第三十一話 「ポポチ村防衛戦②」
時間の感覚が薄れる。
もう何人殴り飛ばし光にしたか分からない。
正直殴りすぎて、右腕がだるくなってきた。
体に傷はない。というか、斧なんて当たると死ぬ自信がある。
そんな紙一重の状況が俺の集中力を上げていく。
「し、しぬぇえええええええええ!」
「っ!」
左側から一人の天界兵が手斧を振りかぶる。
俺は一歩下がって回避し、目の前を通り過ぎる斧の刃を確認する。
血の色が付いていた。
誰かヤられたのだろうか。
俺は引き絞った右拳を天界兵にカウンターよろしく展開兵の顔面に叩き込んだ。
村の東で踏ん張っていた村人達に怪我人が多数出ているのだろう。
気が付けば中央の柵は跡形もなくなり村人達の肉壁で踏ん張っていた。
「怪我をした奴は最終防衛線へ交代!他は第二ラインへ下がれ!徐々に後退する!」
「「「「はいっ!!」」」
「押せ押せ!!ゴミ虫どもが逃げ出してるぞおおお!」
「ひゃっはー!腰抜けどもだァ!」
「オラオラ!黙ってつかまっちまえよう!ギャハハ!」
猟師と俺を殿に全体が徐々に後退していく。
「俺が此処で食い止める!他は第二ラインで準備!完了後合図を頼む!」
「了解です!」
「おう、ジン様よ。さすがに一人はきついだろう?俺も残るぜ!」
「我々猟師も残ろう。なに、こういう命のやり取りは戦士の十八番よ」
「あ、いや悪いけどコモムは第二ラインへ行け。つか戦士なの?猟師だよね?」
「え?」
「え?」
「なにごちゃごちゃ喋ってんだ!おらぁ!」
刹那、手斧がコモムに向かって飛んでくる。
それを右腕で弾き飛ばし、コモムを俺の後ろへやる。
「コモム第二ラインが肝なんだ。頼むぞ」
「・・・分かった。死ぬなよ?魔王さま」
「あぁ」
コモムが走って村の中へ消える。
さて、敵はまだまだいる。こちらは猟師と俺だけ・・・。
俺は一歩前にでる。
「おう、天界兵共!ここから先に行きたきゃかかってこいよ」
俺は右手の関節をバキバキ鳴らしながら拳を握り締める
「だがな?来るなら死ぬ気で来いよ!この三下どもが!!」
俺の啖呵に合わせ、一斉にがなり声を上げながら展開兵どもがなだれ込んできた。
第二ライン。
村の外側の柵を越えた中央通りである。
現在ここ村の中央通りはいく重にも柵が設けられ、簡易的な迷路のようになっている。
その柵の迷路の中央付近。二階建ての宿屋にはメティルが詰めていた。
宿の窓から見下ろす迷路の先で主人である魔王陛下ジンが数名の猟師とともに、雪崩くる展開兵を押しとどめているのが伺える。
「ま、魔王さま。大丈夫かなぁ。怪我してないかなぁうう」
心配に胸を締め付けられる重いで見つめる
「メティルさん!準備整いました!」
「おう、嬢ちゃん!こっちもいつでもいい!」
「は、はい!分かりました!合図を打ち上げます!」
メティルは右手に持ったロケット花火に火をつけた。
村の西側、最初の防衛線でジンは拳を振りぬいていた。
振りぬき、ぶち当て光に変える。
その作業を延々と続ける。
最早、拳に力は無い。
それもそうだろう、右拳は腫上がっていた。
ジンには格闘技の経験は無い。あるのは軽い喧嘩のみだ。
空手家や格闘家のように拳を鍛えているわけでもない一般人の拳は硬いものを全力で殴りつければすぐ自分の拳や手首などが壊れる。ジンが今まで保っていたのも周囲の魔力を拳にまとわせ強化していたからに過ぎない。
強力な一撃ではあっても、当たっているのだ。拳にダメージが無いなどということはなかった。
腫上がる右手をプラプラと振り感触を確かめていたときだ。
ひゅうるるうるるるうううううう・・・・・・パアァンッ!
合図が上がった。
「合図だ!第二ライン広報まで撤収!!」
「「「おう!!」」」
俺は合図であるロケット花火を確認し、すぐ漁師たちに声をかけこの場を全力で逃げ出す。
正直、右手が限界だ。
これ以上は持たなかった。
全力逃走のなか後ろを振り返れば、虚をつかれたように呆けた天界兵や怒りにこめかみの欠陥をぶちきって出血している形相の天界兵達が見えた
「迷路の道順は覚えてるな!」
「あぁ!」
「任せろ!」
「知らん!」
「自信ない!」
「OK分かった!ついて来い!」
俺は全速力で柵で出来た迷路の中へ突入する。
道順は覚えてる。
・・・裏道の。




