第二十八話 「一時帰還」
あの話し合いの後、俺はメティルを叩き起して現在ZX50cc仁スペシャル(恥)
と共に自宅へ帰還している。
目的は給油、と休養だ。
正直、あの状況で休養はどうなんだと思うだろうが、一介の大学生にはきつい。
俺は歴戦の英雄でもなければ軍人でもない。
話し合いの中で
カザドルの住民の疲弊具合から当分動くのは不可能と判断した。
ポポチ村の各家庭の食糧在庫を調べた限り、酒と肉、穀物は全滅していたがマコン(どうみてもジャガ芋)は手をつけられていなかった。理由は天界ではジャガ芋は悪魔の球根で毒があると考えられているようだ。
これはありがたかった。
ジャガ芋の栄養価は高い。
なにより腹にたまる。
ポポチ村で炊き出しが開始され今は皆久しぶりの食事を味わっている頃だ。
正直、天界兵がいつ攻めて来るかわからない状況だ。
食事の後、ポポチ村の若い衆で柵の強化補修を行うことが決定している。
そして、ヤンゴニの息子がホーンポニーに乗って領主館のある街へ向かうらしい。
帰宅前にホーンポニーを見せてもらった。
名前の通りというか、角の生えた馬・・・ユニコーンだった。
でも、なんか・・・これちがうって感じがする。
足が短いのだ。ユニコーンはすらっとしたイメージだがこのホーンポニーは
犬のコーギーの様な体つきだった。
走れるのかこいつってのが俺の感想だが、案外早いらしい。
兎にも角にも、ホーンポニーで街まで2日とのことだ。
そこから軍団とか言うのが到着するまで何程かかるか。
「おぅ、メティル。これ出来たから皿に移せや」
「はい!・・・美味しそうですね!なんですかこれ!」
「おう、これはかに玉っつうんよ」
「かに玉・・・うぅ、いい~匂いですね!」
「とりあえずそっち持っていけ。あと砂ずりとピーマン炒めるから」
「は~い。あ、ご飯つぎますね」
「まかす」
「おいしい!」
「うむ」
とりあえず時間がなかったのでぱっぱと作る。
かに玉はご飯によく合うシリーズのさっと作れる品だ。
卵3個でこれはなかなか旨い。見つけたら買ってみてくれ。
砂ずりとピーマンは炒めて塩コショウをふっただけだがこれがうまいんだよ。
ビールによく合うらしい。
あ、俺酒のめねぇから知らねぇけど。
「このふあふあも美味しいですがこのコリコリしたお肉も絶品ですね!」
「あぁ、あ、そうだ。俺この後、ガソリン入れてくるからお前先に風呂入って寝てていいぞ」
「は~い」
そういえばこの女。
風呂に入ったことが今までなかったらしい。
そら、汚いし臭いわ。
「ちゃんとお湯で体は清めてました!」
とのことだが、いまいち信じられん。
風呂場から「な、なんですかこの石鹸は!?」って聞こえてた。
汚い女だ。
まぁ、石鹸を知ってるんだし、使ってたんだろうが質がちがかったのかね。
ZX50cc仁スペシャル(恥)に跨り、朝の道を走る。
時速は30km
魔界では速度不明で走っていたがこっちでそんなことは出来ない。
疲れからぼんやりと運転しながら考える。
柵はボロボロ、家もボロボロ、人もボロボロ。
軍団とかいうのが救援に来るまで持つだろうか・・・。
普通に考えれば無理だ。
あの砦を攻めた時ざっと見ても百人はいた。
今動けるポポチ村の住人に天界兵との戦闘経験があるものは数名いたが、ご老体のおじじだった。
そのおじじ達は昔からポポチ村にいた人達ではなく、もっと西の方にあった村の出身らしい。
今はその村はない。
そう聞いて大体の理由は察することができた。
たぶん、村を守ろうと戦ったのだろう・・・。
ポポチ村であと戦えそうなのは若い衆。
それも猟師と呼ばれる人達だと思う。
猟師・・・ハンター・・・。
俺は猟師を勘違いしてたようだ。
彼らは当時武装をしてなかった時に強襲され捕まっていたが。
完全武装した彼らは正しく「ハンター」だった。
パッパララーパララッパッパーパララーパーパパパーパパパーパーパー。
とにかく、乗りかかった船だ。
全力で乗り越えてみせる。
すこし柄にもなく熱いことを考えた自分に恥ずかしくなり
鼻の頭をかきながら、ガソリンスタンドへ向かった。




