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江戸っ子歌い手少女  作者: 水海月
第一章『始まりの音色』
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第一章エピソード8 『期待の先にあったもの』

道具持ち・・・江戸時代の劇場とかの雑用的な感じの人の事

「で、俺はそいつがいじめられてる現状を調べてくればいいのか?」


大柄な筋肉隆々の大男、鬼の三吉鬼が凪と紅葉の二人に聞いた。


「うん、あの子が出る公演が一ヶ月後にあるらしいからそれの舞台準備を手伝う道具持ちとして潜入してほしいの。」


三吉鬼は大柄ではあるものの、角を隠せばただの人間なので、潜入捜査にはもってこいの妖怪だった。


「そこで何聞いてくればいいんだ?」


「あの子がいじめられてるっていう話が本当なのかどうか、もしいじめられてた場合その状況から脱出できるような方法が無いかどうか見てきて教えてほしいの。」


三吉鬼に仕事を伝えた後、蒼龍に挨拶してから帰ることにした。


「蒼龍さん、それじゃありがとうございました!」


凪なお礼を言って、頭を下げた。それに合わせて紅葉もお礼を言って頭を下げた。


「困ったことがあったらまた来るんだぞ!ここの奴ら全員妖怪だから

いつでも手貸す。」


え、いまさらっととんでもないこと言った?・・・・・


辺りの客をぐるっと見回してみる。

その瞬間全員が妖怪に変化した。

端の方に座っていた武士の見た目の男からは煙が上がり、酒呑童子の姿に変わった。

手前側に座っていた艶やかな長髪の女からも煙が上がり、鵺の姿に変わった。


「えっ?」


と凪。


「「え~~!!!」」


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


三吉鬼は、昨日紅葉達が来た劇場の前に立っていた。


「ここねぇ~」


両手を腰に当てて仁王立ちし、入り口を上から下までじっくり眺める。

そのまま中に入っていくと、本日共に劇場の裏方をする1日限りの仕事仲間が

せっせと舞台で使う小道具をあちらこちらに運んでいた。


「おい三吉!おまえ来たんだったらさっさとこれ運べよな!」


道具持ちの仕事仲間が足で荷物を指す。


「っととと!」


重いものを持った状態で片足をあげたので少しよろけたようだ。

その後にすぐに体制を戻し、運び始める。

ちなみに三吉鬼は三吉という偽名で日雇いに応募しているため、

名前は全員知っている。


「え~っと、あったあった。」


劇場には必ず館内図が入り口に貼ってある。

なので、それを探してそこに書いてある楽屋に忍び込み、

あの不良少女がいじめられているかどうか、その実態を調べに行こうというわけだ。

三吉鬼は、先程の道具持ちに言われた荷物を持ち、楽師達の楽屋に向かった。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「はあ、忙しい忙しい。」


楽屋には、今日の公演に出演する楽師たちがせっせと化粧したり、

楽器の点検をしたりなど準備をしていた。


「てかさ、お前今日は出しゃばるなよ。」


どうやらいつも通り私に言っているようだ。

いつもの事だと思い、無視して準備を続けていると、


「ねぇあんたに言ってんの!」


私の能管を蹴ってちゃぶ台から落とした。

楽師にとって楽器を乱暴に扱われるのは、自分の存在を侮辱されていることに等しい。


「・・・・」


無言で立ち上がり、あいつの琵琶にも傷をつけてやろうと思ったけれど、

無言でこちらを睨まれたので、やめておく。

それに楽器を傷つけるのは楽器が可哀そうというのもあるからでもある。


先程から私に乱暴してくるこいつは私と同じ楽師の沙門虎子(しゃもんとらこ)

私が奉公している主人の歌舞伎役者、天道伊右衛門(てんどういえもん)様に仕えている

楽師の中の一人。伊右衛門様にいつも琵琶の腕を褒められてるから調子に乗って私をいじめてる。

周りの楽師にも助けを求めたこともあったけれど、みんな助けてくれなかった。

伊右衛門様のお気に入りの楽師だもの。虎子の事を悪く言ったら今の立場が危うくなるかもしれない。

みんなそう思って私を助けてくれないのだ。助けてって言ってうんわかったって言ってくれる子も

すぐに私と口を利かなくなってしまった。結局期待しても何も意味がないのだ。

誰も信じることはできない。信じられるのは自分だけ。自分で何とかするしかないのだ。

それに、虎子は・・・・・


「将軍様と主人の両方に気に入られてる私に余計な事したらどうなるかわかってんでしょうね!?」


ということだ。つまり図にするとこういうことになる↓



将軍様→伊右衛門様→虎子



「分かってるわよ・・・」


私の返事を聞いた虎子がこちらに近づいてくる。

そして壁に足をかけてこちらを睨んできた。


「あれ~そうじゃなくって何ていうんだっけ?」


あ~めんどくさい


「分かっています・・・・」


そうこうしていると、裏方が襖を開けて、部屋にいる楽師たちを呼びに来た。


「皆さん!そろそろ公演が始まりますので準備をお願いします。」


かなり大柄な体格の裏方だったので虎子も思わず、瞬間的に足を離した。

虎子は人前ではいい子を演じているので、先程のような様子を見られると自分のイメージが悪くなってしまい、かなり困るのだ。


「承知いたしました!直ちに準備いたしますので少々お待ちください。

皆!準備するわよ!」



思わずその裏方に気を取られて数秒遅れてから(みな)返事をした。


「「「「はい!!」」」


全員せっせと準備をしている中、私はどうやったらここをやめられるかを考えていた。

今回は時間が無かったのでいつもより少し短くさせていただきました。

活動報告の方で今後の投稿スケジュールが決まったら報告させていただきますので

これからもよろしくお願いします。


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