第一章エピソード11『潜入捜査』
「皆様、本日は一日世話方体験にご参加いただき、
誠にありがとうございます。」
世話方全員をまとめる仕事を行っている頭取が体験に来た
全員に挨拶と礼を交わした。
凪達の他には、主に親子連れが多かった。
私が居た現代でいうと小学三、四年生ほどの子供がほとんどだったが、
中には中学生くらいの年齢の子供が親なしで一人で参加したりもしていた。
「本日皆様には、年齢ごとに仕事を分けて行っていただきます。
零歳から十四歳の方は入り口で警備を行っていただきます。
年齢がまだ幼い方は保護者の方同伴でよろしくお願い致します
十五歳から二十歳の方は絵師控室にて番組一覧表の制作と、出演者様達の楽器の管理の
二つの仕事を人数で分けて行ってください。
楽師の方々は現在通し稽古の休憩時間です。
10分後には休憩が終わって通し稽古が始まります。それが終わって公演が始まるまで、
皆様に仕事を行っていただきます。」
番組というのは現代で言うライブのセトリの事である。
そしてその後、普段それぞれの仕事を担当する者達によって、体験者達へ仕事の説明が行われた。
紅葉達の年齢層の者達は、紅葉達の他に三人ほど。
合計で六人いた。
楽器の管理と番組一覧表の仕事を振り分けるのは、すべて体験者達による多数決で行われた。
その結果、人数が被ることなく円滑に進めることができた。
振り分けは紅葉、凪、三吉鬼が楽器の管理、他の三人が番組一覧表の制作となった。
そして他の三人が楽屋から出て絵師控室に向かう。
その5分後に楽器管理の説明の者が楽屋にやってきた。
「失礼します。初めまして。普段楽師様達の楽器の管理をしている森近と言います。本日は世話方体験にご参加いただきありがとうございます。」
森近の律儀な態度に気圧されて、紅葉と三吉鬼は思わず反射的に頭を下げた。一方凪は堂々としているので、
「よろしくお願いします。」とだけ言って
頭は特に下げずにその場に黙って立っている。
その様子を隣で見ていた二人は、
なんでこの人こんなに堂々としてるんだ!?────
とめちゃくちゃ驚いていた。
その様子を微笑ましく思ったのか、
森近はニコッと微笑んでから、説明を始める。
「それでは説明を始めますね。まず、楽器というのは~~」
森近はどうやら楽器への情熱が高い人らしく、
管理の基本を熱烈に語ってくれた。
森近は語るのに夢中でどうやらこちらの事をちゃんと見ていなかったらしく、
その事を察した凪が、三吉鬼に耳打ちをした。
「三吉鬼。あんたはちょっとここで待ってなさい。
あたしと紅葉で外に出て探してくるから。退屈だろうけど我慢しててね。」
外に出ることを紅葉にも耳打ちした凪が森近の死角に回り、外に出ようとするのを
三吉鬼が森近の様子を伺いながら小声で引き留める。
「ちょ、ちょっと待てよ。俺も一緒に行っちゃだめなのか?」
「ダメに決まってるでしょ。全員外に出たら万が一見つかった時に
言い訳が難しくなる。それにあんたのその巨体で隠れながら移動できるわけないでしょ?」
正論を食らった三吉鬼は何も言い返せず、黙って二人を見送った。
あぁ、めんどくせぇな。早く帰って酒飲みてぇよ。───────
そして二人が戻ってくるまで、森近は体験の事を忘れて
楽器の事を語り続け、三吉鬼は気が遠くなるまでその話を聞かされるのであった。
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