第四十一話 「斜め上」
「それで?まんまと逃げ帰ってきたってわけぇ?」
森の作成中の砦内にある元食料庫を改装し、ハート柄に加工された魔獣の毛皮と、どこから持ってきたのかピンク色の壁紙や、小物で飾られた室内の中央で、全裸のヒャッハー数人を人間椅子にした者が怪訝に眉を細める。
「は、はい・・・」
「村に襲撃使用にも弓矢の雨で進むことも出来なかったですぜ・・・」
「ふぅ~ん?弓矢が届く前に村に入ればよかったじゃないの?」
「そ、そんな」
「あ、あはは、か、勘弁してくださいよぅ」
「別に冗談で言ってるんじゃないのよ・・・はぁ」
憂いと帯びるようにため息を吐く姿は貴婦人・・・とは言えないがなかなか様になっている。
「ォカマエル様、口直しにこちらをどうぞ?パインのような果実を隊の者が見つけてまいりました」
「あら?何かしら?・・・ふむふむ、梅のような酸味ほどよく聞いたお酢の酸味・・・ってこれスッパ!酸っぱいわよ!馬鹿なの?殺す気!?ぺっぺ!パインってか酸っぱいんわよ!ふんっ!」
「アーーーーーッ!」
余りの酸っぱさに怒り心頭のォカマエルはこの果実を差し出した天界兵のケツに突っ込んだ。
恍惚とした症状を浮かべ光の粒子に変わる仲間の天界兵を見て凍りつく。
「ふぅ・・・貴方たち?こうなりたくなかったらさっさとお行き!矢なんて盾で防げばいいでしょ!」
「「「「りょ。りょうかいしゃっしたぁー!」」」」
所変わってポポチ村では村の西側に広がる平地で村人たちがせっせと矢を回収していた。
衝撃で折れて使えなくなっているものもあるが使えるものも多々ある。
しかも、天界兵は死すると光に変わる為、したいから引き抜くなどの汚れた作業も無い為、遠めに見れば農作業の前準備を村人達がしているようにしか見えない。
「魔王さま!あらかたの回収が終わりました!」
「鏃も回収し終えました。あとは折れているものが殆どです。」
「よし!撤収!」
「「「「「はい!」」」」
回収作業を終え、村人達は麻袋や籠を手に一斉に村へと駆けていった。
「勝手な予想で申し訳ないけどさ、たぶん今日、もう一回襲撃があるぞ」
「「「え?」」」
本陣で炊き出しのポトフの様なものとニャム(やはりナンの様なものだった)を食べながらジンが呟く。
「それは、どういう・・・?」
「ん~ま、普通に考えてみろ。何も対抗策なしに突っ込んで来たから撤退させられたんだぜ?なら対抗策を持って来ればいいだけだ」
「対抗策っつてもよ?矢雨に対抗策なんて」
「・・・コモムさ、今の自分の言葉思い返してみろって」
「は?」
「・・・矢雨?ですか?魔王さま」
「おうよ、だからさ」
「敵襲ぅぅぅぅうううううううううううう!!!」
メティルに答えようとした所で村中に響く敵襲の声が本陣に届いた。
「予想より早いな・・・行くぞ」
「「「はい!」」」
三人を引き連れジンが本陣を出る。
慌ただしく動きまわる村人達をモーゼの様に左右に分け進む姿は完全に総大将。魔王だ。
そうして、進めば作まで全くの障害なく進むことが出来、それを目にした。
「若干予想と違うな・・・」
「これは・・・」
「ほ~」
「・・・ぇ~」
引き連れてきた3人どころか周囲の村人たち全員が何とも言えない顔で森の方角を見つける。
其処には、超巨大な木を適当に紐で縛って作ったような壁が見えた。
「魔王さま・・・これですか?」
「ぃゃぁ・・・俺としては。敵兵が盾をもって密集陣形。ん~ファランクス?で矢を盾で防ぎながら進んでくると思ってたんだが・・・まさか巨大な盾?壁?を一枚作るとは思ってなかったわ」
「はぁ・・・」
「・・・」
「ま、魔王さまの上を行く策略ですね!」
「・・・うん、恐れ入った。つか、あれ森から出てきたってことはちゃんと移動可能なんだよな・・・天界兵って力持ちだな」
「いや、ジン様。そういう問題なのか?」
ジンは苦笑いを浮かべる。
「まぁ、やる事は変わらないさ」
「そうですね!魔王さま!私も今回は弓を撃ちますよ!見てくださいこれ作りました!」
「あぁ、うん。がんばれ」
「はい!」
はぁ~っとため息をつき、スっと顔を上げる。
「聞けぇええ!ポポチ村に集う戦士たちよ!戦いの時が来た!!」
張り上げた声に一瞬にして周りが静まる。




