第十一話:残された遺書
救急車で総合病院へと緊急搬送されたものの、手遅れだった。神宮寺蒼輔の心臓は二度と動きに戻らなかった。
彼が学校の誰にも隠し通していた重い病気のこと、そして余命三ヶ月の宣告を受けていたという残酷な真実は、病院からの悲痛な連絡によって、初めて奏多や葵、そして莉子たち友人全員に知らされた。
誰もがその突然すぎる死を受け止められず、葬儀が終わり、静まり返った蒼輔の自室。
遺品整理をする母親に促され、彼の机の引き出しの最も奥から、友人たちの名前が丁寧に書かれた一通の白い封筒が見つかった。
表書きには『みんなへ』と記されていた。
震える手で封を切った奏多が、リビングの沈黙の中で手紙を読み上げていく。
『――これを読んでいるってことは、俺はもうこの世にいないんだと思う。みんな、病気を黙っていて本当にごめん。
葵へ。お前の描く青は、世界で一番綺麗だった。だから自分の絵を信じて、これからも描き続けてくれ。
奏多へ。お前のサックスは最高だ。葵を泣かせたら、空の上から俺が絶対に怒鳴り込んでやるからな。
そして、莉子をはじめ、みんなへ。
俺は友達がいなくて、一人で忘れ去られるのが怖かった。だから最後に、みんなと出会えて、たくさんの友達になれて、本当に幸せでした。
どうか泣かないで、笑って思い出してほしい。俺の人生は、みんなのおかげで最高に色鮮やかだったから』
手紙の最後には、いつもの少しおどけたサインと、満面の笑みを浮かべた蒼輔自身の自画像がクレヨンで描かれていた。
病気の苦しみも孤独も知らずに笑っていた彼らの優しさに触れ、その言葉の裏にある深い愛情を知ったとき、リビングルームで友人たちは声を殺して、崩れるように泣きじゃくるしかなかった。




