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第二十六話 「夜の森」

砦内は騒然としていた。

突如、轟音とともに現れたそれは主郭内を縦横無尽に走り回り

自分達天界兵を弾き飛ばしていった。

死者数名、重傷者数名、軽傷者多数を短時間で発生させたソレは

来た時と同様爆音と砂塵を巻き上げ北の方角へ去っていった。

意味がわからない、意識が追いつかない。

唖然としていたその男の耳に顔が聴こえてくる。


「た、タイチョー!あいつはいったい!」

「隊長!あの魔獣なんなんですか!」

「いてぇ!」

「くそ!」

「隊長!あの魔獣!魔族が乗ってやがった!」

「なに!?魔族だ!?」

「魔族だと!?」


魔族・・・

隊長と呼ばれる男は目を細め、耳から入る情報を整理する。

あの爆音は?

咆哮

光る白いものは?

魔獣

操るは?

・・・魔族!

思考は単純判断は一瞬

「野郎ども!追え!!魔族の野郎をぶっころがしてやれ!」

「「「「「応っ!!」」」」

隊長の命令の元、森の中にチラチラと見える光へ天界兵達はわらわら向かっていく。




「ふぅ・・・随分離れたな・・・」

流石のZX50cc仁スペシャル(恥)とはいえ、森の中の悪路を爆走し随分無茶をさせた。

走行中はフィールドを全開にして前面の障害物(タイヤの接地面も平らにしつつ)を吹き飛ばしながら進んだ。それでもボディには小さなキズが所々ついている。

そして、ガソリンメーターはEである・・・。

「ふかしすぎた・・・ここからは押して行くしかねぇか・・・くそ」

先程までのテンションから急落下してトボトボ原付を押し、森の中を進む。




「隊長、包囲完了しました・・・」

「あぁ、合図を待て」

あの襲撃から立ち直り追いかけること数十分、漸くあの光を確認した。

光は淡く周囲を照らしその場に留まっている。

砦から随分離れている、休憩中と考えて間違いない。

天界兵達は体調の指示のもと光から一定の距離を保ち周囲を囲んだ。

隊長が徐に右手を肩の上に上げる。そして

「かかれぇええええええええええ!!!」

「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおお」」」」」」

号令とともに一気に光に飛びかかる。

両手に手斧を握り締め我先にと一撃を加えようとする姿は、されるものからしたら恐怖以外ないだろう。

だが、それをされるものは

「た、隊長!!!」

「!?」

「こ、こりゃぁ・・・」

「隊長!これ松明です!!」

「なにぃ!?」

それが生物であればの話だった。

手斧を手に周囲を囲む天界兵の足元には

ホームセンターで売られている500円の赤い発炎筒が突き刺さっていた。

それは仁の原付のメットインにもしもの時ように取り付けていたものだった。

「くそう!消せ!消せ!」

「き、消えません!」

「はぁ!?」

「水は!」

「ねぇよ!」

「小便かければいいだろ!」

「「「それだ!」」」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「消えません!」

「なんでだ!」

*発炎筒は雨の中でも燃えます




「・・・そろそろ森を抜けれそうだ」

たぶん今頃発炎筒に群がってんじゃねぇかなぁ・・・

そんなことを思いながらダラダラと原付を押しながら森を進む。

今、原付に乗ることは出来ない。乗れば排気音で居場所がばれる。

それではわざわざ離れた場所に発炎筒を設置した意味がなくなる。


そうしてだらだら歩くこと数分、漸く森を抜けた。

遠目にあの村が見える。

メティルやフェニアは成功しただろうか?

そんなことに不安を覚え

失敗してたら殴ろう

と、軽く思案して仁は村を目指す。


もうすぐ夜が明けようとしていた。












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