あの革のトランクがしっかりと置かれている。鞄のなかに眠る機密書類の重みが、これまでの過酷な旅路のすべてを物語っていた。

窓の外に広がる景色は、これまでの相模の海原や鬱蒼とした山々から一変し、近代化の波が押し寄せるレンガ造りの建物や、黒々と広がる家並みへと変わりつつあった。行き交う人々の服装も、地方のそれとは異なり、どこか慌ただしく、かつ洗練された都会の雰囲気をまとっている。

「……東京、ですね」

蓮は窓ガラスに自分のうっすらと映る顔を見つめながら、小さく呟いた。

京都を発ち、名古屋、浜松、箱根、小田原、平塚、そして先ほどの国府津に至るまで、二人は幾度となく死線を潜り抜け、心身ともにすり減らしながらここまでたどり着いた。その長い旅の終わりが近づいている実感が、胸の奥で静かな波紋を広げている。

蒼生は懐から真鍮の時計を取り出し、パチンと小気味よい音を立てて蓋を開けた。文字盤の上を滑る針は、運命の時間を正確に刻み続けている。

「ああ、そうだ。いよいよ終着点だね、蓮」

蒼生は時計をしまうと、インバネスコートのポケットに手を突っ込み、まっすぐ前を見据えた。その横顔には、かつての軽口を叩いていた頃の余裕だけでなく、組織「黄昏」の黒幕を追い詰めるという、研ぎ澄まされた探偵としての覚悟が満ちていた。

「東京ステーションに到着した瞬間から、向こうも私たちの動きを察知して全力で潰しにかかってくるだろう。あのトランクに隠された計画――首都の鉄道網を麻痺させるテロの全貌を暴くには、私たち自身が最大の標的になる覚悟が必要だ」

蓮は蒼生の言葉をしっかりと受け止め、力強くうなずいた。

彼女は自分のこめかみにそっと指を当ててみた。不思議と、これまでの旅で頭をかきむしるほど聞こえていた人々の「心のノイズ」が、この東京に近づくにつれて奇妙なほどクリアに、そして一つ一つの意志として輪郭を帯びて聞こえてくるような気がした。首都に集う人々の思惑、うごめく悪意、そして組織の影。そのすべてが、まもなく一つの巨大な焦点へと収束しようとしている。

「怖くはありません」

蓮はまっすぐな瞳で蒼生を見つめ、静かに、しかし揺るぎない声で言った。

「京都からここまで、神山さんと一緒にたくさんの真実を暴いてきました。私のこの力も、あなたのその頭脳も、すべてはこの瞬間のためにあったのだと信じています」

その言葉を聞いた蒼生は、ふっといつもの鮮やかな笑みを浮かべ、しかしどこか優しさを帯びた声で答えた。

「ああ。頼もしい相棒を持ったものだね。……よし、ここまで来たんだ。最後くらい、華麗に謎を解き明かして、連中の野望を盛大に木端微塵に粉砕してやろうじゃないか」

汽罐車が東京駅への減速を知らせるように、長く、力強い汽笛を鳴り響かせた。

蒸気の白煙が窓の外を覆い尽くし、やがて列車はゆっくりとプラットホームのホームへと滑り込んでいく。

日本の中心、運命の東京ステーション。

すべての因縁に決着をつけるための最終幕のカーテンが、いま、音もなく開き始めようとしていた。

(※本作に登場する組織、事件、機密文書、およびスパイ工作に関する描写はすべてフィクションであり、実際の歴史上の出来事や実在の人物・団体とは一切関係ありません)

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