第三十九話 「開戦前の朝日」
さて、あの熱気と狂気渦巻く本陣・作戦司令部の会議から一夜明けた。
あの後、村人へ夜番の見張り以外は寝るように伝え、気を沈めてもらおうとしたのだが・・・。
大演説の効果は未だ健在あった。
あ、俺?普通に家に帰って部屋で寝たよ?
なんかあそこに居たくなかったから、そそくさ退散しましたよハッハッハ。
で、まぁ?今本陣にいる。
「なんとなくだけどさ?今日の午後辺りに攻めてきそうじゃね?」
「魔王さま!未来予知!?」
「いや、違うから」
面倒くさいので軽く雑誌で叩いておく。
本日持ってきたのはメンズアッパー『迸るギアの熱は俺を焦がす』がサブタイトルの雑誌だ。
え?内容?お察しください。
「基本さ、天界兵ってバカじゃん?なんか砦がもぬけの殻!よし、奴隷がりだヒャッハーとか考えてそうじゃないか?」
「確かに・・・ありそうですな」
「で、昨日砦について、夜だし寝なきゃじゃ、明日でいいか・・・。とか、考えてそうじゃね?」
「確かに!」
「つーわけで。この村と砦の距離。移動人数とか考えて昼過ぎあたりかなっとね。」
「魔王さま!読みですね!」
「・・・それでまお、ジン様。布陣や作戦などは」
「前と同じで構わん。今回、空堀もあるから村の森側の柵が激戦区だがなんとかなるだろう」
「なんとかなる・・・か?」
「天使共はありがたい事に光になって消える。空堀が埋まることも無いだろう。なら弓射たおす」
「確かに」
「とりあえず、柵の接地と弓矢の量産だ!ぎりぎりまでこれで行こう。俺ちと空堀追加で作るわ」
「「「はいっ!」」」
所変わって森の砦。
砦内は朝から騒々しくあった。
理由は糧食である。
倉庫内にあるはずの食料がなく、昨夜から何も食べていない天界兵達は、我慢できずに森に入り魔獣を捕らえ食したのである。
だが、これが災いした。
人数に対し魔獣の量が足りず暴動まがいの喧嘩に発展したのだ。
味方同士で殴り蹴り合い傷だらけの天界兵が其処かしこで呻いている。
「まったく・・・いやぁねぇ~ げぷっ」
「はっ、情けない限りです」
四足歩行の大型魔獣のもも肉を貪りながら歩く男
「ん?なんかイラっときたわ・・・」
「は?」
四足歩行の大型魔獣のもも肉を貪りながら歩く・・・おか・・・女?
彼・・・女は転がる天界兵を足で退けながら中央へと進んでいく。
「いい?貴方たちお腹すいてるんでしょ?なら村を襲ってそこの食べ物を・・・げぷ。奪えばいいわ。そうね・・・手で抱えられる分は自分の食べ物にしていいわ?嬉しいでしょ?」
「まじですか!?」
「やった!」
「しゃー!」
「ひゃっほー!!流石大将だぜ!・・・あぶべ」
「なんか今のはイラッときちゃったわ・・・もう、私を大将なんて呼ぶからよ?ォカマエル様って呼びなさい?・・・って、あら?光になっちゃったわ」
なんの躊躇もなく一人の天界兵を光に変えたォカマエルは、出現させた日の光りの如く輝く流麗な槍をひと振りした後、スッと消した。
「さすがォカマエル様だ・・・すげぇ槍だぜ」
「あぁ・・・あとモモンス、呆気なく逝っちまったな・・・」
どうやら光に替えられたのはモモンスと言うらしい。
「さて・・・一応報告ではここから東に進むと村があるそうよ?とりあえず半分でいいかしら?」
「はっ。6~10番隊までがよろしいかと」
「そう?なら6~10番隊は東の村とやらに狩りに行ってきなさい?あ~後、1~3番隊は砦警備、4~5番隊は森で魔獣を狩ってきなさい?これは命令よ?」
「くそ!俺二番隊だ!」
「あ~村に行きたかったなぁ・・・くそ」
「あ、俺五番隊だ・・・獲物抱える文は俺のものかぁゲププ」
このォカマエルを頭とした部隊は現在1~10番隊で構成され、100人隊を組んでいる。
現戦力総勢1000。輜重隊無しの全て兵力である。
因みに、天界兵に輜重隊の概念は無い。
糧食など奪えばいいし、武器はいくらでも生み出すことが可能。労働は奴隷にさせれば良い。
そんなアホな考えだ。
「さぁ!ぼさっとしてないでさっさとお行き!」
「「「「「「ヒャッハーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」」」」」」
ォカマエルの叱咤?号令?に合わせ叫び声を上げ、各々割り振られた隊の仕事に駆けていく。
それを見届け、ォカマエルは悠然と副官を椅子替わりにしながら腰を落ち着けた。
次から、大博打のはじまりじゃー!
嘘です。




