表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者祭3 ゾエ編  作者: 牧野三河


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/70

第46話


 雪で閉じ込められた、ウスケシの安宿――


「なんです、これ」


 白露帝国のアナスターシャ王女が、マサヒデの前にカードを並べる。


「単純なゲームじゃ。雪で暇じゃろうが」


「私に付き合えと仰っているんですか?」


「そうじゃ」


 並べられた絵札を見るが、さっぱり分からない。数字が書いてはある。

 これの大小で勝ち負けを決めるのか?

 マサヒデは首を傾げて、


「良いですが・・・私よりトモヤを相手にしたらどうです」


「ま、まあ、それも、そうじゃが」


 将棋に負けたのが悔しいのか、アナスターシャが口を濁す。

 その一瞬に間髪を入れず、マサヒデは手を上げ、


「おーい! トモヤ!」


「なんじゃあ」


 食いかけのパンを置き、トモヤが立ち上がって歩いて来る。


「お前、これが分かるか? 白露帝国の遊びやもしれんが」


 並べられた絵札を見て、何だ、とトモヤががっかりした顔。


「ああ・・・ふん、王女様、のう・・・」


「ちっ、知っておるのか」


「まあのう。知ってはおるがのう」


「なんじゃ、その顔は」


「全くやる気はせんのう。下らぬ」


「何!? 下らぬじゃと!」


 トモヤは「ふん」と鼻を鳴らし、何枚か適当に絵札を取り、


「王女、気付かぬかの」


 アナスターシャが怪訝な顔をして、絵札を見る。

 何かおかしな所でもあるのか?


「ん? 何にじゃ?」


「カードをよく見てみよ。これ、Rランクじゃの」


「? ああ、そうじゃが」


「これはSRじゃ」


「そうじゃが」


「初心者デッキじゃの。さて、王女のデッキを見てみようかの」


 トモヤが手を伸ばし、アナスターシャの絵札をめくって、すたすたと並べていく。


「気付かぬかの?」


 アナスターシャが腕を組み、首を傾げる。


「分からぬ。何にじゃ? 何に気付かぬ? お主は何が言いたい?」


「Cがないの。UCがないの。上はSSRもないの」


 あれ? 確かにない・・・


「あ、そう言えばないの? はて・・・何でじゃ?」


 やっぱり、とトモヤが呆れた顔で息をつく。


「王女、騙されておるぞ。よおく見てみよ。この遊びにはRとSRしかない」


「な、何ッ!? あっ!?」


「体力を見てみよ。1000も2000もあるぞ。おかしいのう。他の絵札遊びで格1でこんなにあるか? 最上連鎖で10万超え。おお、嬉しいのう・・・数字の大きさで誤魔化されておるだけじゃ。格1通常攻撃で500も超えるのか! 嬉しいのう! ふん。馬鹿を言うておるわ。数字がでかいから嬉しく思えるだけじゃ」


「ぬうっ!?」


 トモヤが絵札をまとめ、アナスターシャの前に置く。


「こういうのは、低い格の札も交えて戦略を練るゆえ面白いのじゃ。そう思わぬか」


「た、確かに・・・」


「格が2つしかないわ。全部SRでまとめるのも楽じゃ。おお、SRばかり揃ったぞ! 嬉しいのう・・・と、客の心をくすぐって絵札を売るのじゃ。実の所、RとSRしかありはせぬ。おかしいと思わぬかの」


「思う・・・」


 は! とトモヤが声を出し、手をひらひら振る。


「浅い浅い! 古くから続くものを、もう一度よっく見直してみるのじゃ。絵札セットを買ってみたらRとSRしかないぞ! やった! 引きが良い! と、こうして売っておるのじゃ」


「ぬうっ! お、おのれ!」


「こうしたものに騙されぬようにの。巷には溢れておる。まあ、全部が全部悪いとは言わぬが」


「ええい!」


 ばしん! と絵札の束を叩き付け、ふーん! とアナスターシャがそっぽを向く。


「もういらん」


「ほれ王女様、暇なら1局どうじゃ」


「お前とは指さん」


「ほうか。じゃあワシは感想でもやっておるかのう。おお、そうじゃ。王女様は魔剣を持っておったの」


 急に魔剣の話。は? とアナスターシャがトモヤを見る。


「む? ああ、あるぞ」


「ラディ殿と見てはどうじゃ。マサヒデの刀も良い物じゃぞ」


 アナスターシャはちょっとバツの悪そうな顔で、マサヒデをちらっと見て、 


「ううむ・・・刀剣にはそれほど興味はないのじゃ。目もないし」


「ではクレール殿と遊んではどうじゃ? 最近、面白い事をしておるぞ」


「面白い事? 何をしておるのじゃ」


 トモヤがにやりと笑う。


「お人形遊びよ」


「はあ? レイシクラン様がか?」



----------



 クレールが呼ばれ、アナスターシャの前に座った。

 アナスターシャはクレールの顔をじっと見る。

 いや、確かに子供っぽい顔をしてはいるが、まさか人形遊び?


「レイシクラン様は、近頃、人形遊びに凝っておるとか聞いたが、真であろうか?」


「は・・・? ああ! はい! 遊びではないですが」


「遊びではないと言うと?」


「陰陽術です」


「オンミョージュツ?」


 ふふ、とクレールが笑う。


「知りませんか? 日輪国の魔術のようなものです。そう言えば、他国にはあまり使う方はおられませんね」


「ほう?」


「ちょっと待ってて下さいね!」


 クレールが部屋に戻り、絵の練習に使うような木の小さな人形を持って来る。


「こういうのを使いまして、練習しているのです」


「ふむ?」


 ことん、と人形を置き、アナスターシャの顔を見て、にやりと笑う。


「見てて下さいね・・・まだ練習中なのですが・・・むうん!」


 クレールが真剣な顔に変わり、2本指を立てると、指先が光る!


「おおっ!?」


「ぬぬぬ・・・てえいっ!」


 ぱ! とクレールが指先を人形に向けた。

 びかー! 木の人形が光る!


「な、なんじゃ!? 魔術か!?」


「ふうー・・・さあ、立ち上がるのです・・・」


 からん・・・

 小さな音を立て、人形が立ち上がる!


「おっ・・・おお? 死霊術の類か?」


「ふふふ。死霊術とは一味違うのです。私が動かさなくても、命令を出せば、人形の方で勝手に動きます」


「なんと!? 術者が動かさなくとも良いのか?」


「まあ、命令次第ですけれども。では、今日はアナスターシャ王女を楽しませるのですよ・・・」


 ふわっとクレールが手を動かすと、からり、からり、と人形が歩き出す。


「な、なん、な・・・」


 からん、からん、からん・・・

 人形が歩いて来る!


「では、私は部屋に戻りますね」


「な、何!? どうしたら良いのじゃ!?」


 クレールは立ち上がって、にっこり笑って去って行く。


「殺生な!? レイシクラン様!」


 からん、からん、からん・・・

 人形が音を立てて近づいてくる。

 そー、と手を伸ばすと、人形がぴたりと足を止めた。


「うっ?」


 驚いて手を止めたが、またゆっくり手を伸ばすと、人形も手を上げる。


「お・・・?」


 指を伸ばしてみると、人形が指先に手をぴたりとつけた。

 ごくっと喉を鳴らし、指を離してみる。

 人形も手を引っ込める。


「・・・」


 まじまじと人形を見つめていると、からん! と人形が手を上げた。


「うおっ!?」


 からん、からん、からん、と音を立て、人形がぐるぐる動きだした!


「なっ、ななな・・・」


 驚きながらも見ていると、どうやら踊りのようだ。


「はあ・・・」


 人形はしばらく踊り、ぴたりと止まって、胸に手を当てて頭を下げた。


「お、おう。見事じゃ」


 言葉を掛けると、人形が両手を挙げ、喜ぶように走り回る。


「ううむ、凄いの。お主、他には踊れぬか」


 ぴたりと人形が止まり、くるっと回って、今度はゆっくりと動き出す。

 しばらく見ていて、ぱちん、とアナスターシャが手を叩き、


「あ、これは能じゃな。私も少しは知っておる。ほおう、能も踊れるのか」


 すいー、すいー、と人形が動き、最後の決め。


「おお、見事、見事じゃ! 踊り以外には何か出来ぬか?」


 ぴたりと人形が止まった。

 他には何も出来ないのか・・・と思いきや。


「む?」


 くるりと人形が回り、テーブルの爪楊枝をえっちらおっちらと取り出し、アナスターシャの前に置き、手を差し出す。


「?」


 取れば良いのかな? と爪楊枝をつまみ上げると、人形が頷き、また戻って爪楊枝を出してくる。


「あ、チャンバラか? よし、付き合ってやるぞ」


 ぴ! ぴ!


「おっ!? 貴様、人形のくせに中々に振るな!? どうじゃ!」


 ぴし、と爪楊枝を振ると、驚いたことにするりと流す。


「むうっ!? やるな! これはどうじゃ! えいっ!」


 ぴし! ぴし! ぴし!


「さあどうする! うぬっ!? あいたっ! 刺したな!? くそ!」


 声を上げて人形と爪楊枝を振るアナスターシャを見て、マサヒデ達がくすくす笑っている。


「お? カオルさん、あれ無願想流では?」


「あ、確かに・・・そう言えば、先程の流し、ご主人様の動きに似ておりました」


「ああ、クレールさんが見たことある動きになるんですよ、きっと」


「なるほど。術者の知っている事が反映されるのですね」


 ふむふむ、と頷きながら見ていると、今度は人形が爪楊枝を捨て、割り箸を持って来る。


「お、あれば棒術かな?」


 シズクのように、どんと棒を立てた構え。それから、すっと中段に構える。

 アナスターシャが人形を見て、


「おのれ、今度は槍か! 卑怯な!」


 ぱたりと人形が割り箸を落とし、ぐいぐいと先の方に手を入れる。


「割るのか? あ、そうか、私もか。よしよし、私が割ってやる」


 む、と人形が頷き、すすいと割り箸を差し出すと、アナスターシャが割って、人形に1本差し出し、1本を自分の指で、端の方を摘む。


「良いのか? そんな真ん中で持っておって。私はここを持つぞ。私の方が長いぞ。ほれ」


 くるっと人形の割り箸が回り、流される。


「おおっ!? や、やるな・・・ほれ! ほれ!」


 マサヒデが人形を指差し、


「ほら、あれシズクさんの動きですよ」


「本当ですね。なるほど、ではニシムラ様(※クレールに陰陽を教えた者。剣は車道流)が作ると、車道流の動きになると」


「でしょうね・・・しまったな。キョウイチさんに作ってもらっておけば、車道流が学べましたよ」


「あっ! 確かに! ううん・・・帰ったら作って頂きましょう。持って帰れば、型稽古に使えましょう。力の流れなどは分かりづらい所もあると思いますが」


 マサヒデ達は真剣な顔で人形を睨んでいるが、アナスターシャも真剣な顔だ。


「どうじゃ! どうじゃ!」


 からん! からん!

 人形の見事な受けと捌きに、アナスターシャも苦戦している。

 ふう、とマサヒデが息をつき、


「王女、楽しそうですね」


「はい。良い時間潰しが出来て、良うございました」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ