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2085年の超AIをインプラントしたまま転生した元科学者令嬢、魔法文明世界で科学無双します!  作者: 垂水川


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8.改革のはじまり(3)

収穫祭当日。

公爵領領都バルディシュタットの中は人々の歓声と、エールがなみなみと注がれた木杯同士を打ち付ける祝いの音。

それに合わせたように吹き鳴らされる角笛木笛、吟遊詩人がおひねり目当てでかき鳴らすハープやリュート、そこに空になった酒樽を打ち鳴らす酔客たちの音で紡がれるコンダクター不在のカオスなオーケストラが演奏される。

そこにまるで歌劇のように織り交ぜられる領主夫妻を賛美する声。


「公爵様万歳!」


「慈悲深き貴婦人に栄光あれ」


「おい、あっちで吟遊詩人が最新の詩を披露するらしいぞ」


「何でも流行り病を未然に防いだ件を歌いあげてるらしいな」


「俺も昨日酒場で聞いたぜ。城に努める平民の子供の願いを聞き届け、同じ年頃の子供を持つ母としてその少年を助ける貴婦人様と、口では厳しいことを言いながら陰で支える公爵様の物語なんだってな」


「これはバルディシュタットの民としちゃ……」


「ああ、聞き流せないよな!」


今年の祭は二日も続き、城門前から見えるテラスから手を振る領主夫妻を一目見ようと領都住民たちが集まっているのを見てマルガレーテはこぼすように唇を開く。


「まるで元旦の明治神宮ね」


『口に出ているぞ。いや……その例えなら小間遣いやメイド達が耳をそばだてても何のことかわかるまいか。しかし凄いな、全領民の40%ほどが集まってる』


(思ったより上手くいった……いきすぎたわね。この国今まで誰も情報操作とかやってこなかったのかしら。領民が素直すぎてドン引きよ)


『メイド長経由で商人たちに噂が流れ、そこからは吟遊詩人にと。吟遊詩人というのはキミが知っている古い言葉でインフルエンサーというのかな。噂に尾ひれが付き、感動的なストーリーに仕上がっている』


(インフルエンサー……なんて、あんたも懐かしい言葉知ってるわねえ、レクシス)


『今やこの噂、王都や王宮の方まで伝わっているそうだ。口さがない文官や宮官、貴婦人の間まで大流行らしい』


(ちょっと、その噂どっから聞いたの?)


『城内働きの侍女やメイドが言っていたぞ。人間は自分が聞こうとしない音声は聞こえないのだな。全くもって便利なことだ。だが……』


(ん、なあに?)


『再度の確認となるが、本当にこれで良かったのか?あの成果はキミのものだ。キミが正当に評価されて然るべきだろう』


(あんたそういうところ本当にメイドインUSAよねえ。バリバリの実力主義社会の申し子って言ったところかしら。この際だから、貴族社会のパワーゲームっていうものがどういうものなのか詳しくデータを取るといいわ)



◇◇◇



収穫祭が終わって数日。

領主ライゼンボルグ・フォン・バルディアン執務机に肘をつき、両の手で自分の顔をおおっていた。

机の上には封蝋を解かれた一通の羊皮紙の召喚状。

内容は「流行り病を防ぎ慈悲深く領民を助け、その慈愛我が国の誉れとし王としてこの義に勲章を与えるものとする」とある。

手の隙間からチラリと見える王家の封蝋を確認し、彼は再度ため息を漏らした。


「はぁ……この領都だけで噂が終わってくれれば良かったのだが」


「そういうわけにもいきませんわよ」


「あの娘、やってくれおる……。こちらは手柄を譲られた身。下手に真実を表ざたにしようものなら……娘の成果をかすめ取った人非人と罵られかねない。おまけに……」


口に出したせいで実感が湧いてしまったのか、こめかみと胃に痛みを感じる。

眉間に深い皺を刻みつつ、ライゼンボルグは執務机の引き出しから紙束を取り出した。


「それは?」


「マルガレーテが書き記したあの新薬の作り方……その効果、有用性をまとめた報告書だ」


「まあ、面白いわ。ハーブにも魔法にも頼らないで……ふんふん、こっちはお化けの木。こっちは……え、青カビ!?あの子ったらそんな変な物から薬を作るだなんて……晩餐会できっと聞かれてしまうわ。どうしてこんな変な物から薬を作ろうと思いついたのですかって」


「全く……言い訳を考えるこっちの身にもなってもらいたいものだ」


「……で、どうするの?」


「王からの召喚だ。行かぬわけにはいくまい」


「それなら、あの子の奔放は……」


「多少目こぼしするしかあるまい……多少、だがな。はぁ……全く。デビュタントまでは分厚い毛皮でも被っていたのかあの娘は……」


ディートリヒは苦笑をこぼし、ライゼンボルグは諦めたように天を仰いだ。



◇◇◇



――翌日の夜。


「あはは、お父様もお母様もいない!口うるさい執事長もいない。あ~、超解放感~」


広いベッドを存分に使って転がりながら真里は上機嫌に笑い声を上げる。

騒ぐ真里を注意しそうな大人たちは今、まとめて屋敷を離れてしまっていた。

思わず馬車を見送った直後に自由だー!と叫んでしまうくらいには自由だ。


飛び跳ねるのもやろうと思ったが、前世のベッドのようにスプリングが聞いていないことを思い出して諦めた。


『超と付けてしまうのは平成生まれの古い習性か』


「うるさい、15の乙女に古いとか言うな。マジ卍なんですけど~」


『それも平成終盤に流行った古い言葉だとデータにある、いわゆる死語だ』


「いいの、この世界では最新なんだから。あ~たのし~!あはは!」


散々シーツに皺を作ったところでやっと動きを止める。

これだけはしゃいでも息切れしない若さも愉快でたまらなかった。


『で、どうやらキミの方向性はしっかり固まったようだな』


「ええ、最初はこの世界に科学文明の便利さや楽しさ美味しさを広げて、より豊かにしちゃおうと思ってただけなんだけど……」


『やはりそこは魔法か』


「そうね、まだ探求し足りない。私の常識は私の常識。この世界の常識はこの世界の常識……」


『郷に入っては郷に従え。日本に古くから伝わる慣用句……コトワザだったな』


「ええ、そうよ。その土地に入ったらその土地ならではの習わしにその身を置け。島国日本らしい風習よね。でも私はこう思うの。その土地の常識がどうして出来上がったのか、その理由を知りもしないで上から目線で自分の常識を解き広げるのはただの悪徳。だからね私は調べて探そうと思うの。私の知らない魔法知識と私の知ってる科学知識を融和させてこの世界の新しい常識になれるありとあらゆることを」


『綺麗事しか言わないつもりか、キミらしくないな』


「あら、そんなつもり毛頭ないわ。一番根本的な基本理念は……私が楽しむためだもの。あんたも未知のデータに食指が向かないってことはないでしょ」


『同意。とてもワクワクしていると言っていい状況だ』



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