第四十話 「密集した矢」
開戦は午後と見ていたが、予想に反して昼前に始まることとなった。
午前10時、森から駆けてきた二名の村人。
砦を監視していた二人だ。
彼らは村に入り本陣へと駆け込む。
「敵の数!およそ千!!攻めて来るのはその約半数です!!」
その報告内容を村中に伝え、仕事を急がせた・・・。
午前11時
「敵襲ぅぅぅううううううう!!」
ポポチ村の西側にある大きな木に登って警戒していた村人のCさんが大きな声を辺りに響かせる。
それに反応し、作業をしていた村人達は大急ぎでその作業を終わらせようとする。
少し前までなら逃げ惑っていたはずの人々は恐怖に陥ることなく己の仕事をこなした。
「来たか・・・」
ジンは作成中の堀からジャンプで飛び上がる。
以前なら、いや普通なら無理だろう3mを越すジャンプで垂直に飛び上がりスタっと大地を踏みしめた。
魔力をトランポリンのイメージで自らの体を飛ばした感じだ。
数時間しか時間がなかった為、村を二重に空堀で覆うことは出来なかったが、森に面した西側は二重にすることが出来た。
立ち上がった場所は空堀と空堀の間だ。そこから森の方へ振り返り確認すれば、隊列を組むなどではなくバラバラと森の木々の間から天界兵が湧いてきていた。
「弓隊!構えぇっ!!」
ザッ!!!
ジンの叫び声に柵の内側にいた村人達や怪我を負うも腕は動く男達が弓を引き絞り、民家の屋根の上、木の上では猟師達が構える。
そしてその間を女性や子供達が矢を抱えて待機する。
今、村人のほぼ全てが兵となり、敵を迎え撃つ!
「合図とともに掃射開始!」
「合図とともに掃射かいしぃいいい!」
「合図とともに掃射かいしぃいいいいいいい!」
ジンの声の届かない所まで声を伝えようと数名の男女が声を張り上げる。
その間にも敵はわらわらと森から湧き出てくる。
報告では凡そ500。
恐れることなど・・・無い!
「放てぇぇぇぇええええええええええええええ!!!」
一斉に放たれる死の矢は雨の如く目標地点へ降り注ぐ。
狙いは無い、されど雨粒の様に降り注ぐ矢は天界兵達に避ける気さえなくさせるほど体中に突き刺さる。
隊列を組まず、盾を持たない天界兵にこれはきつい。
全速力で森を駆け抜け、前しか見ず、前には味方の天界兵。
視界が開けたと思えば前を進む見方は矢に倒れ、光の粒子に変わっていた。
止まろうと足を止めれば後ろから駆けてきた味方の天界兵に突き飛ばされ、転びその味方すら自分と同じく矢の雨により光の粒子へと姿を変えた。
一方的に降り注ぐ攻撃は森から出た場所を大量の蛍の舞う川のごとく幻想的に輝かせた。
・・・消滅の光の粒子によって。
「どんどん放て!矢のある限り!放ち続け!敵の足を我らが村に近づけるな!!」
「放て!放て!」
「尽きるまで、放てぇええ!」
村人たちは次から次えと矢を放つ、狙いなどない、唯唯無心に放ち続ける。
矢を抱える子供や女は次々交代し、矢を射手へと渡す。
自分が何をしているかなんて分からない。放つ矢、渡す矢が同なっているか考える暇もない。
ただ胸に勝利と正義を抱き進める。
ある種、機械の如く、また教信者の如く。
決着が着くまでさほど時間は掛からなかった。
全力で走り抜け、大量の見方が矢の餌食になり光に変わる姿を見て天界兵は森へと撤退したのだ。
実際何程人数を減らせたかは分からないが、相手に恐怖を植え付け撤退に追いやることには成功したのだ。
「我々の!勝利だっ!!!!!」
「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」」」」」」」
村中が勝利に湧く。
死傷者0。
敵を一切合切惹きつけることなく勝利した。
だがこれはただ削ったに過ぎない。
戦いはまだ終わらない。
つづきます




