第六話:夏休み前の終業式と、買い出しの帰り道
期末テストの焦りと重苦しい雰囲気をどうにか乗り越え、七月下旬。体育館のムッとする熱気の中で全校生徒が固唾を飲んで聞く「夏休み前・終業式」の校長の話が終わると、教室は一気に解放感と歓声に包まれた。明日から、待ちに待った長い夏休みが始まる。
「よっしゃあ、夏休みだーっ! 海行くぞお前ら!」
クラス中が浮き立つ中、俺は静かに荷物をまとめ、美術室へと向かった。
美術部では、秋の文化祭に向けた巨大な背景画の制作が、この夏休みを返上して始まろうとしていた。
「神宮寺くん、お疲れ様。これ、買い出しのリストなんだけど、午後から画材屋に行ってきてくれないかな?」
葵が手帳を差し出しながら頼んでくる。その横では、吹奏楽部のパート練習を終えたはずの奏多が、なぜか「美術部の買い出しの荷物持ちをしろと顧問に言われた」という何とも不自然な口実で、教室の入り口に突っ立っていた。
「なんだよ奏多、お前またサボりか?」
「さ、サボりじゃねえよ! 人手不足だって美術部の顧問に直々に頼まれたんだ!」
耳まで真っ赤にして必死に否定する奏多を見て、俺と葵は顔を見合わせて思わず吹き出した。
夏休みの強い日差しの下、絵の具やキャンバスを買いに行く道すがら、照りつける太陽を避けるように歩く二人は、少しずつ、けれど確実に距離を縮めていった。
俺の胸の奥で刻まれるタイムリミットの針が確実に進んでいることも、この瞬間ばかりは忘れさせてくれるほど、それは眩しい青春のひとコマだった。




