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あの夏の最後の日。  作者: 伊呂波 うゐ
16/22

■ 拾六.一九四五年八月十五日(水曜日) 午前十時四十三分


■ 拾六.一九四五年八月十五日(水曜日) 午前十時四十三分


 数馬は毎日、辰ちゃんの資料を読んだり、雑誌を見たり

わからない言葉を俺に聞いてきたり。

 俺も家の掃除から畑のことだとか、やることはたくさんあって

 だから


 その日も そんなふうに 迎えた


 「ラジオで陛下から重要な知らせがあるらしい」

 「・・・」

 ついに、そのときがきたのか・・・

 正午からラジオ放送があるらしかったが、数馬は聞きたくない、と縁側に

いた。・・・俺も


 もう、この戦争は負けて、そして終わったのだ、と


 知っているから、それを知らされたくなかったんだろう。


 「天皇陛下を見たことがあるか?」

 「へ?」

 縁側ですわっていると数馬がそんなことを聞いてきた。

 「そばで」

 「・・・そばで、はないけど、テレビとかでよく皇室特番っつって・・・愛子さま

だの雅子さまだの美智子さまだのの特集はしようけど」

 「愛子?雅子?美智子?」

 「ああ、なんか今の天皇?あれ?今度の天皇?のこと」

 「皇后様のことか?」

 「皇后・・・あんま詳しくないけど・・・今の皇后って?」

 「良子皇后陛下」

 「・・・(知らん)」

 「愛子・・・ということは内親王様なのか」

 「(なんじゃそりゃ)・・・まあ今の天皇?あれ?今度の天皇???の子供は

女みたいやけど」

 「ふうん・・・」

 そうか、と

 「戦争が終わっても天皇家は大丈夫なんやな」

 「うーん・・・多分・・・」

 俺には今の天皇がどうだとかはまったくわからないので、数馬が戦争が終わっても

天皇がいる、というのを知って安心してるのがよくわからなかった。


 昼をすぎて、ラジオ放送が終わったみたいだ。おっちゃんは何も言わず

 いつものように、家のことをやっていた。


 世界は変わったのだろうか?


 午後になって萬亀が慌てて神社に来た。


 「万里さん!数馬にいちゃん!天皇陛下が、戦争に負けたっち・・・ラジオで」

 「・・・ああ」

 「戦争に負けた・・・嘘だよね」

 「・・・負けたんだよ」

 「でも、日本はどうなるん?・・・アメリカに占領されるん?」

 「・・・」

 「アメリカ人って人間を食べるって聞いたけど・・・」

 「・・・そりゃねえよ・・・」

 とんだデマがあったもんだ。まあきっと、本当のことを知らされてなければこんな

もんだろう。


 依然として俺はどうすれば元の世界に帰れるなんて何もわからねえし

 ただ

 その日の夜は、ずっと家につけられていた黒い幕がはずされた

 ・・・なんか

 ひとつひとつの家に、あかりがともるのが見えた気がした。


 「夜中にサイレンで起こされなくてすむんが、安心する」

 数馬は笑ってそういった。そう、きっと

 もう、いちいち真夜中に空襲警報で起こされることもない。

 その日、俺は8月4日以来

 はじめてゆっくり眠れたのだった。


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