表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2085年の超AIをインプラントしたまま転生した元科学者令嬢、魔法文明世界で科学無双します!  作者: 垂水川


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/21

7.改革のはじまり(2)

「すぅすぅ……んぅ……」


先程までと違い、ルークの家の寝室では穏やかな寝息が聞こえている。

アスピリンを飲ませるために一度起こした彼の母親はご令嬢の姿を見て慌てていたが、

熱で奪われた体力のせいですぐにまた眠りに落ちてしまった。


「マルガレーテ様、ありがとうございます!もらったお薬飲ませたら、母ちゃん苦しそうじゃなくなったよ」


「熱が下がって楽になったんでしょうね」


「良かった、もうこれで……」


「いいえ、まだ油断してはだめ」


「え?そ、そうなの?」


一瞬明るく輝いた表情がまた曇ってしまったが、真実を伝える方が重要だ。

科学的知識のないこの世界の子供にどう伝えるべきか。

前世の絵本の言い回しを引用して告げる。


「あなたのお母様の胸には今、目には見えない悪い物がたまっているの」


「悪い物?え、えっと……毒とか瘴気みたいなもの?」


「似たようなものよ。とにかく、それを退治しないと完治とは言えない」


「そう、なんだ……」


「方法はちゃんとあるから安心なさい。それと……同じ畑の人たちはどうだった?」


「うん、三人いたよ、具合悪そうな人」


「その人たちはどうしてるの?ちゃんと休んでる」


「ううん、休めないって……あともう少しで夏麦の収穫時期だから忙しいんだ」


前回の収穫時期のことを思い返す。

マルガレーテの母親の地属性魔法により豊作続きの公爵領には、収穫と出荷のため周辺地域からも人が集まってくる。

ちょっとした収穫祭まで開かれるほどだ。


『時期が悪いな』


(収穫時期になったら人が増える……ここからパンデミックが広がる可能性があるわ)


『発症者が少ない内に全員魔法で治すか焼き払うか』


(どこかの赤い国じゃないんだから、治す方に決まってるでしょ。そうだわ、いい機会だからここは先達を見習いましょう)


『何をするつもりだ』


(まずは青かび集めからよ)


◇◇◇


『それからの一週間は過酷だった』


後にレクシスはそう語った――。


『一つ一つの青かびを調査し、ペニシリン含有量の多い株を選定。それを治癒術式を改変して培養。ひたすら突貫作業だ』


「水と油の入った壺の用意はいい?水魔法メイルシュトローム改変。オートブレンダー」


『大量の青かびを溶媒である水と油の中に入れて粉砕。ペニシリンが溶け出した水だけを分離。そこから出来たばかりの分子抽出魔法で』


「私達は大量のペニシリンとアスピリンを作りあげた」


気付けば一週間目の朝日が昇っていた。


「これだけ薬があれば備えは万全ね」


木箱に並べられた大量の薬の包みを前に真里は満足気に頷く。

一週間、食事も睡眠もそこそこに作業をしていたせいで、令嬢としては少々身だしなみが乱れているが気分は晴れやかだ。


『よくあのような原始的な方法で作ろうと思ったな』


「小さい頃にドラマで見たのよ。現代のお医者様が過去の世界に飛ばされてしまうってやつ」


生活魔法で簡単に髪の乱れとワンピースの皺を整え部屋を出る。

向かった先はこの城に最も長く仕える女性――メイド長の所だ。

慣れた手付きで作業を進めていた彼女は、真里の姿を見付けるとすぐに手を止め恭しく頭を下げた。


「少しいいかしら」


「はい、マルガレーテ様。どうなさいましたか?」


「近い内に城で働いてくれてる皆から熱を出した人や調子の悪い人の話が入る可能性があるの。その時にはこの包みを渡してもらえる?お金を取る必要はないわ、領民なら誰にでも渡してあげて」


「それは大変です!わかりましたが、ええと、この包みは一体……」


「お母様の……「慈悲の貴婦人」の育てたハーブにお父様が加工を加えたものよ。水と一緒に飲み込むようにと伝えて」


「まあ、奥様のハーブ園の!?大事にしてらっしゃるのに領民のために惜し気もなく……なんと慈悲深いお方たちでしょう」


「お父様はこうも仰っていたわ。病の民を救うのも公爵家の義務だと」


感動し力強くお任せくださいと頷くメイド長に薬を預け、のんびりと自室へ引き返す。


「一仕事終わったわね」


領主夫妻に心酔し、領民にも顔の広いメイド長ならば配布役として適任だ。

この先は真里の仕事ではない。


窓から外へ目を向けると必要以上に眩しさを感じる。

マルガレーテの肉体の若さに任せて作業に没頭してきたがいい加減少し休息を取るべきだろう。

前世でも同僚や子供たち、何より脳内の相棒にちゃんと休めとよく注意されたものだ。


『いいのかマリ。全てキミの父の手柄になってしまうが』


「そうなればいいのよ」


『理解不能。成果を出した方が今後動きやすくなるのではないのか』


「だって皆に立派な領主様だ~って褒められたら、お父様は私を怒れないでしょ。どれだけ内心怒鳴ってやりたいと思っても……ね♪ふふっ♪」


脳内でブーンと低いノイズのような音がした。

レクシスに体があればジト目を向けてきていることだろう。


『キミに効く薬は一体何なんだろうな』


「あら、私は健康体よ、お薬は必要ないわ」


部屋に入り、着替えもせず豪奢なベッドに寝転がる。

前世より寝具の機能性は落ちるが、二回転しても問題ないベッドの広さは素晴らしい。


「ところでレクシス。今回の薬の作成手順をこの世界の人間でも行えるようにダウングレードしてレポートにまとめてくれる?その間体の使用権限は預けるから、なるはやで」


『了解。やはりキミはスマートブレイン使いが荒いな』


聞きなれた相棒の皮肉を聞きながら、真里は仮眠を取るべく瞳を閉じた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ