第十話:教室の崩壊と、救急車のサイレン
文化祭の熱気が冷めやらぬ翌週。月曜日の朝、冷たい秋風が吹き抜けるホームルームが始まる直前の教室。
「おっはよー、神宮寺!」
「おう、おはよう……って、どうした?」
いつものように教室に入ってきたクラスメイトに声を返そうとした瞬間、それまで視界の端でちらついていた世界が、一気に真っ黒な闇に塗りつぶされた。
「っ……!」
立っていられなくなるほどの激しい眩暈と痛みが脳髄を突き抜け、俺の身体は自分の意思とは無関係に、教壇の角に激しく打ちつけながら床へと崩れ落ちた。
「おい! 神宮寺っ……!?」
「嘘だろ、神宮寺くん……っ!?」
静かだった教室が一瞬でパニックの渦に飲み込まれる。葵の悲鳴が教室中に響き渡り、青ざめた顔で真っ先に駆け寄ってきた奏多が、震える手で俺の肩を必死に抱き起こした。
口元からとめどなく溢れ出た鮮血が、白いはずの制服のシャツを痛々しいほど赤く染めていく。
「しっかりしろ、神宮寺……! おい、誰か早く先生を呼べ! 救急車を……救急車を呼べよっ!!」
奏多の必死な叫び声が、遠くのトンネルの底から聞こえるように反響する。
ごめん、奏多。葵。最後まで病気を隠し通せなくてごめん。もっと一緒にいたかったよ。
急速に冷たくなっていく意識の中で、俺はみんなの泣きじゃくる顔を最期に焼き付けながら、静かに瞳を閉じた。
校庭の方から、ピーポー、ピーポーと、容赦のない救急車のサイレンの音が近づいてくるのが聞こえていた。




