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腕輪

 レヴィはターオに戻ると、デナーリスにウェイロンがおやすみのキスをしてくれたことを自慢した。

「なんですって・・!!どうせ子供みたいな顔してウェイロン様に甘えたんでしょ。うぅ、私にはできないわ。」

盛大に悔しがるデナーリス相手に、ドヤ顔でおはようのキスもしてくれたと重ねて自慢する。


 ちなみにロイに言ったら「ハァ?お前、おやすみのキスで喜んでるとかガキかよ。うざっ。」とバカにされるのが目に見えているので、デナーリスに自慢したのだが、その後デナーリスから話を聞いたロイに結局バカにされることになった。それをリアムに訴えて、いつも通りの4人であった。


「腕輪ができた?」

「そう!私たちのお揃いの腕輪よ。」

デナーリスのミサも含め、精霊の庇護者たちの公務は数日前に全てを終えた。今は出発までの調整期間となっている。リアムやロイは訓練に励み、レヴィは部屋に引きこもりがちの中、デナーリスから声がかかった。


 4人で祭壇のある神殿関係者用の礼拝室に向かうと、入口には護衛が立ち、中では武具祭具室長と彼の部下数人が待ち構えていた。こういう時には大抵同席するウェイロン様は不在だ。今は出発前のもろもろのスケジュール調整に追われているらしい。

「出発までに間に合って良かったっす。さぁ、こちらにどうぞ。」

誘導されるまま女神像の前へ進むと、高級そうな小箱4箱と白い布で覆われた少し高さのある物が祭壇の上に並べられている。

「女神に感謝を捧げましょう。」

デナーリスが祭壇の前で祈りを捧げるのに合わせて、レヴィたちも跪いて感謝の祈りを捧げる。祈り終えると、待ってましたとばかりに武具祭具室長が祭壇前に近づいて来て、4人にケースを覗き込むように勧める。

「腕輪を納めるのに相応しいようにターオの伝統的な螺鈿細工の小箱をご用意させて頂きました。どうっすか?」

「なんかキラキラしてる、夜光るかも。」

「あー、すみません。光らないっすね。」

「ええー。」

「あっ、名前が刻まれてるわ。これが私のね。」

「へー、俺のはこれだ。」

「えっ、名前?どこどこ?」

「レヴィのはこれだ。」

「これ?俺の名前書いてない!」

「バーカ、飾り文字なんだよ。よく見てみろよ。ほら、レヴィって書いてるだろ。」

「・・書いてない。」

ケースにはそれぞれの名前を装飾した字体で刻まれている。それだけでもかなり美しい工芸品だが、肝心の代物はその中身だ。

「まぁまぁ。取り敢えず腕輪を確認して欲しいっす。」

武具祭具室長に促され、4人は慎重に螺鈿細工の箱を開けた。


「リシアンサスだ。」

真っ先にレヴィが腕輪の図柄に気づいて歓声を上げる。夜空に輝く星のような美しい皮に、リシアンサスのシルエットが大胆に刻まれている。刻まれたところだけが白く染色されており、黒い皮に散らばる煌めきを損なわない洗練されたデザインとなっている。女性的すぎることも男性的すぎることもなく、4人が腕輪を装着しても違和感がなかった。

「すっごく綺麗。」

デナーリスが左腕を少し掲げてうっとりと呟く。腕輪には同じ皮で作られたベルトもさりげなくつけられており、精霊の庇護者たちが成人後も調整できるように工夫されている。


「お揃いだ。」

えへへとレヴィが幼馴染たちを見回して言った。

「世界中でも私たち4人しか持っていない特別な腕輪ね。私たちの絆の証みたいなものだわ。」

すでに身寄りのないレヴィにとって、幼馴染たちは家族のような存在だが、デナーリスとロイとリアムは正真正銘の血縁関係でレヴィだけが違う。それを精霊の庇護者という特別な絆が補っている。特にデナーリスはレヴィが寂しい思いをしないようにと、ことあるごとに言葉にして伝えてくれる。

「うん。大事にする。」

儀礼用の正装に使うということで、腕輪は再びケースの中に収められた。当面は神殿が保管を請け負う。


「じゃあ、もう一ついいっすか?」

武具祭具室長が祭壇に並べられたもう一つの方の前に立ち、白い布に手をかける。

「どうぞご覧ください。ターマキリ様の遺物で製作したミニターマキリ様っす。」

バッと布が外され、カマキリのオブジェが現れる。

「・・!ターマキリさま、そっくりだ!」

木製の土台からつながるような形で忠実にターマキリが再現されており、黒い部分は精霊の遺物を生かした革張りで表現され、白い部分は着色されており人面カマキリぶりも精巧に表現されている。

中型犬ほどのサイズで迫力もあり、昆虫好きのレヴィは腕輪以上に興味津々に見回している。

「ターマキリ様はこういう御姿だったのね。」

精霊の地訪問で巨大カマキリを前に早々に撤収したデナーリスが感慨深そうに眺める。

「つぅか、カマキリのオブジェを精霊の皮で作っただけだろ。」

ロイが、もっともなことを言ったが武具祭具室長はそれには反応せず、職人の技術がどうだとか、白い部分には特殊な染料が使われているだの、あーだこーだ妙に細かく語った。


 リアムは礼儀として、デナーリスは元来の人の良さで、レヴィは目をキラキラさせて武具祭具室長の説明に聞き入るなか、ロイは室長の部下に「あの人なんか目がヤバくないっすか?隈もひどいし、だいぶキてませんか?」と話しかけていた。

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