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転生したら小田氏治の家臣だったので、滅亡の運命を変えます!  作者: 社長
第二部

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90話 来客

「あ〜、仕事が終わらん。いくらやっても終わらん」


「政貞、さっきから同じことしか言ってないよ?」


「だって本当に終わらないからさ……」


 あれから数日後、俺は今日も今日とて仕事に追われていた。


 最近は現場仕事ばかりしていたので、気づけば書類が山のように溜まっており、今必死に消化する羽目にはなっているのだ。


「仮にこれが終わっても、次は水車の視察と、市場の視察、そして次は港に……駄目だ、やることが多すぎる」


「まあまあ、私も手伝ってあげるからさ。二人ならそこそこ早く終わるでしょ」


「それは有難いんだが……それでもキリがないぞ。はぁ……人材不足だ……」


 俺はそう嘆きつつも、仕事を続けていた。


 その時である。


「政貞様、来客が来ております」


 家臣が現れ、そう告げたのだ。


 客人? そんなの来る予定があったかな?


「来客とは誰のことだ?」


「ふふっ、ワシのことだ」


 そう言って家臣の隣から現れたのは俺の親父、菅谷勝貞だった。


「ち、父上!? 来ていたのですか!?」


「まあ義父上様、お久しぶりでございます」


「うむ、久しいな葵殿、そして政貞。町を見てきたが、たった二ヶ月で見違えるほどになっていたな。流石だぞ」


 と、親父は誇らしそうに笑っていた。


 それにしても、親父は一体何をしに来たのだろうか。


「それで父上、本日はどのような用で来たのですか?」


「はっはっは! 親が子に会いに来るのに理由などない、と言いたいところだが今日は理由があって来たのだ。政貞、お主家臣不足に困らされているようだな」


「ええ、その通りです。それはもう困り果てています」


「そうかそうか、そんなお主にワシの領地から何人か優秀な者を連れて来たのじゃ。彼らならば、政貞の助けとなってくれるだろう」


 おお、それは有難い!


 親父の家臣なら信頼もできるし、大助かりだ。


「皆後から来る手筈となっているが、一人だけここにやって来ている。お主も良く知っている人物じゃ」


「ふむ、誰でしょうか?」


 そう首を傾げていると、遠くの方からこちらに歩いてくる音が聞こえた。


 もしや、この足音の人物が親父の言う奴か。


 そう考えていると、すぐにその人物の正体が明らかになった。


「来たか。全く遅いぞ照貞」


「はははっ、申し訳ございませぬ兄者」


 て、照貞叔父!?


 俺はあまりに予想外の人物の登場に思わず腰を抜かしてしまう。


「むっ? おお久しぶりだな政貞! どうした? 照貞叔父様に久しぶりに会えて喜びのあまり腰を抜かしてしまったか? はははっ!」


 このおめでたい……明るい人物が俺の叔父、菅谷照貞である。


 親父の弟にして菅谷家一門であり、菅谷家一の女好き、プレイボーイである。


 女性関係でやらかした事は数知れず。


 その軽薄な性格で色々とやらかす困った人だが、なぜか文武共に優秀であり、武将としての能力は高く、代官としての領地経営能力も高く領民の評判は良い。


 そんな人物がこの照貞叔父なのである。


「照貞は知っての通り、領主としては優秀だ。菅谷一門でもあるし、お主も頼りにしやすいだろう。存分に使ってやってくれ」


「はははっ! 可愛い甥っ子のためならこの照貞、身を粉にして働こうぞ! あっ、其方は政貞の妻だな。某は政貞の叔父、照貞と申す。以後、お見知り置きを」


「はっ、はい、よろしくお願い致します。照貞義叔父上様」


「うむ。しかし、お主の妻は可愛いな。姉妹や親族の娘がいれば紹介して欲しいのだが……」


「しません!!」


 全く、優秀だが厄介な人を連れてきてくれたものだ。


 まあだが、この状況では頼りになる人なのは間違いない。


 それはそれとして、だ。


「照貞叔父上、言っておきますが俺の領地では無断で遊郭を作らないでくださいね」


「む? ということはお主の許可があれば作っていいわけだな! ようし! 叔父上、認められるために励もうぞ! はははははっ!」


「本当、元気な人だね……」


「だろ? これでも優秀な人なんだ。そうは見えないだろうけど……」


 葵も心配げ……というか明らかにゴミを見るような目をしている。


 これは早速嫌われましたね、照貞叔父。


 まあ残念でもないし当然であるが。


 と、そんな風に話していると親父が咳払いをし、話に入ってきた。


「ところで、人材不足に悩まされているのだろう? ならば、足利学校に行ってみてはどうだ?」


「足利学校……ですか?」


 足利学校といえば、この戦国時代において唯一といえる高等教育機関だ。


 現代で言うところの大学のような場所だ。


「うむ。あそこには各地から優秀な者が集まる。お主が求める人材もきっといることだろう。足を運んでみるのも悪くはないと思うぞ」


 確かに、あそこなら優秀な者が多くいるかもしれない。


 幸い、今は常陸が統一されたことで戦はしばらく起こらないだろう。


 行くとしたらこのタイミングか。


「お主の留守は代わりにワシが城代として政務と守りを行おう。だから、安心して行ってこい」


「この照貞叔父も兄者の補佐をするから、大船に乗ったつもりで行ってくるがよいぞ、甥っ子よ」


「お主がいるとどんなに良い船も泥舟になってしまうわい」


「はっはっは! 兄者は冗談が上手いですなぁ!」


 と、軽口を交わす二人。


 この二人、生活は違うわりに仲は良いんだよなぁ。


 まあそれはともかく、足利学校か。


 この時代における大学のようなもの、行ってみるのが楽しみだ。


「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて、政務はお二人にお任せします」


「政貞様、私も行きたいです。学校って行った事なくて面白そうですもの!」


 と、久々の猫被りモードの葵が言った。


「それはまあ良いが、あまり面白くはないと思うぞ?」


「それは行ってみれば分かることです。それに私、常陸から出たことがないのでそれだけでも楽しみですわ」


 まあ確かに、そうだよな。


 葵からすれば、足利学校に行くだけでもちょっとした旅行のようなものだ。


 そりゃたワクワクするというものだろう。


「分かった。供回りはまず勘助を連れて行こう。彼なら学問も詳しいだろうしな」


「あちこち旅をしていたらしいですし、知り合いがいるかもしれませんものね」



 その通り、知り合いがいれば勘助殿とのコネで引き込めるかもしれない。


 他のメンバーに関しては後から決めればいいだろう。


 まあともかく、俺としては政務から離れられるというのが一番嬉しい。


 そして妻との初めての小旅行でもある。


 今回は少し楽しむとしよう。


 そうして俺はこの時代に来て初めて、足利学校へと向かうことになったのだった。

ここまで読んでくださりありがとうございます!

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