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2085年の超AIをインプラントしたまま転生した元科学者令嬢、魔法文明世界で科学無双します!  作者: 垂水川


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13.とても贅沢で貧しい食事(3)

――そうして迎えた賭け当日。


準備と仕上げの指示を終え、真里も晩餐の間へと向かう。

その場には既に他の家族全員が揃っていた。


「マルガレーテ……本当に良いのだな?」


「ええ、お父様。今夜のお食事、きっと楽しんでもらえると思います」


相変わらず渋面の父に、苦笑気味の母。

弟達は何が始まるのだろうと少し落ち着かない様子だった。


真里が合図を送ると最初の一皿が運ばれてくる。

葉野菜の中に薄く茶色がかった欠片が混ぜられ、上には色鮮やかな花が飾られているが、それ以外は見た目は以前の通り。


「ふん……何かと思えば花を飾っただけか?子供騙しな」


「可愛らしいじゃないですか、私は好きですよ」


「その花はただの飾りではありません。食べられる花ですので、一緒にどうぞ」


「まあ、これも食べられるのね。では、いただきましょうか」


ディートリヒに促され、ライゼンボルグがフォークを握る。

三人の弟達も、もちろん真里も当主の行動に従い食べ始める。

元々は自分が美味しい物を食べたくて作ったのだ、存分に晩餐を楽しませてもらうとしよう。


「このレタスパリパリ噛み応えがいい……苦くないし……美味しい……」


呟いた声は次男フリードリヒのもの。

線の細い物静かな少年で、食事中に声を出したところなど見たことがない。


「これはどこから取り寄せたものだ?普段使っているレタスとは別物ではないのか」


「いいえ、正真正銘公爵領の普段のレタス。少し下処理を丁寧に行うだけで苦味も減るし歯ごたえも良くなるのです。疑うならば炊事長に確認してください」


公爵家で使う葉野菜たちは専用農場から毎日馬車で運ばれてくる。

確かにこの世界では十分すぎるほど新鮮だが、やはり野菜用冷蔵庫で保管されたものとは違う。

品種改良もされていないがゆえの苦味もある。

その下処理として真里が行ったのは50度程の湯でさっと洗うことで、閉じてしまった気功を開かせる方法。

そこから水を吸収させ、触感を良くしアクを減らすことができる。


「すごいわね、それでこんなにレタスが美味しくなるなんて。それにこのドレッシングも味も香りも膨らみがすごい……ハーブは解るけれど他にも複雑な香りが」


「ドレッシングはクルミ油と干し茸を漬け込んだお酢、塩、数種のハーブで作りました。クルミもキノコも領内の森で取れた季節の味覚。ハーブはもちろん、お母様が厨房に提供してくださってるものです」


「ふふ、美味しく使ってもらえて嬉しいわ」


酢に軽く火を入れ酸味をまろやかにしたからか、葉野菜の中にキノコで食感のアクセントを加えたからか、弟達も熱心に口に運んでくれている。


「お父様はいかがです?」


「……悪くはなかった。お前にしては考えたようだな」


眉間の皺はそのまま、それでもライゼンボルグはしっかりとサラダを完食しきってフォークを置いた。


『一皿目の反応は上々といったところのようだな』


(ふふ、お父様ったら悪くない~とか言いながら食べきっちゃってるじゃない。この先どうなるか楽しみね)


当主が食べ終わるのを見計らい、使用人たちがスープを運んでくる。


野菜は前回と同じカブと白ニンジンとポロネギ。

そしてひき肉を丸く成型した肉団子が浮かんだスープ。

ほのかに黄色みがかっているが色は淡く、普段のスープと肉以外の違いはない。


見た目だけは、だが――


「……ん、なんだこのスープは……この味、鳥か?」


一口すすったところでライゼンボルグが軽く目を見開いた。


「ミンチボールには燻製肉のような香りもなく味も淡泊。そのはずなのに妙に強い風味を感じる。何故こんな……」


「炙った鳥の骨をじっくりと煮込みスープのベースを作りました。その香りとうま味です」


「鳥の骨だと?捨てるはずの部位でこの味が出るというのか?」


「ええ、領民が大切に育てて献上してくれた鳥ですもの。骨をただ捨ててしまうより良いと思いません?」


ライゼンボルグは何も答えず、もう一口スープをすくう。

彼の態度ににやけそうになるのを堪え真里もスープを飲みこんだ。


「おねえさま、おねえさまっ。これおいしいよ」


次はミルクスープにするのもいいわねなんて考えているところに、横から少し舌っ足らずな声がかけられた。

末の弟ヴィクトールが小さな手でぎゅっとスプーンを握り、夢中になってスープを口に運んでいる。


「まあ、ヴィクトール……!食が細いと心配していたのにすごいわ」


「うん、おにくもおやさいもやわらかくておいしいんだもん」


そう言って笑う顔は今までの食卓では見られなかったもの。


「軽く煮ただけの燻製肉じゃ、硬くて小さな子供には食べづらいです。私にだってそう思った記憶があります。特に歯の生え変わりの時期は痛みもあって……ね?」


同意を求めると、上の二人の弟が控えめに頷きを返した。

末っ子ヴィクトールも肉団子を頬張りながら頷いている。

肉団子が特にやわらかくふわふわになるように、みじん切りにして炒めたマッシュルームを入れたことは、マッシュルームが苦手な彼には内緒だ。


そして、恐らく食べづらさの問題は数十年前のライゼンボルグも感じたものだったのだろう。

真里が視線を向けると気まずそうに咳払いをしていた。


「ありがとう、姉様。このスープならパンも美味しく……って、あれ?このパンもすごくふわふわだ……!」


今度は長男のカールが驚きに声を上げる。


「噛むと外側は香ばしくてカリッとした歯ごたえがちょうど良くって、中はやわらかくって……すごいよ!」


「細かく砕いたクルミを使ってみたの」


余程パンがお気に召したのだろう、跡取りとして厳しく躾けられている彼にしては口調も子供っぽい。


「これは……本当に公爵領の小麦を使ったものか?」


「味が豊かで舌触りもなめらか、そのままでも美味しくいただけてしまうわ」


「ええ、間違いなく。せっかくお母様の魔法で品質のいい小麦が取れるのです、他の地域からこっそり……なんてことはいたしません」


「ならば何が違うというのだ?」


「製粉の技術とあとは練り込んだミルクとバターの効果です。今回は急ぎでしたので処理に魔法を使いましたけど、製粉施設の改良案もできていますので後でお渡ししますね」


ふわふわのパンに鳥のスープを浸し口内でじゅわりと蕩けるような感触を堪能する。

そんな真里の脳内に不満そうなノイズが走った。


(レクシスくん、何か言いたいことでも~?)


『いいや、キミがスローライフを堪能している間なるはやでと改良案レポートを押し付けられたことなど、どうのこうのと発言するつもりはない。スマートブレインを酷使する悪徳宿主なのはいつものことだ、慣れている』


(思いっきり言ってんじゃない!?)


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